人狼物語 三日月国


184 【R-18G】ヴンダーカンマーの狂馨

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【人】 医者 ノーヴァ

[突如足元で耳をつんざく破砕音がした。
思わず丸くした目を下にやれば、粉々に割れたティーカップ。履いていたズボンは先ほど煎れた熱々の珈琲で湿ってしまっていた。

数秒遅れて空っぽの指先を摺り合わせ、……また数秒。
そうすれば感覚は遅れてやってくる。]
 


              …………
ぅあちっ!



[ひりひりと脛に響くは火傷の痺れ。
湯気の立つ液体を衣服に被ったのだから仕方ない。
この後未だに熱を孕んだそれを着替えることになるのだが、不注意が招いた自業自得でしかなかった。
ジェインが未だ見ていたのならば、更に「自覚を持て」と叱りつけるのだろう。

これを一つの例とするならば、彼はよくものを壊す。先程のティーカップのように。]
(45) 2022/11/05(Sat) 2:50:29

【人】 医者 ノーヴァ

[決まって、いつも大切そうにしているものばかりだ。
金をはたいた高級時計だとか、買ったばかりの魔道具の子機だとか。
……誕生日にジェインから貰った青い薔薇模様のティーカップだとか。

今ではすっかり謎の紋様に変わってしまった陶器の欠片たちはすぐさま箒でかき集められてゴミ箱行きだ。
( 彼女に見つかったら、なんて言おう? )

終わらない悩み事を増やしながら、自嘲混じりに頭をかいた。

掃除はまめにする方だ。ワイングラスは時折磨くし、仕事道具だって衛生管理はしっかりしている。
全体的に整った部屋の中にいるのに、時折ものの扱いがずさんで、結果何かが壊れてしまう。仕事以外の肝心なところでは老人の様に気が抜けている───……それが彼に対する周りの印象評価だった。]
(46) 2022/11/05(Sat) 2:51:03

【人】 医者 ノーヴァ

[そのせいか……あの銀鷹公も最近、「コレクション」に対する彼の「貸出依頼」を矢鱈と渋るようになってしまった。純粋に研究に──これからの医学のために使用したいというだけなのに!]


  困ったなァ、どう書けば通るだろうか。
  「これからの現代医療のために」……いや、
  「今も苦しむ患者のために」……これでもないな。

  「今、アプリカでは10秒に1人、
   ジャングルで命を落としています」……いや、
  どんどん論点からずれていっている。ふむ……


[黒いズボンから赤紫colorのものに履き替えた彼が相も変わらず頭を抱えているのは、そんな頭の固い島の主人の許諾を得るための書類作成が原因であった。

どれだけありふれた言葉を並べようと、あのお固い親父を動かすには何かが足りないような気がして。]
(47) 2022/11/05(Sat) 2:51:17

【人】 医者 ノーヴァ



[切り裂かれた沈黙は再度修正され、この部屋を覆い尽くす。思考にはぴったりの空間だった。

誰も見ていなければきっと真実は覆い隠される。
先程彼はティーカップから目を離してなどいなかったこと。遊ばせた指先のわずかな隙間をすり抜けて、カーペットまで落ちて罅割れるところまでみていたのかもしれないこと。

……誰も見ることのできない、外界から隔たれたような曇った硝子が、その姿を覆い隠していたこと。]



     [まるで一切知らずに机に向かう子供が如く、
      彼は思考の海に身を委ねている。
      来客などがあっても
      数十秒なくては気づかないくらいに。]**


 
(48) 2022/11/05(Sat) 2:52:13
医者 ノーヴァは、メモを貼った。
(a9) 2022/11/05(Sat) 2:52:17

警備員 ジュードは、メモを貼った。
(a10) 2022/11/05(Sat) 2:52:27

隻影 ヴェレスは、メモを貼った。
(a11) 2022/11/05(Sat) 5:22:17

【人】 住職 チグサ

── 夜明け 慈厳寺 梵鐘にて ──

[僧が撞木を打ち付けると、梵鐘が震えました。
 体に染み入るような音が、朝の清涼な空気に広がります。
 大きな梵鐘を鳴らすためには、それだけ重たい材木を使わねばなりません。
 撞木から吊り下がる太縄は重みに軋み、その縄を握る修行僧もまた、歯を食いしばっています。
これもまた、修行の一つ。

