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![]() | 【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ教えがいが出るなら何よりだなって。 嬉しいを素直に形にしてもらえたことに、こちらの胸にも嬉しさがまたひとつ。 「じゃあオレだって内緒するし〜」 何の張り合いだろう。 でも、貴方に言えないことがあるのならそれでいいとも思っている。 その裏にあるものがなんだって変わらない。 きれいじゃなくても、あなたがだいすき。 合わさる視線の先にはきっと己と似た表情が。 通じ合っているみたいでしあわせだった。 「……すっごくチョコミント。 でも、うん、おいしい」 これまでに口にしたカクテルのどれよりも。 甘くて、おいしくて、忘れられそうにない。 ……ううん、忘れたくないのだと思った、ずっと。 [1/2] (-561) 2023/09/23(Sat) 9:29:36 |
![]() | 【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ──そうやってもう少しの間、お酒を飲んだのち。 貴方の隣に出来上がっていたのは、どっぷり酔ったらしい弟の姿だった。 「……あはは、ねむた〜い……」 普段からそうお酒を嗜むことがない身体に、度数の高いお酒を入れ続けていたらまあこうもなる。 触るのが苦手、とはいっていたが、元々そうでなければくっついているのが好きなのだろう。 ずっともたれかかったままだ。むにい。 「ねていい〜?」 赤らんだ頬に、浮かべる笑みはへにゃへにゃと蕩けたもの。 そんな状態で貴方を見上げ、首を傾げてたぶんだめそうなことを尋ねた。 [2/2] (-563) 2023/09/23(Sat) 9:30:31 |
![]() | 【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 幕の中で イレネオ笑っている。 こわい。 愉しんでいる。 こわい。 声にはまだ優しさと暖かさが残っているようにも思えるから。 だからもっと、こわかった。 そうして、指先が。 「ほんとに、し、らな、」 「ん」 肯定の意は最後の一音まで紡がれずに。 ふれる、唇にやわらかな、 「……?、??」 まるでその刹那だけ痛みを忘れたみたいに。 大きな瞳を丸くさせて、呆けた表情で貴方を見つめ。 何をされたのか分からない、そんな目をして。 けれど。 すぐ、理解する。 ──くちづけ、だ。 [1/2] (-567) 2023/09/23(Sat) 10:01:08 |
ニーノは、家族以外に触れられることが、こわい。 (c26) 2023/09/23(Sat) 10:01:44 |
![]() | 【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 幕の中で イレネオ「…………ぁ、」 理解したと同時に、青褪めてゆく。 ちいさなころ、なんども、なんども。 身体があついのに奥底がつめたい。 いやだった、きもちわるかった。 「ゃ……だ、ゃ……っ」 声は幼子が駄々を捏ねるそれとおなじだ。 引き剥がすために動かそうと、意識した手には未だペン先が突き刺さったまま。 あつい痛みを脳が再度知覚し始めればまた涙が溢れる。 だって、こんなのなおさら、わけがわからない。 「な、ん……で…………?」 ──どうして今、 そんなこと ができる?わからない、貴方のことがなんにもわからない。 鼓動が煩いのが痛みのせいなのか、恐怖のせいなのか。 或いはそのどちらもか。 " たすけて "と、音も無く唇が動いた。[2/2] (-568) 2023/09/23(Sat) 10:04:26 |
![]() | 【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 路地の花 フィオレ名前が幾度も呼ばれている。 鉄格子越しに貴方の姿が見える気がする。 声が聞きたいと、姿が見たいと願うばかりに見ている夢か。 だとしてそれでもよかったから。 近づこうとした。そのために立ち上がろうとした。 熱が収まらないから足に力が入らなかった。ならば這い寄ろうとした。 手錠に繋がれた両手を地面について、そのまま。 ──ズキリ。 「ぃッ」 刹那走る痛みに声を詰まらせて身体を折る。 情けなく地に一度伏せ、それでもと求める場所へ寄ろうとする。 もう少し光の届く場所へ、その体躯が辿り着いたなら貴方にも見えるだろうか。 薄汚れてはいるが酷い外傷はあまりない──ひとつを除いて。 右手の甲が腫れ上がり、 ちいさな穴が開いている 。その腫れ方から骨が割れているのだと、人より傷を見たことがある貴方なら理解できるだろうか。 「……ねえ、さ、ん」 [1/2] (-580) 2023/09/23(Sat) 10:50:48 |
