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【人】 大富豪 シメオン─ 後日譚 ─ [深い井戸の底のよう場所で意識が揺蕩っている。 意識があるということはまだ生きているということだろうか、それともすでに事切れていて魂だけになったのか。 そうだとしても後悔はない。 女との競演は人生で最高の時間だったと言える。 死線を潜り抜け、勇者と称されるようになったときよりも、ずっと。 あれほど満たされた時間は他にない。 ならば、もう………いいではないか。 約束通りそして文字通りこの命を女に捧げた。 仮にあと10年掛けても届かぬ筈の『美』に指先が触れられた。 もう、思い残すことなど─── ] (0) 2022/11/28(Mon) 11:56:05 |
【人】 大富豪 シメオン[ゆっくりと浮かび上がる感覚。 意識が浮上しようとしているのか。 死を受け入れたつもりになってはいたのだが、どうやら死に損なったらしい。 目を覚ませばそこは見慣れた部屋。 日当たりのいい窓辺から差し込む陽光は柔らかく、換気のためだろうか、窓は少しだけ開けられていて涼やかな風が心地良い。 そっと手を伸ばす。 出来得るならば、柔らかで淡い髪色のそれを手に掬う。] イルム…… [彼女はそこに居た。 眠っているのか、それとも佇んでいるのか。 どちらにせよ、ただそこに居るだけで、その姿がとても美しいと感じられた。] (1) 2022/11/28(Mon) 11:57:18 |
【人】 大富豪 シメオン[──無いはずだった。 『美』を愛し、『美』を求め、そして辿り着いたのだから、思い残すことなどある筈も無かったのに。 足りないのだと疼く。 もっと欲しいと、もっとお前が欲しいと欲が飢える。 お前を求めて止まない。 命までも捧げたつもりで、それでもまだ渇望していた。 お前という『美』がもっと欲しい。] ……強欲なのは私も同じだな。 [そんなことはとっくに理解っていた筈だった。 だからこそ互いに惹かれ合ったのだから。*] (2) 2022/11/28(Mon) 11:58:35 |
【人】 大富豪 シメオン[未だ意識がぼんやりとしていたからだろうか、不意を突くようにし抱きしめられていた。柔らかな髪がふわりと舞う。 震える声。 潤んだ瞳。 強く抱かれる。 なんて強欲な女。 命を懸けて見せたというのに、まだそれでも足りないというのか。 もっとと私を求めるのか。 男は目を細めそっと髪を撫でつける。] (6) 2022/11/28(Mon) 21:42:59 |
【人】 大富豪 シメオン[満ち足りぬのは己も同じ。 歳も違う。 扱うものも剣と弦。 男と女、生まれも、境遇も違う。 同じところを探すのが困難なほどに違うというのに。 それだけまるで鏡写しの様。 その渇望、互いを求め合う、その強欲。 ぴたりと寄り添うように嵌まり込む。] (7) 2022/11/28(Mon) 21:44:16 |
【人】 大富豪 シメオン[男にとって女は喰らうべき『美』であった。 そらは己が『美』を磨くために必要なピースの一片。 男にとって女は貪る『美』であった。 欲望の熱が求めるままに犯しつくすための獲物。 男にとって女は『美』の弟子であった。 己が美にかける情念、そして執念のその後継者。 男にとって女は『美』の娘であった。 この手で育み、花開かせた宝のような存在。] (11) 2022/11/28(Mon) 22:54:01 |
【人】 大富豪 シメオン[だが、男にとってはただ一人の愛する女だった。 女は誰よりも男を理解し、男は誰よりも女を理解していた。 その生き方も美への想いも、お互いを喰らい合いながら、理解し、求め合い、いつしかお互いでなければならないほどに───] (12) 2022/11/28(Mon) 22:54:15 |
【人】 大富豪 シメオン[それは遠くない未来。 いつか先に逝くことになるだろう。 それは人の身であれば避けられない未来。 だけど今は未だ、女の側に居たいと願ってしまった。] 私はここにいる、お前の元にな。 [溢れて零れる雫を拭いとりながら、男は女の頬をそっと撫でる。 全てを、お前が私の全てを喰らい尽くすまで、きっと私はお前の側に居るだろう。] イルム…… [男は女の顎に手を掛けるとこちらを向かせる。] (13) 2022/11/28(Mon) 22:56:23 |
【人】 大富豪 シメオン[近づく唇を避ける訳もない。 迎えて、重なる唇と唇。 あと幾度、こうして口付けを交わすことができるだろうか。 あと幾度、女の『美』を堪能できるだろうか。 いつまでもこうして、お前の欲を満たし続けていたい。 いつか終わりが来るその時まで。 だから覚悟を問うた。 それは己が覚悟を決めるため。 お互いが鏡合わせであるのだから。 終わりの、その次を始めるために。] (21) 2022/11/28(Mon) 23:38:12 |
