人狼物語 三日月国


94 【身内】青き果実の毒房【R18G】

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【人】 4432 貴戸 高志

ここ最近、用意してもらってばかりだ。
だからたまには自分でも準備しようと思って、部屋を出た。

彼はいつも美味しいお菓子を手に戻ってくる。外れだった事なんて一度もない。
自分は果たして彼のように二人とも気にいるような菓子を見繕うことができるだろうか、なんて甘いふわふわとした計画を立てながら歩く。

なんてことない、ここに来て、闇谷と同室になってから幾度となく行ってきた楽しい時間の一つだ。自分にとってはすっかり日常として組み込まれている。

今現在自分が過ごしている日常は、いとも容易く崩れ去るような脆いものへと変わっているというのに。
(13) 2021/09/23(Thu) 2:57:38

【人】 4432 貴戸 高志

かん、と革靴の音が一つ。

「……?」

すっかり見慣れた景色となった廊下。それなのに、どこか違和感を抱いてしまうのは何故だろう?
靴音が引っ込んだ空間に耳を傾ける。

誰かの声。
それにしては、まるで内緒話をするかのように声を潜めているような気がするが……。

先ほどよりは落ち着いた足取りで声のする方へ。
声を潜めたくなるような話をするのであれば、こんな廊下なんて開けた場所で行うべきではない。そう言ってやろうなんて思いながら曲がり角を曲がって──


──重なり合う影が、二つ。

「……っ」

小豆色の瞳がかすかに揺れながら、その姿を見てしまった。

「迷彩…………と、暁……」
(14) 2021/09/23(Thu) 2:59:14

【秘】 4432 貴戸 高志 → 1117 闇谷 暁

貴方の歯を、舌を、唇を。
小豆色の瞳が追いかける。追いかけてしまう。
小さな動作一つとってもやけに扇情的に見えてしまって、たまらずこくりと口腔に溜まる唾ごと息を飲み込んだ。

次に息を吐き出すまでの間に、無意識に左手が己の首元を押さえたことに気づかないまま。

……ああ、自分はその唇から溢れる薬で癒してもらったのいうのに。
今となっては腹の底を撫ぜる毒にしか見えないのだ。

「……ん。あー……、……ん」

恥じるように瞳をわずかに伏せていたものの。フォークを差し出されたことに気付くと、数度目を瞬かせてから唇をかぱりと開けてフォークを中へと招き入れた。

喉を上下に揺らせば先ほどまでの恥ずかしさごと甘いケーキが胃の腑へと滑り落ちていった。
優しい甘さに思わず口元がやんわり緩む。

「…………美味い。こうして連日お前の美味しい手料理を食べられるとはなんて贅沢なんだろうな」
(-241) 2021/09/23(Thu) 3:14:45

【秘】 4432 貴戸 高志 → 8435 黒塚 彰人

どこかへ移動中だったのだろうか。貴方が声をかけた少年は廊下にて貴方の姿を捉えた。
かつ、と靴を鳴らして向き直る。

「黒塚か」

貴方を見やる少年もまた、貴方同様遠慮のない態度を見せるだろう。
少年が反応を変えるとするならば年上だと明確に分かっている普川・市川・素崎の三名だけだ。貴方は推定でしかないが、同い年に見えるためか年上の者よりは近い距離感で接していた。

「……ああ。構わない。……俺の自室以外で頼む」

耳を撫ぜる囁きに顔色ひとつ変える事なく首を縦に揺らした。
かつ、と再度靴が鳴る。今度は貴方とは違う方向へ。連れ立って歩く為に。
(-244) 2021/09/23(Thu) 3:45:18

【人】 4432 貴戸 高志

>>15 普川

「……ッ!」

声を上げることはなかった。だが、唐突に背中にかかる重みに少年は激しく体を跳ねさせる。
首を少しだけ回し──それでも声と話し方で誰かは瞬時に分かっているのだが──やってきた相手を確認すると、「ふ、かわ……せんぱい?」とかすれた声をどうにか紡いだ。
貴方が背中にくっつくような真似をするとは思っておらず、普段あまり動かない表情筋はこれでもかとよく動き心底驚いた様子を浮かべていた。