![]() | 【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 路地の花 フィオレ──会いたかった、会いたかったな。 貴方を見上げた。泣きじゃくり続け濡れた瞳で。 ──ずっと考えてたんだ、オレの悪いこと。 今のこの状況を、迎えるに相応しい己の悪事はなんだろうと。 熱に浮かされ朦朧とした頭で考え続けたらいくつか出てきた。 そのひとつをだから、貴方に会ったら、言おうとして。 「……ご、めんな、さい」 これが今までの罰だとするなら、ほら、帳尻が合うだろう。 「ごめん、なさい」 思い出す。 この世の掃き溜めの隅。 だれもいない場所で歩けなくなった日のこと。 目が覚めたら暖かなベッドの上にいたこと。 ──連れ出された新たな場所には、あなたがいなかったこと。 「オ、レだけ、ひろわれて、ごっ、めんなさ、ぃ……」 燻る罪悪感は今になってその重さに耐えきれなくなったように。 頭を垂れた、許しが欲しいんじゃなかった、ただどうしても謝りたかった。 壊れた涙腺がまたはたはたと涙を零したけれど、もうそれもよくわからなかった。 [2/2] (-581) 2023/09/23(Sat) 10:52:34 |
![]() | 【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ「なんで……」 なんでではない。 剥がされると中々に不満そうだった。 勿論回るアルコールのせいで体温はさらに高くなってしまっている。 冬のカイロにちょうどいいぐらいだろう。 「たて、ぅ」 それでもできる?を尋ねられると、できる!を言いたくなるのが子どもというものだ。 立ち上がろうとして……当然のようによろめいて。 目の前で貴方が見てくれていたので、多分支えてもらったりしていたのかもしれない。 「……たててる……」 だめそう。 やっぱりお泊り会は案外早く来るかもしれない。 (-584) 2023/09/23(Sat) 11:05:57 |
![]() | 【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 路地の花 フィオレ聞こえる声が涙で滲んでいる。 ゆっくりと上げた顔、移る視界に貴方の涙が雨のように降っていた。 なかないで、とおもった。 いつもそうしてくれるみたいに、だきしめたかった。 望みはなにひとつ、この場で叶うものではないのだけれど。 「……ね、ぇさん」 「ごめんなさ、い」 出来るのは案じてそう呼ぶことだけ。 己の謝罪で泣かせてしまったことを……また謝ることだけだった。 そうしてその頃になってようやく──夢ではないのだな、と理解する。 ああ、ならば。 「……ぁ、……にげて」 アレッサンドロ・ルカーニオはノッテ・ファミリーの幹部。 既にそれを知っている男は、もうひとつの予想もとうに付いていた。 きっとあなたも。 「つかまっちゃう」 「オレ、だいじょうぶだから」 あんな拷問を受ける姿を想像したら、ぞっとしたから。 「ねえさん、ここ、早く出て……」 (-617) 2023/09/23(Sat) 13:41:23 |
![]() | 【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 渡りに船 ロメオ立ててない指摘には、たててる……とまた主張していたものの。 一人ではろくに歩けそうにない男は貴方に支えられたままだ。 そうして目の前に向けられた背を見つめると、ゆっくりと瞬きを一度、二度。 「…………おんぶ」 してもらうの、いつぶりだっけ。 わからないけれど両腕を伸ばすことに抵抗は無かった。 そうして貴方がおぶり上げれば思ったよりも軽いと感じるかもしれない。女子よりは当然重いのだが、男子にしては発育が良いわけではないので。 