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![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 檻の中で イレネオ絶対わざとだ。 フォークを受け取ればいいのに、テーブル越しに身を乗り出して食べた。 わずかに触れたフォークの振動が、心臓に悪。 いつもの自分が出せないのは、どうにももどかしい。 「そ、れなら良かった」 「……ん、これも美味しいね」 トマトのカプレーゼをひとつ頬張って食べて見せ、うんうんと頷く。 こういうのなら食べやすいし、お酒にも合うというものだ。 いつもとは違って空きっ腹に入れてるわけではないから、酔の周りも遅くちょうどいい塩梅だろう。 そうしていくらかつまみのような食事を少量ずつ食べて、もうお腹いっぱいだとフォークを下ろす。 いつもは食べないから、すごく食べたような気がして、ほうっと息をつくだろう。 「僕はこれ片付けておくから、シャワー浴びておいで」 満腹からくる安心感か、にこりと目を細めてそう言って。 食べ終える頃のあなたに声をかけるだろう。 (-203) 2023/09/18(Mon) 18:56:18 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ「…………」 物陰からじっと、あなたを観察している。 いや、これは様子がおかしいだろう。 セレブの放浪息子だから、金遣いが荒いのは理解できるけれど。 次から次にものを買う様子は、ただの憂さ晴らし。買い物を楽しむような、そんな良い物には見えない。 「ルチア。……度が過ぎた買い物は危険だよ」 これ以上見てると、後悔の上塗りを増やしてしまいそうな気がして、どこかの店から出てきたところを、腕を掴んで引き止めた。 笑みの一つもない、4cm高いその顔を見つめて心配そうに眉を下げた。 あなたが本気でエルヴィーノを突き放したりするならば、止めることはできないかもしれないが……、それでも、こちらも本気で踏ん張るはずだ。 (_5) 2023/09/19(Tue) 1:27:26 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ「元気……では、ないです」 「警部は覚えてないでしょうけれど、彼女も薬物事件の被害者です」 どこぞのマフィアと推察される誰かから唆され、少女は薬物中毒になった。 足元もおぼつかない状態で外を歩いていた所に交通事故に遭って半身不随となってしまったのだ。 養育院はあくまで子供を保護し養育し、社会へ出す所だ。 廃人となってしまった少女を看る余裕なんてどこにもないから、少女は病院を経て、今は薬物更生施設に居るということを説明した。 「僕は知ってて、見て見ぬふりをしてしまったから……」 「あの時、ちゃんと止めていたら彼女はこうはなってなかったんじゃないかと、思います」 薬物を与えた犯人は、まだ、捕まっていない。 だから男は、似たような案件には無条件に首を突っ込んでしまうようで、それが、数年前の事件の解決だったのだろう。 説明する男の表情には、熱はない。 凪いだ海のように静かなものだ。 (-284) 2023/09/19(Tue) 1:41:12 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 無敵の リヴィオ「どうにもきな臭いんですよ」 「いくら調べても、アリソン・カンパネッロなんて人物がヒットしないし……。 誰かが巧妙に偽ってるとしか思えない」 ぼそぼそと会話する様子は、はたから見ればおかしなものだろうが、皆も逮捕を恐れて同じようにしているから目立たない。 こんな様子が続くのは明らかにいい状態とは言えないはずだ。 「どうにかして……牢にいる二人に会えませんかね……」 どちらかといえば知略を得意とする男も、流石にお手上げに近かった。 (-285) 2023/09/19(Tue) 1:48:22 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ「良いよ。……一応着替えに僕の部屋着出しておくけど……小さかったらごめん」 いや、多分、確実に小さいのだけれども。 ゴムが少し伸びるくらいは許容範囲だ、気にしないこととする。 黒が好きそうなので、黒色のスウェットの上下セットだ。 