「……いえ、あの。俺の用事は後回しでもいいんです。
それよりも普川先輩、あの、聞きたいことが……」

しなだれかかる貴方に肩を置いて申し訳なさそうに体勢を変える。
向き直ってから、ずいと顔を近づけた。

「…………先輩。あの──」

(16) 2021/09/23(Thu) 4:12:19

【人】 4432 貴戸 高志

>>15 普川

「他人の性交渉現場見た時ってどうしたらいいですか?」


本人は至って真面目である。

本人はそれはもう本当にすっごくしっかりばっちりとんでもなく真面目なのである。
(17) 2021/09/23(Thu) 4:12:46

【秘】 4432 貴戸 高志 → 1117 闇谷 暁

「美味いものは美味い。褒めて何か問題でもあるか?レパートリーが増えるのであれば尚更いいことづくめだ。
……それにしても、好きな食べ物か。和食などは慣れ親しんでいるから、出てくれば嬉しいが……ああ、そうだ」

ほんの少し暫く考えて、閃いたように顔を上げる。

「暁が勧める料理。

お前が持ってきてくれたものは、皆美味しかったから。暁が勧めてくれるものなら、俺もきっと好きだろう。お前自身が作ってくれるのなら、尚更」

どうだ?と訊ねる声には自信が滲んでいる。間違いないと言わんばかりの、はっきりとした回答。

ただ、そんな堂々とした態度はそこまでで──

(-247) 2021/09/23(Thu) 5:10:03

【秘】 4432 貴戸 高志 → 1117 闇谷 暁

「傷。………………」

言葉に反応して左手が浮き上がる。漸く、無意識に動いていた己の手に気がついた。

「痛くはない。大丈夫、これは本当だ。
だから暁が心配することなど何も無い。

……無い、が…………」

言葉尻が萎んでいく。言うべきか言わないべきか迷っているのだろう、視線がきょろきょろと落ち着かずに泳いでいる。

「…………。言わないままにして、暁に迷惑をかけてしまうほうが嫌だな。

……白状しよう。暁、その………………」

きゅ、と首周りに置かれた手に小さく力が込められる。

(-248) 2021/09/23(Thu) 5:11:27

【秘】 4432 貴戸 高志 → 1117 闇谷 暁

「…………お前がつけた傷、が…………。

時折、むしょうに…………


欲しくなってしまって…………

……………………」
(-249) 2021/09/23(Thu) 5:12:05

【人】 4432 貴戸 高志

>>18 普川

「悪いご冗談を。そういったことはよくないです普川先輩」

真面目堅物人間はそう答えた後、唇をきゅっと結んで首を横に振った。NOだそうです。

「……キスと性交渉は違うでしょう。それに、相手は……その、俺の知人友人ですし……見て見ぬふりをしていいものかどうか……。

……あの、毛布とか水とか用意したり「立ち入り禁止」の看板立てた方がいいのではと考えているのですが、どうですか?」


もしかして:AVスタッフか何か
(20) 2021/09/23(Thu) 5:32:12

【人】 4432 貴戸 高志

>>22 普川

「……っ」

はく、と唇が戦慄く。
どこかで線引きをしていた。ここを超えたら恥ずかしいものだと。ここを超えるまでは子供でも出来る戯れだと。

「……二人だけでするはずの秘め事。
……………………言われてみれば、そう、ですね。

俺は……肌を重ねることを特別視していた。
先輩の言う通り、口づけの時点で当事者の間だけで秘めるべき触れ合いなのは確かなのに」

セックスが大人だけに許された特別な行為だと、どうして思い込んでいたのだろう。
現に自分は、自分の想い人は、少年たちは、こうして容易く一線を超えてしまっているのに。

いつの間にかからからになった口の中でなんとか舌を動かして、「教えていただきありがとうございます」と小さく紡ぐ。藤色の髪が、言葉に合わせてぱさりと前に倒れて揺れた。
(23) 2021/09/23(Thu) 13:09:06
貴戸 高志は、朝倉の姿を見つけると声は出さなかったけど体が強張った。ぎくり。
(a15) 2021/09/23(Thu) 13:32:14

【秘】 4432 貴戸 高志 → 1117 闇谷 暁

「ああ。大好きだ。俺の世界の中で、一番大切だ」

己を殺し続けて生きてきたのだから、自分で選んだものなどあまりに少ないけれど。
その中でも、いっとう大切なものは貴方だと、それだけははっきり言い切れる。

(-260) 2021/09/23(Thu) 13:53:58

【秘】 4432 貴戸 高志 → 1117 闇谷 暁

自身の手に貴方の手が重なる。心を許す相手に触れてもらえるのが嬉しくて、薄く開いた唇からたまらず吐息がこぼれ落ちる。児戯にも等しい触れ合いだけで、凪いでいたはずの心に漣が生まれて落ち着いていられなくなる。

