人狼物語 三日月国


153 『Override Syndrome』

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【人】 内科医 カナ



  [けれど抱いたのは医者の誇りとは程遠い、

       醜いとしかいいようのない感情だった。]*



(47) 2022/06/07(Tue) 0:50:35

【人】 内科医 カナ


 ───始まり:大学時代の記憶───


  [無事に医学部への進学を決めた後のこと。

   どの大学だろうと医学部は優秀さの象徴。
   けれどその中でも更に優秀であろうとする人と
   進学をゴールだと思ってしまう人に別れるものだ。

   それは当然学生生活にも影響が出てくるもので、
   進学してもなお切磋琢磨し続ける学生を尻目に
   私は良くも悪くもない、普通の成績を収め続けた。]


(48) 2022/06/07(Tue) 1:07:46

【人】 内科医 カナ



  [そんな私とは正反対にも思える彼。
   私よりもずっと優秀なはずなのに


   私よりも何かに追い詰められているような
   危うさと激しさを秘めたようなその姿。



            どうしてか分からないけれど
            なぜだか強い興味を惹かれて。]


(49) 2022/06/07(Tue) 1:09:35

【人】 内科医 カナ




      はじめまして。隣...いい?
   

  
(50) 2022/06/07(Tue) 1:12:09

【人】 内科医 カナ



  [それは入ったサークルの歓迎会でのことか。
   それとも同じ講義で一緒になったときか。
   きっかけは些細なもので。

   尋ねた後、鮮やかに一礼すると
   隣の席へと座ろうとする。


              それが、彼との出会い。]*

   
(51) 2022/06/07(Tue) 1:13:15

【人】 医者 サキ


[ 『東雲医院』
  良くも新しいとは言えないが、
  親父の代からの地域密着型。
  小児科、内科、皮膚科、
  使われどころの集まった場所だ。

  今在籍してる医者は院長の親父と、俺と、妹。
  それと雇ってる数年前から
少々頭皮が見えがち…

  叔父さんが1人の4人だけ。

  っても叔父さんは非常勤だし
  実質3人みたいなもので。
  典型的な家族経営…と言っていい。 ]

 
(52) 2022/06/08(Wed) 1:35:48

【人】 医者 サキ


[ 当初は共に勤めていた院長の妻──
  母が15年前に表から姿を消したこと

  当時跡継ぎと期待されていた兄だけが
  この病院に勤めていないこと

  知る人は少なくないだろう事実だが
  それらは触れてはならない話題として
  暗黙の了解的に仕舞われている。 ]

 
(53) 2022/06/08(Wed) 1:35:53

【人】 医者 サキ

 
[ 密着型ゆえにその日によって
  担当医が変わるなんてことはなく、
  患者さんは初診を受け持ったのが担当医になる。

  …彼女らと出会ったのは、偶然か、
必然
か。 ]

 
(54) 2022/06/08(Wed) 1:35:57

【人】 医者 サキ

 
[ 研修医の期間を終えて、ここに勤め始めたのは6年前。
  常勤で働いていた雇われの人と
  入れ替わるように滑り込んだ。

  彼女らは双子の姉妹。
  初診からか、入れ替わりの引き継ぎでか、
  俺の思う初対面はその日だったけれど。 ]


   ────よろしくね、
   アユミちゃん、マユミちゃん。


[ 医者なんてよろしくすることがない方がいいけど、
  そこは社交ってことで。


    …医者でない学生の頃の俺と会ったことはあったかな?

          昔はよく手伝い件見習いの見習いくらいで
          近所の爺ちゃん婆ちゃんに挨拶がてら
          病院に顔を出すこともあったから
          小さい時からなら、見ていたかもしれないね。


  顔はよく似ているけれど、
  性格は真反対そうな2人だから
  見分けるのはさして苦でもなかったっけ。 ]
 
(55) 2022/06/08(Wed) 1:36:00

【人】 医者 サキ


[ ───2人の定期的な症状は片頭痛。

  他に病気はしないでいてくれるに
  越したことはないけど、
  あれば都度見ていた。

  特筆するとすれば、
  姉──アユミの方が症状が重かったことか。


  頻度が違えば、来る回数も変わる

  彼女らが大学に進学する歳を過ぎて、
  元々頻度の多くなかったマユミが
  あまり来なくなったことは環境の変化だろうと、
  それほど気にしてはいなかった。 ]

 
(56) 2022/06/08(Wed) 1:36:04

【人】 医者 サキ



   …変わりないみたいだね、わかった
   いつもの量出しておくから、
   用法と用量はきちんと守ってね。


   最近はどう、ユミちゃん
   二人とも元気にしてる?