あまり柄のあるものを好まないのかシンプルなもので、あなたもきっと着やすいデザインのはずだ。 片付けをしながらあなたが出てくるのを待って、ドライヤーや洗面台など説明することをし終えたら、自分もまたシャワーを浴びた。 おそらくは、あなたがシャワーを浴びた時間の倍くらいの時間をかけてだ。 「いや……これ本当に寝れるのかな……」 呟いた言葉は、水音に消えてしまって、外にいるあなたには聞こえないはず。 待ってる間、あなたは自由にしていて構わない。 (-288) 2023/09/19(Tue) 1:59:57 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → マスター エリカ「アレッサンドロ……ルカーニア」 一瞬、誰のことかわからなかったが。 アレッサンドロ・”黒眼鏡の”・ルカーニア そう、あの男のフルネームだと思い出せば、嘘だろうと口元を手で覆った。 まさか、マフィアの幹部ともあろうものが強硬派を牛耳っていようとは。 これでは、マフィアの……ノッテの連中も、実に可哀想ではないか。 エリカの話しぶりからいくと、どうやらイレネオは黒眼鏡とやりあったらしい。 その結果、二人共共倒れ……と、いうことなのだろう。 二人の間には何かあることは先日問い詰められたことからも明らかだったが、こんなに早く。 「……まったく、無理をしてるのはどっちなのだか」 「ありがとう。これは重要な鍵になりそうだよ」 会いに行かなくては。 ―――あの、黒眼鏡に。 (-299) 2023/09/19(Tue) 5:26:31 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 無敵の リヴィオ「そうですね……。 僕ら警察であっても見張りが立つ可能性もあります」 その場合突っ込んだ話は出来ないかも知れない。 それでも、牢の中で不安ばかりであろう二人のことを考えると、会うくらいはしてやりたいと思うのだ。 警察が、国が民を守らないというのなら。 その時は、個人が動くしかない。 とはいえこの男は、全部を守るなどという殊勝な思想は持ち合わせておらず、ただ、手の届く友人を自分勝手に救おうとするのだけども。 「まぁ……僕はもう少し調べてみます。 何かあったらその時は……よろしくお願いします、先輩」 (-323) 2023/09/19(Tue) 8:33:25 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → Isp. Sup. s. U.P.S. ヴィンセンツィオ壊れる、という事が。 初恋を歪に変質させた情をかかえて、人一人の人生を左右させるような、自分勝手で傲慢な幸を与える思想に至った事も含むのだとしたら。 この男はもうとっくに壊れてしまっていることだろう。 「どうですかね……、まぁ。でも……これは個人的に報復を考えてるから犯人を探してるだけです。 幼馴染の家族が殺された事件も調べてますし……」 「彼女には、ただ、施設を出ても人として生きるだけのものを与えようと思っています」 養育院にいたのだから、女には身寄りがない。 施設を出ても、重度の精神疾患と動かぬ体を抱えていては、死ぬしか道はないだろう。 男の行動は、やること成すこと彼女と幼馴染の事に直結しているが、内情をあまり話すことをしてこなかったため、これを知るものは極端に少ない。 それでも自分の身さえどうでもよく、手段をあまり選ばない思考を除けば、優しいだけの男に見えてしまう。 生活態度の件がなければ、相当の優等生に見えていたかもしれない。 「……あ、はい。 見回りに行く時間になったら返します」 鍵を、手の中でしっかりと握り直した。 (-326) 2023/09/19(Tue) 8:50:29 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ「お金の心配はしてないけど……必要なものを買ってるように見えなかったし」 後で結局要らなくなるだろうと、思うのだけど。 抵抗したり逃げられることはなさそうだから、掴んだ手の力を緩めて。 覇気が全くない顔をみつめながら、きょとり、と首を傾げた。 「え、何。突然……」 「男も女もなく考えたことなかったけど……そうだな……」 何かを想像しながら考えて、少しの間、沈黙の時間が流れた。 そういう事をする相手なら、少なくとも、内側の人間だと認めてしまった人、だから。 