「……お前を困らせたくない。それは本当なんだ。
……でも、誰かと寝ても、物足りなく感じてしまって。自分で首を引っ掻いても埋められなくて。
はしたないと分かっているんだが、その……

……っ、…………」

言い淀む。
もう片方の手で貴方の手を包む。それだけならまだいじらしい反応だと言って終わりに出来ただろう。
だけど、上から貴方の手を覆った少年は人差し指をにわかに動かす。
桜色の爪の先が、戯れに貴方の手をくすぐり引っかく真似をした。

「…………暁」

(-261) 2021/09/23(Thu) 13:54:18

【秘】 4432 貴戸 高志 → 1117 闇谷 暁

そこから先は、言葉にならなかった。
けれど。

──欲しい。

貴方を求める唇は、確かにそう震えた。
(-262) 2021/09/23(Thu) 13:54:39

【人】 4432 貴戸 高志

>>24 普川

ぽんと乗せられた手を追いかけるように、目が上へと揺れた。
何度もぽふぽふと頭を撫でる仕草と、静かに話す貴方の顔を不思議そうに交互に見つめている。

「……知っているつもりでは、あります。…………自惚れでないのなら。

俺は、例え余計なことだったとしても、俺は…………」

少し間を置いて、言葉を最後まで紡ごうとした時だった。

──声がする。

耳がそれを拾い上げた瞬間。
言い切るべき事も、貴方の「覗いていいか」の問いも、何もかも投げ出して。

体が、勝手に動き出す。
(25) 2021/09/23(Thu) 14:14:16

【人】 4432 貴戸 高志

>>+30 >>+31 廊下

「っ、暁ッ!?」

先輩と呼び敬う相手との会話さえも投げ出して。
闇谷の声が響けば反射でそちらの方へと体が弾かれるように動いてしまった。

ぱっと藤色が舞う。かつんと靴が焦って一際高く鳴いた。
壁に手をやりながらも、曲がり角から心配の色を滲ませた顔を覗かせて──

「……ッ」

小豆色の瞳は、捉えてしまう。
相手の頭をかき抱きながら、蕩けた顔を見せる想い人の顔を。

潤んで揺れる、紫色を。
(26) 2021/09/23(Thu) 14:15:09

【秘】 4432 貴戸 高志 → 1117 闇谷 暁

「……は、…………ぁ」

有無を言わせぬその強引さに胸が締め付けられる。これから求めるものが与えられるのかと期待してしまって、それからかつてのひとときを想起してしまって、唇の端から漏れる吐息が熱を帯びる。

あかつき。
あかつき。
はやく、はやく、はやく。

あかつき。

指先がそっと貴方の服をつまむ。刺激が意識を揺らすたびに血の通った指に力が込められて白く染まった。
捕食される仄暗い悦びが、貴方の口づけによって淑やかに咲いていく。期待で腰は軽く浮き上がり、普段ぴんと伸びていた背筋はやわらかくしなった。貴方から齎される快楽を求める体が自然と強請り始めている。

──あかつき。

赤色に顔を寄せる貴方を見るほどに心臓はとくとくと早鐘を打ち始め、唇が音にしないまま貴方の名前を呼んだ時だった。

「────ッ」

(-268) 2021/09/23(Thu) 16:40:29

【秘】 4432 貴戸 高志 → 1117 闇谷 暁



来た。


本来なら痛みしか生まれないであろう刺激の筈なのに、この体は言い逃れできない程に悦び善がっている。
声の代わりに吐きだされる吐息。熱と艶を帯びるそれは、快楽を感じている証明に他ならない。

急所からじわりと広がる快感にどれほど溺れていたのだろう。は、は、と短く呼吸を繰り返して余韻を貪り尽くした後……ようやく、小豆色の瞳がゆるりと貴方のほうを見下ろした。

「…………ぁ、は……、あかつき……あかつき…………」

心の底から愛おしそうに。
瞳を蕩かせ、少年は笑む。
紫色を見つめ唇を動かす。

すき。
(-269) 2021/09/23(Thu) 16:41:41

【人】 4432 貴戸 高志

>>+34 廊下の二人

貪られている少年の叫びも、熱に侵されている少年の懺悔も、どれも等しく踏み超えて。

藤色の軌跡を宙に描きながら、いっそ無粋と言えるほどに堂々とした足取りで少年たちの望まない饗宴に割り込んだ。

「……悪いがそこまでだ。
迷彩、辛いだろうが止めさせてもらう」

これが嬌声だけであったのなら態度も違っていた事だろう。だが貴戸が耳にしたのは泣きながら紡がれる謝罪だった。ただの戯れではないと判断して、少年は馬鹿が付くほどの真面目さを持って声をかける。