[ 呼びやすい愛称が欲しいとか、
  些細なことから始めた名を呼んで
  1人定期的に訪れるようになった
  アユミに近況を訊ねていたのも今は昔。


  半年程前からだったか───…
  状況の中で双子の人物だけが
  そっくりと、入れ替わった >>43

     まるで初めからそうだったかのように。 ]

 
(57) 2022/06/08(Wed) 1:36:08

【人】 医者 サキ


[ 時の流れの間に、姉ほどに酷くなった頭痛と
  ただ事ではなさそうな火傷を負って現れたマユミいもうと
  
  違和感を覚えるなとまでは無理だな、
  でも確かに追求する程じゃなかった。
  俺の前に現れたのは正真正銘、船越真結実だったから。


  ……そう、この時、俺は間違えた
  間違えたが、正しかったのか。
  船越さんです、と渡されたカルテの名を
  はっきりと確認しないまま声をかけたんだ。 ]
 
(58) 2022/06/08(Wed) 1:36:12

【人】 医者 サキ



    ───ユミちゃん?

    …久しぶりだね。


[ アユじゃ魚っぽいだろ、なんて理由から
  ユミと呼んでいたのはアユミの方だけで。

  略称といえば頭2文字と、
  マユミは例に漏れることなく
  マユと呼んでいた。    

  間違えたのは呼び方だ。


  
マユミにとって
は前とは違う呼び方のはずだけど──
  …さて、どんな反応だったか。 ]

 
(59) 2022/06/08(Wed) 1:36:15

【人】 医者 サキ

 
[ もし人を
"テセウスの船"
と喩えるのなら

  義手、義足、義眼、人工臓器…
  ありとあらゆる人工物で身体を作り替えようとしても、
  唯一取り替えることの出来ない物が脳。

  それは考えと人格をつくり
  人をその人たらしめるもの。

  脳が変われば 人は変わる。
  ならば作り替えられた人はもはやその人ではない。
  …と、俺は思う。

  
"テセウスの船と名付けられた船"
ではあっても
  元の
"テセウスの船"
にはなれないのだろう。

  …けれど、パラドックスに正解はない。
  様々な外的要因さえ揃ってしまえば、
  
名付けられただけの船

  
テセウスの船
と足り得るのかもしれない。 ]

 
(60) 2022/06/08(Wed) 1:36:20

【人】 医者 サキ

 
[ 時は流れて、今。 ]


    ああ、いらっしゃい。

    頭痛の頻度と程度はどう?
    あと火傷も軽く見ようか。


[ いつも通り、物腰柔らかな笑みを向けて
  俺は船越真結実に声をかける。
  医者がすべきは真相究明ではなく、
  目の前の病に取り組むことだと
  理解っているから。 ]**

 
(61) 2022/06/08(Wed) 1:36:23
医者 サキは、メモを貼った。
(a4) 2022/06/08(Wed) 1:49:37

【人】 会社員 ツグアキ


[ 日本の平均水準をずっと下回る家庭で生まれた。

 当たり前に与えられるはずの悉くを
 手に出来ず育った自覚はあるけれど
 趣味や習い事に割く余裕も得られなかった
 子供時代、出来ることといえば勉強だけだったから
 それがひいては下層から這い上がるための
 努力と術に繋がったらしい。

 幸いにも悪くなかった地頭のためか、
 砂山から砂金を掴み取るように掠め取った。
 日の当たるところへのチケットは、医学部合格。 ]
 
(62) 2022/06/08(Wed) 4:55:54

【人】 会社員 ツグアキ



[ その時点で
  俺は、人生において

  『本物』の『幸福』を、手にしたはずだった。

  ─── だのに嗚呼、剥がれた爪の痕を隠した手で
  握った『幸福』は、かくも脆く。 


 
(63) 2022/06/08(Wed) 4:57:19

【人】 会社員 ツグアキ


[ だから今日も俺は『エデン』を立ち上げる。
  支給されたイヤホンで外音を遮断すれば
  不幸など知らない誰かが書き込んだ、
  きらきら輝く幸福があっという間に脳を染める。

  義務的に与えられる『幸福』は
  確かに己を一時の安寧で包み、
  人肌に温い夢に揺蕩い、救われる。

  生きている。


  ああこれは、誰かの恋が実った日のことかな
  いいな、きらきら、きらきら、脳が眩しい。 ]
 
(64) 2022/06/08(Wed) 5:01:00

【人】 会社員 ツグアキ



   うわぁぁ、びっ……くりした!
   えっ、なに、あ、 はい、


[ 突然降ってきた声が
  自分に向けられたものだと
  ワンテンポ遅れて気付き、背がびくりと跳ねた。

  見覚えのある女性。……綺麗な人だ。
  艶やかな髪、健康的な肌
  品の良さそうな衣服。>>50

  ─── 幸福が共にあることを
  知らずに知っている側の人間の匂い。

  気づかれないようにイヤホンをそっと外す。 ]
 