「それなら、相手の好きにさせてあげるよ。 抱かれる、のは……嫌じゃない」 逆が良いって言われたら、うーん……努力はすると思う。 と付け加えて答えるあたり、自信はあまりないようだ。 (_7) 2023/09/19(Tue) 16:07:40 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 幕の中で イレネオいつもはこんなに長くシャワーに時間をかけたりしないのだが。 一緒にベッドに入ることを考えると、念入りに洗わないといけない気がしてしまった。 時間をかけてしまったのは、そういう理由。 揃いというわけではないが、似たような灰色のスウェトの部屋着を着込んで、ほかほかの身体で帰ってくると、あなたはベッドに座っていただろう。 睡眠に難があるのはわかっているから、ベッドにだけは他よりも少しお金をかけていた。 サイズもゆっくりできるようにとセミダブルを選んでいたから、二人並ぶの自体は可能のはずだ。 質もよく、本来であれば気持ちよく寝れるはずなのだが。 何分ベッドの主が不眠症なため、その結果は悲しいものだった。 「ごめん、待たせたね」 ええと……と、唇を撫でていた手を見つめて、どうしたのだろうと首を傾げた。 あなたは座っているから、視線は逆。 何か考え事かい? と、心配そうに見下ろしている。 (-396) 2023/09/19(Tue) 16:27:40 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 無敵の リヴィオ「はい、気をつけます。 僕だって捕まりたくはないですし」 任せてくれの言葉に、満足そうに頷いて、小さく笑みを浮かべて返す。 いつも髪を気にしたりして動かない印象を持たれているが、やる時はやってくれる先輩だし、親身になってくれることを知っている。 だから、男はいつも、自然にあなたのことを先輩と呼んでいた。 「多分同期も動いてるはずです。 なにかの際には警部にも頼んでみると良いかも知れませんね」 そう言って、伸びてきた手を背中で受け止めれば、ぽん、と音が鳴った。 いつもの仕草が、今は大層ありがたい。 別れの挨拶にこくりと頷いて、「ではまた」と踵を返していく。 男はその日のうちに面会に挑戦しようとするだろう。 (-403) 2023/09/19(Tue) 16:51:26 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 幕の中で イレネオ「そっ」 「揃いというわけじゃなくて……似たようなのしか持ってないんだよ」 どう聞いても苦し紛れの言い訳だ。 本当に似たようなのしか持っていないのだが、揃いと取られて当然ではあるのだから。 ただ、それを柔らかい笑みを浮かべて言われるものだから動揺してしまうのは仕方ない。 だって、ベッドはもう、すぐ側にあるんだから。 何をそんなに考え込むことがあるんだろうと、心を落ち着けながらも訝しんで。 揺れる視線をきょろきょろ追いかけながら明け渡されるように、ベッドの上に足をかけた。 「は、見る?」 「あ、いや……うん、そう、だよね」 通常、人を寝かそうとするだけなら一緒に寝る必要は必ずしも必要ない。 けれど以前の事を考えたなら、一緒に寝てもらったほうが良い。 酔いもあったが、隣に人がいる温かさと隣の寝顔のあどけなさが安心感を誘って、寝ることができたのだと、そう思うし、隣で見られているというのは、逆に緊張してしまうだろう。 だから――――― ▼ (-503) 2023/09/19(Tue) 23:32:02 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 幕の中で イレネオ「キミも一緒に……、横に、 寝てくれない、かな 」心の中の言い訳を打ち消すかのように、ベッドの上から、そろりと手を伸ばして、ぎゅ、とその袖を掴んだ。 もう寝転ぶだけの状態だったから、あなたの視線は10cmよりももっと高くて自然と見上げていて、なんだか強請ってるみたいだな、なんて心の中で呟く。 揺らめく花浅葱が、こう言うので限界だと語っているように見えるかもしれない。 子供ではないのだから。 あんな話をしたのだから。 それがどういう事になるかなんて、ちゃんとわかっている。 逃げるチャンスだって、ちゃんとあった。 これが最後の”待て”なのなら、僕は”いいよ”と手を広げてやるだけだ。 (-504) 2023/09/19(Tue) 23:35:24 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ「どういう意味だよ」 言い方が、なんだか気に入らなくて拗ねたような顔になる。 急に変な例え話をしておいて、そんな、安心したような息をつくなんて、意味がわからない。 「普通じゃなかったら、なんなんだい?」 「言ってる意味はわからないけど……僕が誰に身体を許そうが僕の勝手だ。 許してもいいと思ったら許すし、自分の価値なんてどうでもいいよ」 大事な人に幸を与えられるなら、それを成すその時に、自分は別にそこに居れなくたって構わない。 他の誰が傷つこうとも、自分が傷つこうとも、それを成す方が良いと、本気で思っているのだから。 「でも、そうだな……」 「もし、そういう機会があったとしても……キミと恋人になるのは、嫌だな」 だって。 3ヶ月で飽きられてしまうのは、嫌だろう? 例え身体をキミに許したとしても、幼馴染が良いんだ。ずっと、ずっと、壊れることはないから。 執行候補の話には、一瞬目を見張ったが、そうか、と小さく息を漏らした。自分でも怖いほど落ち着いているけれど、自分には今はやるべきことがあると思っているから、取り乱している場合ではないのだ。 「近寄るなっていうけど……僕は僕のやれることをやる。 キミが捕まるなんて、僕は許さない」 「アリソン・カンパネッロに……僕は、会いに行くよ」 (_9) 2023/09/19(Tue) 23:50:58 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 黒眼鏡――かつん。 廊下に一つの足音が響く。 牢の中にあなたはどんな格好でいるだろうか。 立っているなら堂々と見据えて、座っているなら冷めた目で見下ろして、あなたを見る一人の男が牢の前に立った。 いつもは客としてあなたの前に立っていたけれど、今日は違う。 警察として、多少の無理を通してここに訪れた。 そうでなければ、ここに堂々と来ることは出来まい。 「アレッサンドロ・”黒眼鏡の”・ルカーニア……いや」 つらつら語るはあなたの名前。 でもね、知っているんだ。お前の、正体。 「アリソン・カンパネッロ」 「……取り調べを……させてもらうよ」 ―――聞きたいことが、あるんだ。 (-511) 2023/09/20(Wed) 0:08:46 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ「ぅ、わっ」 強く背中を抱かれて、膝立ちになる。 何も支えがなければベッドから落ちていたかも知れないけれど、あなたの腕と身体が男を包むから、しっかりと抱きとめられてしまった。 くっついた身体から、互いの熱が伝わる。お風呂上がりだから二人共きっとまだ温かいだろう。 くどいほど何度も繰り返される確認は、それだけで羞恥を掻き立てられて心臓に悪い。 無言でこくりと頷いたから、額がこつんとぶつかりそうになった。 解ってるよ。 ―――それが、肯定。 ……もう、これは決して従順な犬なんかではない。 獰猛で、震える獲物を狙う狼だ。 眼前に広がるのは、怖いほど貫いてくる金の瞳。 近づきすぎた自分の目には、ギラギラとしたそれしか映らなくて。 その中に映る自分の顔が見たくなくて。 きゅ、と花浅葱の花弁を閉じた。 それはもう、あなたにとってはただの合図にしかならないはずだ。 (-516) 2023/09/20(Wed) 1:17:48 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ「僕に価値がなくなったとして、何が変わるっていうんだい。 初物は高いって言葉では聞くけど、別に、身売りしようなんて思ってない」 ただ、傷ついてもいいと、思っているだけ。 「わからないよ。身体は担保になるって話かい? そういう仕事を……してきたんだよね、キミはさ」 望まないし、要らない。そんなまやかしの三ヶ月は。 自分に甘くしてほしいなんて思ったことがないのだ、ましてや、夢にしたいなんて絶対に願わない。 弱みだって何も気づいてないけれど…… ただ、あなたに願うのは、置いて行かないで欲しい。 たった、それだけなのだ。 「キミを捕まえるのは僕だよ。 逮捕されるほどの……、正当な理由がないのに無理やり逮捕するなんて、間違ってる。 