 昔、今ほど技術が発達していなかった頃は、お寺の鐘が時計がわりでした。
 今では時刻が知りたければ魔法具があります。
 いつでも好きな時に、より正確な時刻が知れます。
 時計は寺の鐘などよりもよっぽど便利です。
 ただ時刻を知りたいだけなら。

 それでもお寺は昔と変わらず、日に三度の鐘をつきます。重く、辛い思いをしながら、人力で鐘を鳴らします。
 朝に、昼に、そして夕に。時報として。
 島に住む人々に向けて。島を訪れる人々に向けて。]
(49) 2022/11/05(Sat) 6:41:09

【人】 住職 チグサ



    
ぼぉ……ん、   ぼぉ………ん



[梵鐘は耳に心地良く、空気を、体を、低く震わせます。
 音ははあちこちにぶつかり、幾重にも割れて、重なり、やがては島中を通り過ぎます。
 ゆったりとうねる共振が潮風と共に訪れれば、人々は時間の流れに気づくでしょう。

 その音を合図に、
 人々はあるいは起き出し、
 あるいは作業の手を止め、
 
あるいは同胞と息を合わせるのです。>>41


 今日もまた、梵鐘は鳴るでしょう。
 日に三度。朝に、昼に、そして夕に。]*
(50) 2022/11/05(Sat) 6:43:40
住職 チグサは、メモを貼った。
(a12) 2022/11/05(Sat) 6:46:47

【人】 隻影 ヴェレス

 

  「行ってらっしゃいませ坊ちゃん
   夕刻の打鐘前にはお戻り下さいね」


      ……うん、うん。分かってるよ。
       少し気分転換に出るだけだから。


 [日は高く昇らんとしている。
  簡略化された儀式は正午を待たずして終わり、
  母の埋葬を見届けた少年が再び屋敷を出る頃。]
 
(51) 2022/11/05(Sat) 6:52:24

【人】 隻影 ヴェレス

 

 [香典返しじみたお気に入りの菓子折と、
  発明品の一つである写真機。
  その他の荷物を鞄に纏めている最中、
  若いメイドの一人が再び近寄ってくる。]

      「それと念の為……こちらを。
       冷えると“火難が相次ぐ”ものですから、
       もしもの際はどうかお役立て下さい。」


   ちょ……両手が今塞がってるんだ。
   真っ赤で綺麗だし腕にでも巻いておいてくれ。

 [取り落としそうになった書籍を鞄に詰め込んで、
  刺繍の施された天鵞絨の様な布を括り付けられて
  慌ただしく屋敷を出た。]
 
(52) 2022/11/05(Sat) 6:52:53

【人】 隻影 ヴェレス



 使用人達は日陰者である筈の私にも
 
毎日頻繁に、明るく接してくれる


 魔人の血を引く故の魅了性によるものかも知れない。
 それでも私は彼女らに応えたく、勉学に励む。

 痛ましい事故があったばかりでも、
 やるべき事は当たり前の様に降り注ぐから。
 私もまた、直ぐに前を向けるように
 心を癒す切っ掛けを必要としている。

 
(53) 2022/11/05(Sat) 6:53:05

【人】 隻影 ヴェレス

 

 [少年が庭園の小路を抜けて振り返ると、
  鉄門の向こうでメイドが扉を締めるのが見えた。

  その直後、僅かな赤い光が辺りに散った様な────
  目の錯覚だろうと気にも留めない程度の変化を経て、
  この屋敷は夜を越すための砦へと変わるのだ。

  そう、その光こそ。]
 