(65) 2022/06/08(Wed) 5:02:27

【人】 会社員 ツグアキ



   ……ええと、 失礼しました。
   どうぞ、隣はご自由に。
   俺は佐々岡です、あなたは、その───


[ 動揺を削いで、口角をゆるりと上げた。 
  手の中で転がるイヤホンを握り隠す。
  渇望してやまない幸せは
  持っているフリをして。 ]
 
(66) 2022/06/08(Wed) 5:06:30

【人】 会社員 ツグアキ


[ 何不自由なく育ってきた同期の面々が
  さくさくと実績を積み、見出され、
  苦労無く敷かれたレールの上を
  スキップで駆け抜けていくのを
  目の当たりにする日々だったよ。

  いくら努力を重ねても基盤のない己が
  光を浴びることはほぼ無いのだと言う
  現実を知った頃。 ]

 
(67) 2022/06/08(Wed) 5:11:12

【人】 会社員 ツグアキ



  神に問う。信頼は罪なりや。
  果たして、無垢の信頼心は、罪の源泉なりや。 
  神に問う。無抵抗は罪なりや?
  いまは自分には、幸福も不幸もありません。

  ただ、一さいは過ぎて行きます。

  
 
(68) 2022/06/08(Wed) 5:12:20

【人】 会社員 ツグアキ


[ 血を吐き泥水を啜るようにして
  仕上げた論文が、
  理事長の一人息子のものとして学会に発表され

  華々しい評価を得た場面を目にする。

  自分の口座に記された見たこともない桁の
  入金記録と引き換えに
  己の医師としての未来が

  永久に閉ざされたことを自覚するのは、

  あの頃のこと、だったね。 ]**
 
 
(69) 2022/06/08(Wed) 5:15:20

【人】 医者 サキ

 
[ 東雲は典型的な医の一族。
  祖父か、いや曾祖父だったか
  とかく医者を始めた誰かが積み上げた資産を、
  子孫世代が使った分以上に重ね

  先祖代々───
  2200年に至るこの時まで
  不自由らしき不自由はしたことが無かった。
  
  "そうなるべき"
だと生まれ出た時より
  定められている幸せを抱えていることさえ除けば。 ]

 
(70) 2022/06/08(Wed) 13:14:46

【人】 医者 サキ



             『 医者になりなさい 』



[ 東雲に生まれた子は皆、そう言われて育つ。

  現代に生きる俺たち3人も例外ではなく、
  幼い頃より医者になるのが当たり前だと思っていた。

  教養は知識のみにあらず、
  然し得る方法は限られる。


  金という対価で用意された階段を
  一段一段と上って
  医学部合格の門をくぐる

  それが定められた幸せだ。
  出来ないはずがなかった。 ]

 
(71) 2022/06/08(Wed) 13:14:54

【人】 医者 サキ

 
[ 全てを壊したのは、 兄だ。 ]

 
(72) 2022/06/08(Wed) 13:14:59

【人】 医者 サキ


[ 兄は調子に乗っていた。
  跡継ぎだと周りから囃し立てられて、
  自分は出来る人間なのだと勘違いしていた。

  母はずっとそんな兄に忠告をしていたが
  まるで聞く耳も持たず。

  怠惰に身を落とした
  人間を食い破らんとする者は
  溢れんばかりにいるというのに。

  目に見えているだけで手が届くと勘違いして
  上の大学に手を伸ばしたんだ、あの愚兄は。 ]

 
(73) 2022/06/08(Wed) 13:16:05

【人】 医者 サキ



     
 「 
不合格
 」



[ 奴の眼前に叩きつけられた始めての挫折。
  18に至るまで用意された階段の先は
  続いていると信じて疑っていなかったのか。

  当たり前にくぐるはずだった門は閉じられて、
  手に残ったのは薄っぺらい三文字の言葉だけ。

  兄の落ち込みようと言ったらそれは酷く、
  沈みきって泣いていたと思えば、
  突然癇癪を起こして物や人に当たり散らし

  母がもっと強く言っていればと一人泣いていて

  ああ、地獄ってこんな心地なのかな?
  俺の高校合格なんて何の薬にもならず、
  暫くは重苦しい空気のまま。


  結局、兄は父に諭され
  もう1年、門が開く時を待つことになって。 ]

 
(74) 2022/06/08(Wed) 13:16:09

【人】 医者 サキ


[ ────医学部浪人。

            本当の地獄がこれからだなんて、
            誰も思ってはいなかった。 ]**

 
(75) 2022/06/08(Wed) 13:16:14

【人】 内科医 カナ



  [何が幸せかは自分で決める。
   そんな当たり前のことが見落とされた
   欠落だらけの楽園があるこの世界でも
   世間的に見れば医学部はW成功者Wだ。>>62

   だから想像出来るはずもない。
   W成功者Wが紛い物に縋り付くなんて。>>64

   想像出来るはずもない。
   そのイヤホンの先が、不幸の象徴だなんて。



(76) 2022/06/08(Wed) 16:14:46