僕だってただで捕まえられるのは嫌だけど、アレの正体を掴んだなら、行かないわけにいかないだろ」 「捕らえられた後輩が居て、僕は先輩」 「キミは、たった一人の幼馴染で」 「僕は警察だ」 (_11) 2023/09/20(Wed) 7:41:38 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ―――嬉しい? それなら、よかった。 耳に届いた言葉と殆ど同時に、首筋に柔く歯が立てられた。 抱き寄せられ、覆いかぶさるように抱きすくめられた状態では、抵抗どころか身動きすらできそうもない。 遠い子供の頃の記憶に一度だけ、ゴールデンレトリバーを飼ってたけれど、よくこんな風に乗られては顔中舐められたっけ、なんて思い出したりしてしまった。 そんな事を思い出してる間にも、首には歯型か鬱血痕がついてしまったかもしれないが、男は別に、それでも構わない。 「……っ」 それよりも。 手なんて繋いだことなかったから、あなたの手がこんなに大きくて無骨だってことを今まで知らなかった。 服のサイズも、何もかも、今までこちらに合わせてくれていただけで大きな差があるということを、初めて知った。 やり場のない手を、そっとその背に回してしがみつくようにして、僕は。 その背の広さも違うということも、やはり、初めて知った。 (-558) 2023/09/20(Wed) 8:05:11 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 黒眼鏡「酷いツラだね、誰にやられたの?」 くすりと、笑う。 その様子では、クリアな視界ではないだろうから、どこまで自分の顔が見えてるかわからなくて。 男は牢の格子に手をかけて、その顔を寄せた。 「まぁ、答えずとも大体わかったけど……。 僕の大型犬の後輩が、随分と世話になったみたいだね」 正義感が強くマフィアを嫌う彼のこと。 自分が睡眠薬を買いに行った、それを見ただけで強い力で問い詰めてきたくらいだから、彼があなたを狙うのはおかしなことではない。 それでも、個人的な理由でもなければ、一人で突き進むなど。 こちらを止めておいて自分で行うなど、到底、許したくはないものだ。 「証拠なんてこれからいくらでも。……じゃあ、まずはひとつ」 「うちの大型犬……イレネオ・デ・マリアとはどういう関係なのかな」 (-560) 2023/09/20(Wed) 8:22:26 |
エルヴィーノは、今、牢屋の格子の前にいる。 (a21) 2023/09/20(Wed) 8:24:02 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ「そんな風に言われたら、気になるだろ……」 何を面白がっているのかと、ジト目で見ながら考える。 自分が怒りそうな隠し事とは、一体なんだろう。 怒らない保証はないから、怒らないから言えとは、ちょっと言えない。 「…………」 「僕の望みはたった一つ。 もう二度と、居なくならないで欲しい……それだけだよ」 二度大事な人を失った時、どこかで捻れてしまった感情がある。 三度目が訪れたなら、その時自分自身がどうなるかわからないから、大事な人はもう作りたくない。 それでも、あなたは別なのだ。 再会した時どれほど嬉しかったか、あなたにはわかるまい。 だからあなたとは恋人になりたくないと言った。 傷つきたくは、ないから。 「逆に聞くけど……キミは、僕が傷つかずに居たら幸せかい?」 「キミの要求はひっくり返せば、僕には何の期待もないみたいだ」 別に、期待をしてほしいわけではないけれど。 キミにとっての僕は、僕にとってのキミほど、重くはないのかもしれないな。 「……、その理由を聞きに行くんだ」 「どうしてこんな法を作ってしまったのかも……全部ね」 「別に………素直に捕まってもらおうなんて、思ってない」 ただ、他の誰からも捕まらないでほしいと思っているだけだ。 (_13) 2023/09/20(Wed) 14:52:55 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ「あ、…ぅ……」 最初はただ、くすぐったいだけだった。 噛む力も弱かったし、舌の感触がなんだかぞわぞわする感覚がして身を震わせた。 けれども強く噛まれはじめれば、それに耐えるような声を上げて、でもそんな声を上げるのには耐えられなくて唇を噛む。 苦しくはない。 強引なのも嫌いじゃない。 求めてくれるのは、好きだ。 