(54) 2022/11/05(Sat) 6:53:21

【人】 隻影 ヴェレス



 ────閑話・アスター家現当主の今

 [キュラステル中央部、地下に膨大な書架を抱き
  ありとあらゆる学問の研究成果を記録し続ける
  至高の独立機関、『学星院』。

  最高学会ではとある計画の為、
 
島外より贈られた貴重な品
>>41を元に
  呪い避けの結界の開発が長らく進められていた。

  そして期日である今日、
  アスター家現当主ブランドンが船着場に現れる。
  海風を凌ぐ分厚いコートとハットを身に付けた姿は
  外の世界における裏組織を彷彿とさせる。]


 
(55) 2022/11/05(Sat) 6:53:41

【人】 隻影 ヴェレス



 [ブランドン及び学星院上層部と盗賊団を繋ぐものは
  有り体に言えば────
『利害の一致』


  次から次へと発明品を生み出しては蒐集品に加えられる
  彼等にとってたった一つの宝など些事でしかなく。

  命が放つ『欲望』から成るエネルギー。
  魔力によって収集したそれをより効率よく実用化する為の
  実験がこの日、行われようとしていた。

  数人の助手を連れたブランドンは、
  記録にある首魁>>38の姿を瞳に入れると
  朝の喧騒に紛れて目配せだけを送る。

  協力者がどれだけ居るかまでは把握していないが、
  “学星院の主要な建築には近付くな”という意味合いだ。]


 
(56) 2022/11/05(Sat) 6:53:56

【人】 隻影 ヴェレス




 「……さてお前達、今日は我々にとっての躍進の日だ。
  結界装置の設置箇所を事細かに把握しておくように。
  有事の際にはここが唯一の脱出口になるのだからな。」


 [指導者に連なる学者達のグループ。
  彼等全員の腕には赤い布────
  既に実用化された模造品が結ばれている。

  同時に、主要人物らの自宅や別荘など
  そこに住まう家族や人的資源に危害を及ばさぬよう
  所有物件もまた、結界により保護される。

  此度の事件の裏には
  協力者にして傍観者、そして観測者足り得る
  巨悪の存在がある事は確実だ。*]


 
(57) 2022/11/05(Sat) 6:54:14

【人】 隻影 ヴェレス

 


 ──── 正午:『慈厳寺』

 [多宗教の入り交じる特異点でありながら、
  この島に彼等の神は御座無く。

  それ故にこそ、数多の神格を肯定も否定もしない。
  敢えて敷居を踏む様な真似もしないのだ。]

        そしてもし、我等の神と同等に
        慈悲深く聡明な神が在るのなら…………


 
(58) 2022/11/05(Sat) 7:39:28

【人】 隻影 ヴェレス

 

 [雨が降った訳でもなかったが、
  境内の木々は不思議と露に濡れ煌めいていた。
  この辺りでは珍しい植生の間を擦り抜けて
  少年は本堂の方向へと向かう。

  彼にとって、死者の魂を鎮めるのがどの神かなど
  最早関係がなかった。
  少なくとも、好奇の視線と根も葉もない噂が降り注いだ
  あの聖堂の管理下では安らかに眠れないだろう、と
  改めて祈りを得る為に此処を訪れたのだった。


  もしその寺院の住職に取り合って貰えたのなら
  今日までの事情を惜しまず打ち明けることだろう。
  作法なんて分からないから、差し入れの袋には
  何となしに名店のバームクーヘンが入っている……]

 
(59) 2022/11/05(Sat) 7:39:49

【人】 隻影 ヴェレス

 

 [学者としての好奇心で調べた限りでは、
  『仏』とその信徒以上に深い慈悲を懐く存在を
  如何なる宗教にも見出す事が出来なかった。

  少年が語ったのは、此度亡くした母が
  元は遠く、宗教も異なる土地の生まれだったこと。
  母が懐かしむ様な文化的特色はこの島に存在しないこと。

  そして即ち、母子共に自らの神から遠ざけられ
  この島以外の世を知らずに生きていたという事を
  細々とした語り口で明かすのだろう。

  今際の言葉すら耳には届かなかった怠惰の罪を、
  赦されたい想いが強かったのかも知れないが。]