【赤】 大富豪 シメオン[押し倒した女の首筋に男は唇を這わせた。 口付けてから舌で舐め、今度は強く吸い付いて赤い痕を付ける。 そうしながら服を弄り、肌に指を滑らせて、女の情欲を煽るように触れる。] お前は私のものだ。 [そして、男もまた女のもの。] だから、私の全てがお前のものだ。 [男はゆっくりと女の衣服を脱がせていく。 そして、己もまた身につけた衣服を脱いでいく。*] (*17) 2022/11/28(Mon) 23:40:14 |
【赤】 大富豪 シメオン[何日寝ていたのかはわからない。 それでも目が覚めて真っ先に頭にあったのは、女をが欲しいという飢え。 こんなにも心を占める女など他にいない。 お前だけだ、 私をこんな風にするのは。 [双丘に手を触れる。 その膨らみを淡く撫でてときどきその形を変えさせながら、指先を乳輪にそって滑らせて、だがその蕾には触れずに焦らす。] 熱くさせてやろう。 [植えつけた官能を思い出させるように。 首筋に吸い付き痣を増やしていく、耳朶を舐り噛んで、囁く。] (*24) 2022/11/29(Tue) 12:14:57 |
【赤】 大富豪 シメオン[絶妙な加減で触れる。 熱い指先で女に熱を移していくのに、官能が高まる直前で弱めてしまう。じわりと弱火で炙るように、じっくりと熱を通していく。 女が欲しがるのなら、 男は一度だけ胸の蕾を指で摘んで捏ねた。 でもそれだけ。 そのあとはまた焦らすような触り方。 そんな触り方で男は女の腹や腰、それから太腿に触れる。 決して強い快感は与えずに、微かな性感だけを、しかし確かに熱を煽り昂らせていく。] (*25) 2022/11/29(Tue) 12:16:01 |
【赤】 大富豪 シメオン[焦らされて燻る女の熱は、喘ぎを漏らし肌を朱に染め、潤んだ瞳で男を求めている。男は満たさぬ様、しかし乾かぬ様に女に緩やかな快感を植え付ける。] まだだ、もっとお前を蕩けさせてやる。 [触れる指先は相変わらず微かに触れるのみ。 疼きを鎮めるどころか、ますます燻らせながら。 ときおりその首筋に強く吸い付く。 ときおりその耳朶に歯を立てる。 ときおり蕾を弦の様に爪弾く。 緩急を自在に操りながら、女の体を熱く淫らに染める。] (*39) 2022/11/29(Tue) 20:57:30 |
【赤】 大富豪 シメオン[男の指は女の内股へと伸びる。 溢れて伝う蜜を指先で腿に塗りつける。 こんなにも濡らしていることを女自身に教える様に。 まるで、それを咎める様に。] もう、我慢できないか? だが、まだだ。 [それでも男はまだ焦らし続ける。 指先は腿から再び内股はと伸びるが、秘芽も秘唇も触れはしない。 僅かに近くをなぞるだけ。 火をつけながら、それが炎となる前に空気を止めてしまう様に、触れては離れ、微かに掠めて、また離れていく。*] (*40) 2022/11/29(Tue) 20:58:44 |
【赤】 大富豪 シメオンそうだ、もっとだ。 [鎖骨にキスを一つ落としす。 それから胸元にも一つ。 左の胸の頂きの横に、右の胸の頂きの下に。 鳩尾に一つ、お腹の上に、それから臍にもキスを一つ。] 体中で私を感じるんだ。 [下腹にもキスを落として。 それから下生えにも一つキスを落とす。 さらにその下、秘芽に微かに唇を掠めて、秘唇のその縁の外側を舌で舐る。] (*45) 2022/11/29(Tue) 22:17:11 |
【赤】 大富豪 シメオン[だけど男の唇はそこから離れて。 左の太腿のその内側に吸い付いて赤い痕をいくつも残す。 それから膝裏にもキスをして、脛にも、ふくらはぎにも。 足の甲にキスをすると、指の一つ一つを舌でなぞった。 それが終われば今度は右足の指を舌でなぞって、足の甲に口付けを落として、太腿までキスを降らせていく。] (*46) 2022/11/29(Tue) 22:17:29 |
【赤】 大富豪 シメオンまだ、我慢できそうか? [そうして、微かに触れる様に秘唇に唇を触れさせると、男は顔を上げて笑みを浮かべながら、そんな風に意地悪そうに尋ねた。*] (*47) 2022/11/29(Tue) 22:17:55 |
【赤】 大富豪 シメオン[不意に男の唇が左胸の頂きを啄んだ。 右の頂きは指がすっかり尖っているだろうそれをきゅっと摘む。 打って変わって強い刺激。 焦らしに焦らした熱を一気に昂らせる様に。 頂きを強く食む。 舌で捏ねくり回して強く吸う。 右手は下に降りて秘芽を撫でる。 優しく押して、それから擦りつけて。 それから指先でカリカリと刺激する。 男は我慢できないと言いながら、女への愛撫を続ける。*] (*57) 2022/11/29(Tue) 22:59:45 |