求めてくれたなら、与えることができるから。 「……っ、」 腹を撫でる手に気づけば、今度は何をするのだろうかと。 期待なのだか不安なのだかよくわからないまま、背中を掴む手に力を込めた。 (-594) 2023/09/20(Wed) 15:07:36 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 黒眼鏡「それは失礼。 うちの犬は正義感が強すぎてね」 犬に転ばされてしまったのかい? と、あざ笑う。 「はぁ……、今のことを聞いてるわけじゃないのはわかってるだろ」 今の姿を見れば確かに加害者と被害者ではあるが。 けれどもそれは、お互い様なのだろうにと肩をすくめた。 「強引な男なのはわかってるけど、それでもたった一人で無茶をするには理由があるはずだ。 お前たちは、過去にも何かあったんじゃないのかい?」 (-595) 2023/09/20(Wed) 15:13:12 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ首輪に付けられた鎖は、一体何処に繋がっているんだろか 「一度居なくなった人が何言ってるんだか……」 牢屋の中に居る分には、確かにそうかもしれないが。 捕まえる以前に、捕まえなきゃいけなくなる程の事をしないでほしいのが前提だ。 しなくていいのなら、逮捕なんてしたくはない。 だって。 追いかけるのが自分なら、様々な自由が効く。 警察として褒められたことではないが、無理な逮捕をしないですむ、そんな一面の事を、考えていたから。 「………」 「それって、僕が暴力を振るわれていたら、キミは喧嘩をしてくれるってことかい?」 そうだとしたら、だめだ。 一つだけ、譲れないことがある。 僕だって、ルチアを傷つけるものは許さない。 僕が傷つくことで、ルチアが傷つくのなら、僕は「それ」を絶対に許しては駄目なんだ。 「キミは……どうしてそんな事を知ってるんだい。 その様子だと……アリソン・カンパネッロが誰だかも知ってるんだね」 「…………行かない、と約束はできないけど……、牢の外から、安全に会う事くらいは約束しても、いいよ」 それでは、駄目かい? (_15) 2023/09/20(Wed) 16:08:15 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ吸血鬼じゃあるまいし、何がそんなに首が美味しいのかわからないが、そうこうしてると首の両方が歯型や鬱血痕で彩られてしまっただろう。 もしかしたら、ボタンをきっちり止めていても見えるものがあるかもしれないが、耐えるばかりの男はそれに気づけない。 「……ん」 腹を弄る手が、熱くて、くすぐったくて、焦れったい。 想像してたよりずっと恥ずかしくて、その羞恥に呻いてしまいそうだ。 身を捩ってみても、抱きすくめられたままでは何の抵抗にもなれやしない。 恥ずかしいから焦らすな、なんて言えないから、あなたの好きなようにさせてしまっている。 ただただ、体温ばかりが上がっていってる気がした。 (-604) 2023/09/20(Wed) 16:27:45 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ「キミにとってはそうでも……僕は」 もうどこかで死んでしまったんじゃないかとまで、言われていたんだ。 あなたとて、住所が変わってすぐは余裕もなく、会いに来るなんてことは出来なかっただろう。 たったそれだけの期間すらも、連絡も、詳しい事情も知ることもなく、足跡も分からず、生きてるのか死んでるのかも分からなかった事が、どれほど辛かったか。 今でこそ、連絡が少なくとも気にすることはないが。 それは、生きていてちゃんと足跡が残されているからにすぎないのだ。 「……わかった」 「危険が及ぶような会い方はしない。……はぁ、これついこの間後輩に言わされたばかりだな」 やれやれと肩をすくめた。 これはもう諦める他はない。 だって、男はあなたに傷ついて欲しいわけではないのだから。 「……じゃあ、二人が狙われた理由、教えてくれるかい? 代わりに、アリソン・カンパネッロの正体、教えるから」 (_17) 2023/09/20(Wed) 16:46:09 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ身体に溜まった熱は、どうしたって下腹部に集中してしまうものだろう。 