 [腕に巻かれたままであるその呪布が、
  この島の摂理に対する裏切りの証であるとは
  知る由もなく────……**]


 
(60) 2022/11/05(Sat) 7:41:04
隻影 ヴェレスは、メモを貼った。
(a13) 2022/11/05(Sat) 7:46:13

【人】 住職 チグサ

── 回想:とある日 ──

[ありがたいことに、両親からは丈夫な体をいただきました。
 おかげさまで大きな持病も無く過ごしてはまいりましたが、さすがにこの年になれば、体のあちこちが悪くなります。
 この不調もまた、私と共に在る体が、長い年月を過ごした証です。
 調子を診ていただくために、定期的にこの島唯一の病院>>25にもお世話になっていました。
 お医者様からの診察は、大概の場合は、「年ですね」の一言ですが。]
(61) 2022/11/05(Sat) 13:23:37

【人】 住職 チグサ

[しかし以前、死の間際を救っていただいたことがあります。
 毎年、冬が近づくと、注射を打ちます。流行り病を抑えるために、無毒化した病をあえて迎え入れ、耐性をつけるのです。
 私はその毒との相性が悪かった。お寺に戻ってからも何とはなしに体調が悪く、しかし副作用のうちだろうと自室に戻って休んでいました。
 それがいけなかったのでしょう。誰にも知られぬままにどんどん呼吸が苦しくなっていき、意識が遠のいていきました。
 非常にごくまれなケースではありますが、この注射を起因として、急激に血の巡りが悪くなり、命を落とすことがあるそうです。
 たまたまお世話係の小僧が、常ならぬ様子の私を見つけたので、病院に舞い戻っては来れましたが、誰も通りがからなかったならば、あの時に私の命は尽きていたでしょう。]
(62) 2022/11/05(Sat) 13:24:13

【人】 住職 チグサ

[死にかけた日のことを、今でも覚えています。
 小僧は大声で呼びかけていたそうですが、私にはその声は聞こえませんでした。
 呼吸ができず、目の前は暗くなって、何も聞こえず。
 ただ、体の芯に冷たい杭を打たれたような寒気が、私の心をかき乱していました。
 暗闇に向かって、声ならぬ声で叫びながら、必死にもがいているつもりでした。
 実際のところ、手足は全く動いていなかったことでしょう。
 やがてそれにも疲れ果てた頃、強烈な眠気が訪れました。

 その頃には私の体は病院に運び込まれ、周りには関係者が集まり、口々に声をかけてきました。
 聴力が戻ったとはいえ、耳に聞こえる言葉は水中にいるかのように不明瞭で、ただうるさくて仕方がありませんでした。
 時折眼に当てられる強い光もまた、眩しくて不快でした。]
(63) 2022/11/05(Sat) 13:25:34

【人】 住職 チグサ

[皆様今まで本当にありがとうございました。
 申し訳ありませんが、どうぞお静かになさってください。
 今は眠らせてください。

 乾いた唇を開けば、言葉の代わりにヒュウヒュウと肺が鳴りました。
 急速に冷えていく体とは裏腹に、心には感謝だけが宿っていました。
 ただ、眠れないのが辛くて仕方がありませんでした。

 そのようにまどろんでは起こされ、起こされてはまどろむ時間が永遠に続くかと思われたころ、ついに私は自我の無い、正体を無くした深い眠りへと転がり落ちました。]
(64) 2022/11/05(Sat) 13:25:58

【人】 住職 チグサ

[次に目覚めた時、私の体には様々な管が繋がれていました。
 この管の一本一本が私の命を繋ぎとめていたのでしょう。

 私は回診に来たお医者様を微睡のままに見上げ、まだ不自由な体を曲げて合掌しました。
 この心を表すには、言葉ではあまりにも不完全です。だから言葉ではなく仕草に、感謝を込めました。
 私を、体の苦しみから解放してくださったお医者様に。