【赤】 大富豪 シメオン[思えば不思議なこと、だけど今はもう不思議とは思わない。 求めて止まぬ。 欲しくて仕方がない。 もうこれ以上我慢なんて出来ようがない。 それはきっとお互い同じなのなど確信がある。 乱れる女の姿に男の情欲もすっかり煽られて。 艶やかなその声に誘われて。 剛直が濡れる花弁に触れる。 しとどに蜜を溢れさせるその中へ僅かに沈み込む。] (*59) 2022/11/29(Tue) 23:13:10 |
【赤】 大富豪 シメオン[燃え上がるほど熱は昂り、鼓動は激しく脈を打っている。 それなのに妙な安堵感がある。 まるでこうして女の中にあるのが当然とでもいうように。 熟れて絡みつく媚肉を割り開いて、剛直はあっさりと根元まで飲み込まれた。 卑猥な蜜の水音が、あるいは熱い柔肉が、男を迎い入れ、そして離さない。こんなにも待ち侘びていたと剛直を締め付ける。] そんなに欲しかったか? [意地悪な台詞。 そんなこと聞かなくても理解っている。 男だってこんなにも女を欲しくて仕方なかった。] (*67) 2022/11/30(Wed) 6:51:48 |
【赤】 大富豪 シメオン[興奮なんて言葉では足りない。 頭がどうにかなってしまいそうな程、滾る情欲が全身を走り回る。 剛直を納めて暫し男は動きを止める。 だけど女の中でビクンビクンと強く脈動する。 犯したい。 喰らいたい。 この女の全て。 幾度抱いて、味わっても、満足などできない。 渇望して止まないのだ。 それは変わらぬ想い。 求めるのは『美』か、それともこの女か。 そんなことは瑣末なこと。 男の中ではもはやその二つは同じものなのだから。] (*68) 2022/11/30(Wed) 6:52:55 |
【赤】 大富豪 シメオン[ゆるりと動き出す。 奥まで納めた剛直をゆっくりと引き抜く。 絡みつく媚肉を引き摺り、またゆっくりと奥へ押し込み、奥に届くその瞬間に力強く突き入れる。] 嗚呼、イルム、お前は本当に美しい。 [気を抜けば一瞬で達してしまいそう。 甘い甘い果実のよう。 そして、余りにも熱く、余りにも気持ちがいい。 男は焦らしながら焦れていた。 女を欲しがる情欲はとっくに臨界点ギリギリだった。] (*69) 2022/11/30(Wed) 6:53:28 |
【赤】 大富豪 シメオン[快感の漣に攫われる。 それでも男は緩急をつけ、女がより感じる部分を老練な手管で責めていく。] 私を刻め、心にも体にも。 お前の全ては私のものだ。 [息を荒らげながら、男は律動を続ける。 休む間など与えない、熱を逃す間など与えない。 快感と悦楽に溺れさせる様に責め続け喰らい続ける。 男の荒い呼吸。 女の甘い嬌声。 ぐちゅりと響く淫猥な水音と肌のぶつかり合う音。 それから軋むベッドのスプリング。 陽光に満たされる部屋で交じり重なり合う。*] (*70) 2022/11/30(Wed) 6:54:15 |
【赤】 大富豪 シメオン[男は溺れていた。 艶やかに乱れるその美しい姿に。 剛直に絡みつききつく締め付ける艶肉に。 快楽に啼く声も甘く、男を誘い煽る。 やがて動きは強く深いものに変わる。 それは男も既に限界寸前ということ。 快感の海に溺れながらただ只管に女を貪り喰らう。] (*74) 2022/11/30(Wed) 15:39:49 |
【赤】 大富豪 シメオン[叩きつける様に突き入れられる剛直。 手管などもはや用を為さず、あるのは女の奥に、もっと奥に、少しでも奥へ届けたいという本能だけ。 もっと味わいたいという欲と、早く女の中に吐き出したいという欲。 背反する二つの欲はしかし官能の強さによって後者が勝る。 我慢などできるはずもない、抗うなど一瞬だけのこと。] 出すぞ…っ [女の腰を掴んでより一層深く。 意識が飛びそうなほど快楽の強い波に攫われながら、男の精は女の最奥で一気に吐き出された。ビュルビュルと勢い強く胎の中を濃厚な子種がどっぷりと溜まっていった。*] (*75) 2022/11/30(Wed) 15:40:38 |
【人】 大富豪 シメオン─ とある男の話 ─ [剣王シメオンの最も優れた能力とは何か。 男と共に『北の勇者』と呼ばれた者たちは口を揃えてこう言う。 「瞬時に本質を見抜く力」 と。 敵の弱点を即座に見抜き、敵の意図を瞬時に判断する。 その力こそが剣王の持つ最たる能力、彼らはそれを『心眼』と呼んだ。 ラ・コスタへ移住してより、その力は『美』に対して向けられた。 才能豊かな、しかし伸び切れない眠れる『美』を見出しては、彼らの飛躍に必要なものを与え、世に送り出した。 端役で燻るダンサーはそれによってプリマバレリーナとなった。 場末で小銭を稼いでいた歌い手は大劇団のプリマドンナとなった。 路上で似顔絵を描いていた者は流行りの画家となり、土産物の工芸品を作っていた者は街を代表する工芸家として名を馳せた。 シメオンによって見出され『美』の担い手として有名になった者は数多い。] (48) 2022/11/30(Wed) 17:07:08 |