直接それに触れられることなく、くすぐられるのは、明確に焦らされているということが理解できてしまって。 羞恥ばかりが込み上がって、再び見つめられたその顔を見返すのが難しくて、うつむいて視線を外した。 「……こ、こんな時ばかり何も聞かないの、ズルいだろ……」 「なんで焦らすんだよ…… 顔、見れな 」荒い息が、興奮を表してることくらい、わかるのに。 我慢されるほど、僕はか弱い存在じゃ、ないつもりだけどな。 (-607) 2023/09/20(Wed) 17:03:29 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 黒眼鏡「勿論、キミとの話が終わったら会いに行くさ。 その前にキミから色々聞いておかなければいけないなと思っただけで」 だからそこは、順番が違っただけだと、前置きをする。 あなたの話を、嘘なのか本当なのか。 じっくりと見定めるように聞いて、笑顔を見れば深々と息をついた。 ――― 個人的に 、ね。「僕に、キミから物を買うのはやめろって止めに来ておいてね……。 理由がなかったというなら、それはしつけのし直しが必要だな」 格子にかけた手は離れることなく、意識を変える。 この男はイレネオが邪魔だと思った、それ自体は本当だろう。 けれど、本当に聞かなければならないことは、そこじゃない。 「―――。 じゃあ、2つ目。ここからが本題だ。 アリソン・カンパネッロ なんて名前を偽装して法案を通したのは何故だ」 (-613) 2023/09/20(Wed) 17:37:49 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ笑い声が聞こえて、思わず顔を上げた。 この瞬間ギラギラした瞳が穏やかになって、澄んだ笑みをしていたから、思わず魅入ってしまった。 まさか本当に、そんなに愛されてるかもしれないなんて。 この時はまだ、ちゃんと理解はしてないけれど。 やっぱりまた羞恥を感じて視線を彷徨わせてうつむく。 その視線の先には、多分、張り詰めた熱がある。 「え? ………あ、」 何を、とは言われなくとも。 同じ男なんだから、それが何かなんてわからないはずがない。 戸惑いはすれど、人のものに触れた経験なんてないけれど、ある程度はどうしたらいいかはわかっている。 わかった、と頷いたなら、あなたはその手を導いてくれるだろうか。 なににしろ戸惑いながら、下着の上から触れることになるのだろう。 (-616) 2023/09/20(Wed) 17:50:33 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 黒眼鏡「両方の話を聞いておくのは大事なことだよ」 「心配を……かけたことは自覚してるけれど。 僕だって心配くらいするって話で……いや、その話はもう良い」 本題と違うことまで思い出してしまいそうで、頭を振った。 話に集中できなくなってしまう、これはいけない。 というかそのだらしない態度はよせ、とは思うのだが。 牢の外からしか会わないと、もうひとり、心配性の誰かと約束したから破れない。 態度の一つくらいは大目に見たって構わないだろう。 ツッコんではいけない。 「そんな事はわかってる。 マフィアのカポ・レジームが金出してまでマフィアを取り締まるのは何故かと聞いてるんだ。 これはマフィアにとって重大な……裏切り行為だろう?」 (-617) 2023/09/20(Wed) 17:58:40 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 黒眼鏡「あぁ、駄目だね」 「裁判になればその理由は必ず聞かれるし、刑量の判断材料になる。 自分の首を絞めるだけだし、納得の行く理由を話してほしいものだけど」 むしろ話してくれたほうが仕事は楽になるんだけど?と冷めた目を向ける。 けれど裏切ったということをあなたの口からちゃんと聞いたことで、なんとなく、心が痛くなった。 多分それは……消耗している大事な幼馴染が、あなたの部下にいるからで。 「…………」 「裏切った仲間は、大事ではなかったのかい?」 語る声色は少しだけ、トーンが落ちた。 (-622) 2023/09/20(Wed) 18:32:06 |
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