 私はそれまで、僧侶と言う立場でありながら、死をどこか他人事のように捉えていました。
 自らに死が迫ってやっと、命の有限性を突き付けられたような気がいたします。
 もう若くはありません。その限られた時間の中で、どのように生きるべきか。

 お医者様が体を癒すように、僧侶として心の医師でありたい。
 このような、貴重な体験をさせていただいたのだから。]
(65) 2022/11/05(Sat) 13:27:16

【人】 住職 チグサ

── 現在・慈厳寺への来訪者 ──

[病院を訪れる方は、体に不調を抱え、病んでおられます。
 そして病院が体の病を治す場所であるならば、寺とは心の病を癒す場所です。
 だから、ここ慈厳寺を訪れる方は、その多くが心に迷いや苦しみを抱え、もがいておられているのです>>59

 慈厳寺はお墓のお世話もさせていただきますが、それはお勤めの一部に過ぎません。
 もともとはより良く生きられるよう、様々な智慧を広めるための場所です。
 たとえお檀家さんではなくとも、訪れる方の宗教にかかわらず、門戸を開いております。
 もっとも、食堂や美術館よりは敷居が高く感ずる方もありましょうが──]

 ようこそお越しくださいました。

[修行僧によって客間にお通しされた客人は、少年と言っていいほどに年若いお方でした。>>59
 もっとも、様々な種族が共存するここキュラステルにおいては、肌艶で実年齢を測るのが難しくはありますが。
 その腕には緋色の呪布が巻かれていましたが、僧は特に反応を示しませんでした。
私もまた。
(66) 2022/11/05(Sat) 13:28:29

【人】 住職 チグサ

[案内人の視線は、むしろ差し入れにじっと注がれています。

 私はありがたく頂戴すると、客人の分と二つ用意するように言いつけ、あとは僧の皆さんでどうぞとお伝えしました。
 余談ではありますが、お寺と言う雰囲気がそうさせるのでしょうか、手土産にはよく東国の伝統菓子をいただきます。
 ですが案外、僧侶は洋菓子に沸き立ちます。
 世俗から離れ、刺激に飢えた僧侶たちにとって、街の雰囲気を感じられる洋菓子は魅力的なもの。名店の『ばうむくうへん』に僧侶たちは大いに喜んだことでしょう。]

 そうでしたか。お母さまを……
 ……心より、お悔やみを申し上げます。

[さて、少年は訥々と己が心の病状について話してくださいました。>>60
 私は彼のお話で、先刻聞いた鐘の音が、彼の母の死を表していたことを知りました。
 彼の家の文化に則って弔われたはずなのに、わざわざここに足を運ばれている。きっと思うところがあったのでしょう。]
(67) 2022/11/05(Sat) 13:29:22

【人】 住職 チグサ


 …………お母さまは、遠い遠いお国から、いらしたのですね。

[お話を伺う限り、お母さまの信仰は、慈厳寺とも違うものでした。
 お母さまが信じた神は、ここにもおられない。おそらく、この島のどこにも。]

 残念ながら、あなたがお母さまの神を求めて私の元を訪れたというのならば、願いを叶えることはできません。

[しかし、彼がそのような目的で訪れたとは、私には思えませんでした。
 ただ、心が乱れ、苦しみに溺れかけているからこそ、何かしらの救いを求めてこのお寺を訪れてくださったように感じられました。]