相手を抱いている少年が達した頃を見計らい、「すまない」と断りを入れて両脇に腕を滑り込ませて後ろから引き剥がそうと試みる。
それから白を基調とした上着を脱ぎ、迷彩の下半身を隠すようにそっとかけようとする。汚れるといった懸念は初めから頭に無い。微塵も躊躇せず行われる事だろう。

これらは全て、迷彩少年が暴れなければの話だが。
(29) 2021/09/23(Thu) 18:29:12

【秘】 4432 貴戸 高志 → 1117 闇谷 暁

「ぁ、あ、あ」

貴方の全てを甘受する。
体の全てを明け渡し、好きにさせ、代わりに与えられたものを余さず味わう。

生き物としての弱点を晒した事で齎される破滅的な快楽。その味の罪深さといったら!
抗い難く、いけないと分かっていても止められない。蕩ける頭が、痺れる体が、もっともっとと次を強請る。麻薬を取り込めばきっとこうなってしまうのだろうかと徐々に茹だり始めた脳の片隅で呑気にそう考えていた。貴方のどろりとした欲望に気付くこともなく。

かつて傷一つ付いていなかった少年の首筋は愛撫で艶かしく濡れそぼり、鮮やかな赤色の嗜虐的な愛が咲き誇った。

「……は、……ぁ」

貴方が唇を舌でなぞれば、その軌跡を追いかけるように自分の舌で名残り惜しむかのようにちろりと唇を舐めた。

そうして戯れに溺れた後。幾度となく聞いたであろう食事の終わりを告げる挨拶と共に解放される。今だけ非日常的な熱を含んだその声を聞くや否や、貴方のほうへ倒れ込むように前へと体を折るだろう。

「……あかつき。

…………きもちよかった。ありがとう」


拒まれないのなら、貴方の肩口に顔を埋めてそう呟く。
表情は見えない。けれど、髪から覗く耳がほのかに赤く染まっていることには気付けるかもしれない。
(-278) 2021/09/23(Thu) 18:53:45

【独】 4432 貴戸 高志

秘話で想い人とイチャイチャしながら全チャで他人とのセックス現場を想い人に見られるってどんな気持ち?
(-279) 2021/09/23(Thu) 19:00:58

【独】 4432 貴戸 高志

俺は……ひたすらに闇谷かわいいって思っているよ……
(-280) 2021/09/23(Thu) 19:07:01

【独】 4432 貴戸 高志

レスを返し終わったしソロールの文章もまとめ終わったのでぼんやりしてたんだけど

この貴戸高志とかいう男本当にツラがいいな………………
(-291) 2021/09/23(Thu) 20:04:35

【人】 4432 貴戸 高志

>>+35 >>+36 廊下

視線を素早く泳がせ、途切れ途切れの言葉を受け止めて思考を巡らせた。

「ああ。分かってる」

端的に返事をしながらしゅるりと自身のネクタイを解いた。手際良くボタンを二つほど外せば、シャツの間から鮮やかな赤い噛み跡とチョーカーを模した異能抑制装置が覗いた。

物を大切に扱うよう躾けられた貴戸がチョーカーを半ば引きちぎるように外したのは、冷静に見える内側が少なからず乱れている証拠なのかもしれない。

「──暁。頑張ったな」

それだけを呟き、静かに闇谷の唇に自分の唇を重ねた。

貴戸高志の異能内容は"感覚を一つ遮断する"。
普段は抑制装置が働いているが、これを外して条件を満たせば自分以外も対象とすることが出来る。

その条件とは──"相手の唇を奪うこと"。

唇を介して、相手の感覚を弄る。
闇谷から奪うものは痛覚。少なくとも(5)1d6時間の間は物理的な痛みはなくなるだろう。

それでも傷つき叫ぶ心の痛みだけは遮断することが出来ない。
きっと一番痛がっているのは、そこの筈なのに。

(30) 2021/09/23(Thu) 20:28:45

【人】 4432 貴戸 高志

>>+35 >>+36 廊下

ボタンを留め、ネクタイとチョーカーを彼にしては雑な動作でズボンのポケットにしまう。

一度闇谷の頭を撫でてから、今度は藤色の髪は迷彩の方へと流れていった。

「迷彩」

少年の名を呼ぶ声はひどく穏やかだ。
上着で顔を隠した彼の頭を、ぽんと小さく叩く。叩くといっても、あまりにも力が入っていないため撫でると言った方が正しいかもしれない。