「あはは、おんぶ」 笑いながらぎゅぅと腕に力を込めたのは、落ちないようにというよりはうれしくて。 緩む頬に癖のあるひだまりの髪が触れて、くすぐったくて、しあわせだった。 「かえる、かえろー、ろめおにい」 呼んで、その内に貴方が歩き出してくれることだろうか。 規則正しいリズムに揺られるのは揺り籠にも似ていた。 少しの間はふにゃふにゃと起きていて、言っていることは「ろめにい」「ろーにい……」となにやら改めての呼び方の模索だったが。 じきに穏やかに寝息を立て始める、安堵し切った子供と同じ。 (-620) 2023/09/23(Sat) 13:55:03 |
![]() | 【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 幕の中で イレネオ己のそれより大きな掌が両頬を包んだ、刹那。 ちかり、フラッシュバック。 底から這い上がる恐怖で息を呑む。 めのまえにいるの、だれだっけ、 すぐに動かない身体は自由を知らず固まったまま。 いきていくために、ひつよう で ? 気が付いたのは──"二度目"が触れてからだ。 「ッ〜〜〜……!」 「ぃ、ぅ」 指先を動かそうとする、ずきんと痛んだ右手に声が落ちる。 それでも腕を上げて、左手で貴方の手首を掴む。 わかりやすく震えていた、何かを取り繕う余裕もなかった。 「……っね、ぇ、せんぱ、い、も、やめて」 「わかんない、の、わかった、でしょ」 声は時折掠れて、詰まって、脳がぐらつく。 荒く繰り返す息は最早痛みよりも恐れによるものが勝っていた。 すぐに手折ることのできる力で、それでもと頬に添えられる片方を引き剝がそうとする。 「なんか、いって、」 「おねがい……」 問いかけへの解は無く、落ちた笑いが鼓膜を揺らしただけ。 その瞬間のぞっとした心地を思い出せば最後、乞うように願いさえもした。 (-648) 2023/09/23(Sat) 16:40:19 |
![]() | 【秘】 暗雲の陰に ニーノ → Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ貴方がデニッシュにかぶりつくのを見て、こちらも真似るようにパンドーロを一口。 クリスマスシーズンによく出回るものの年中置いてあるパン屋も多い。 ふんわりとした柔らかさに上品な甘さ、粉砂糖から香る微かなバニラの芳香に目を細めた。 そうしながらも話に耳を傾けていれば、貴方自身マフィアを良く思っているわけではない、が伝わってきて視線を上げる。 「……ヴィトーさんらしい、です」 いなくなればいい、そこまでの感情は同じだとして。 末に望むのが"隣人"であるということが、己が好む貴方の暖かさを示してくれているようだったから。 袖を掴んだ指先はそのまま、払い除けられないと知っていたように。 落とされた言葉はまるで祈りのようにも思えて、それが自身に向けられている事実を噛み締めてはたしかな喜びを抱く。 「へへ、悲しいにはなってほしくないなあ。 オレ、だからちゃんと前を見ていたいです。 迷っても、悩んでも……ほら、止まない雨はないっていうし。 ヴィトーさんもきっと、そうやって歩いてきたんですよね」 小さなころから男が見てきた貴方は、もう随分と大人で。 今でもまだ、あの頃の貴方と同じ齢を重ねることさえできていない。 だから今の自分のような姿は想像ができないけれど、なんとなく、そうなのかなと思ったから。 「……そっか。 それだけでも、いいんだ。 すぐに何かするのが難しくても……誰かの安心にはなれる」 「あはは、だめだな〜。 なんだか急いちゃってそういう、大事なこと抜けてました。 ヴィトーさんと話してるとオレ、まだまだ視野が狭いんだっていつも思います。 年の功?もあるんだろうけれどヴィトーさんぐらいになったとき、ちゃんとそういうこと言えるかまだ全然想像つかないや」 (-688) 2023/09/23(Sat) 20:39:03 |
ニーノは、十九年の人生で自分がした、悪いことを数えている。 (c29) 2023/09/23(Sat) 20:46:39 |
ニーノは、この現実がこれまでの罰であるなら、帳尻が合うはずだから。 (c30) 2023/09/23(Sat) 20:46:48 |
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