 ですが、信仰とは心を育む食事のようなもの。
 私がお出しできる料理が口に合うかは分かりませんが、ひとまずの飢えをしのぐ助けにはなりましょう。

[それから私はお経を詠みました。
 亡くなられたお母さまのためではなく、彼自身のために。
 
あるいは、私自身のために。
(68) 2022/11/05(Sat) 13:29:58

【人】 住職 チグサ

がしゃくしょぞうしょあくごう

我昔所造諸悪業

私が過去に行った過ちは


かいゆうむしとんじんち

皆由無始貪瞋痴

全て、始めも分からないほど大昔から、
貪りの心、怒りの炎、愚かなる考え方によります。


じゅうしんくいししょしょう

従身口意之所生

それらは体、口、心の行いから生まれたものです。



いっさいがこんかいさんげ

一切我今皆懺悔

全てを、私は今、御仏に照らされて悔い改めます。


[唱えた経文は、死者を弔うものではありません。
 生きている者が、自らの罪科を告白して心を軽くする時に唱えるものです。
 もしも、神仏の力を借りて、彼が心の奥深くに抱える後悔を吐きだせるのであれば──懺悔をしたいのであれば。
 言葉を無理に声に出さなくてもいい。胸の内で唱え、見つめることが力となる。
 僧侶として、少しでもその手助けができれば良いのですが。]*
(69) 2022/11/05(Sat) 13:32:47
住職 チグサは、メモを貼った。
(a14) 2022/11/05(Sat) 13:37:12

【人】 隻影 ヴェレス

 

 ──── 慈厳寺;異神の息吹を聴く刻

 [切り分けたバームクーヘンの隣、湯気立つ焙じ茶。
  自然と調和した空間ながら、気の抜けない様な荘厳さが
  漂うのは、この寺が大きくなってしまったからなのか。

  少年は周囲の立ち振る舞いに合わせて靴を脱ぎ、
  正座して住職の言葉に耳を傾けた。]
 
(70) 2022/11/05(Sat) 21:11:06

【人】 隻影 ヴェレス



  敢えて語らなかった事も多くなる。
  
秘匿されし真実
は既に張り巡らされている。
  されど世俗のくだらない噂など、
  修行者達の耳には届かないのだろう。

  信仰の前には、身分も人種も関係なく。
  金で罪を濯ぐ事もない。

  住職の唱える言語を私は知らない。
  だが、図書館から拾い、継ぎ合わせた知識から
  その意味を推測する事は出来る。

  
故に、私は地獄に堕ちるだろうと────


 
(71) 2022/11/05(Sat) 21:11:25

【人】 隻影 ヴェレス

 

 [目を閉じた、少年の表情が微かに曇った。
  それは単なる懺悔の過程と受け取られても不思議でない。

  自らの行いと気持ちに整理が付くことは暫くなさそうだが
  それでも渦巻いていた心は少し鎮まった。
 
心の底から死を悼む他者の存在を必要としていた
から。]


   ……母もまた、島で過ごす長い歳月の中で
   いつの間にか自らの神に祈る事を止めました。
           
(────其の理由を私は悟っている。)

   私が幼い頃は毎日の様に教義を話して聞かせたのに。


    母がそれで天に召されず果てたのならば、
    それはこの島がそうさせた事なのでしょう。
         …………この、國そのものが。


 [幾つもの思惑が混じり合う、黄昏の惨劇。
  その幕開けは刻々と近付いてきている。
            ・・・・・・・・
  そして────少年も
それを知っている
。]

   
(72) 2022/11/05(Sat) 21:11:46

【人】 隻影 ヴェレス



  仏教徒の精神が真の自己研鑽である以外に
  心が休まる理由はもう一つあった。

  此処の人々は容易く蠱惑に堕ちはしない。
  たとえば其れが、希少な魔人の血を引く存在の
  無意識下での魅了性だったとしても。

  ……だから、この場所では人間で居られる。
  過ちから何も学びはしない、愚かな人間の一角に
  漸く正しく加わった心地がする。


  ────嗚呼、だけど。浸ってもいられない。


 
(73) 2022/11/05(Sat) 21:12:33

【人】 隻影 ヴェレス



  優渥な方に祈って頂いて、母も浮かばれます。
  世間は、自覚のない悪意に満ちていますから。

     ……本当に、市街とは掛け離れた場所ですね。


 [あの日あの時、屋敷を飛び出しでもしていたら
  全ては良い方向に動いていた筈だと思う程度には。
  少年は視線を落とし、小さな膝を擦り合わせる。

  ────それから、不慣れな手つきで掌を合わせた。*]


 
(74) 2022/11/05(Sat) 21:13:00