「俺は今から暁を部屋まで運ぶ。
そうしたら、今度はお前の番だ。自室でも、戻りにくかったらどこかにでも。送り届けよう。

きっと気にするだろうから、お前は悪くないとは言わない。俺はお前をきちんと叱る。
だから、叱られたくなかったらこの場から離れること。悪いと思ったら、俺に叱られても構わないと思ったら、待っていてくれ。

……出来るか?」

極めて静かで落ち着いた声が、貴方の頭上に降ってくる。そこに怒りなどは一欠片も混じっていなかった。
(31) 2021/09/23(Thu) 20:29:39

【秘】 4432 貴戸 高志 → 1117 闇谷 暁

これは迷彩と手短に言葉を交わし、闇谷を運んできたあとのこと。

闇谷を抱えて自室に戻ってきた。成人男性より幾分か体は小さいだろうが、意識を失った人間は相応に重みがある。けれどそれが一体なんだと言うのだろう。あの時の闇谷の叫びを思えば、自分の両腕があげる悲鳴などちっぽけなものだ。

布団の上に寝かせる。断りを入れてから着衣を少しだけ乱し、タオルで拭える部分を拭った。掻き出すことも考えたが、迷彩との約束もある。少し我慢して欲しいとブランケットをかけるだけに留めた。

闇谷が休めるよう整えた後、迷彩の元へ戻ろうとして……一旦、眠る少年の元へやってくる。
顔を覗き込み、様子を伺う。

「暁」

名前を呼ぶ。勿論言葉は返ってこない。
それでも構うことなく、唇を寄せて口づけを落とす。

今度は異能を使う目的などではなく。
ただ"そうしたい"と思ったからした。それだけの小さな理由。

「企画のせいで、誰かのせいで、お前が誰かと肌を重ねることもあるのだと覚悟はしていた。その筈だ。

それでも──」

(-297) 2021/09/23(Thu) 20:57:30

【秘】 4432 貴戸 高志 → 1117 闇谷 暁

「──ああ、やっぱり胸が痛いんだ。異能も効いてくれやしない。

暁、苦しいな……」

顔がくしゃりと歪む。
たまらず、もう一度だけ唇を重ねた。


貴方が眠っている頃に起きた、ほんの僅かな一幕のおはなし。
(-298) 2021/09/23(Thu) 20:57:45

【念】 4432 貴戸 高志

自分の意思で決めたことなど、一体幾つあるというのだろう。

自分はまだ18年しか生きていない。大人からすれば鼻で笑われるような、青くさい少年でしかない。
けれど自分にとってはそれが全てだ。

某日、消灯時間さえも過ぎた頃。
談話室に居座って、端末の明かりだけを頼りにディスプレイの文字を追いかける少年が一人。

風情も何もない白い光に濡れる涼やかな顔は、相も変わらず生真面目さを押し出したかのような仏頂面のままだ。けれどよくよく見ればその眉間には少し皺が刻まれているし、唇は普段よりも固く引き結ばれている。

指先と視線は幾度となく端末の中の文字をなぞり続ける。

その殆どは、"報酬"の欄。

「…………」

おもむろに瞳が緩く細められる。睨むような鋭い眼差しで穴があきそうなほどに端末を注視した。
(!7) 2021/09/23(Thu) 20:58:08

【念】 4432 貴戸 高志

彼は全てを放り投げてまで隣を選んでくれた。
無実を証明できる機会を、太陽のもとで大手を振って歩く機会を。ありとあらゆる自由の可能性を。

自分は相手に何を返せているだろうか?
自分は相手にどれだけ負担をかけてしまっているだろうか?

尽きない悩みがぽたぽたと心に降り注ぐ。昔は殆ど揺らぐことのなかった水面が波紋を生んではぐらぐらと乱れた。

心情を表すかのように端末を持つ手が小さく震えた。みし、と機器が小さく悲鳴を上げてもお構いなしだ。

「……きっとお前は、気にするなと言ってくれるだろうけれど」

"何処でも、お前が居たら幸せだと思う。 "


鮮やかに甦る声。
声だけじゃない。肌を刺す空気も、その前に口にした甘味の味も、あの時間を形成する何もかもが脳と心に刻まれている。

「…………暁。俺も」

俺も、お前がいてくれたなら、きっと。

「──何処でも、幸せだと思う」
(!8) 2021/09/23(Thu) 20:58:43

【念】 4432 貴戸 高志



──だから、覚悟を決めなければ。


(!9) 2021/09/23(Thu) 20:59:08