【人】 魔術師 ラヴァンドラ―――― 思い詰めることがあれば、と。 彼がそう言った時、女は月光の色をした瞳を瞬かせて それから何も言わずに咲ってみせた。 恩を感じる必要なんて、どこにもないというのに。 …… そうやって向けられる優しさこそが既に 女にとっての 対価 ≠ノ等しいのだから。 「 ん、お願い? 珍しいね、――いいよ。 出来る範囲なら、なんでも叶えてあげる 」 魔力はもっと効率よく渡す方法もあるけれど、 彼相手にそんな方法を取るのは気が引ける。 冷えた身体を暖めるように魔力を明け渡しながら 女は首を傾げ、肯定を返した。>>117 (129) 2021/12/12(Sun) 19:06:38 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ―― 彼は自分になにを望むのだろう。 例の酔っ払いを探してほしいというならば可能だろうし、 魔術の行使を願うなら引き受けよう。 そんな気持ちで彼の言葉を待っていれば、 「 …… ………… 私の作ったご飯? それは、もちろん 良いけど。 ――――そんなことで、いいの? 」 声音には困惑の色が乗り、 感情と連鎖して揺れた耳が、被った儘のローブを動かす。 そのままフードがするりと落ちて ぴるぴると震える耳が空気に触れた。 (130) 2021/12/12(Sun) 19:06:51 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 簡単なのでいいなら、 今作れるけど …… 」 人魚の生態をまるで知らなかった最初の頃なんかは、 彼が食べられないものを作ってしまうこともあったが。 ならば果物や魚なら、と試行錯誤した名残で 今も家には肉よりもそれらが常に置かれてある。 とはいえ今は一人で住んでいる以上、 食事の手を抜いてしまうのは致し方ないことで。 フルーツを使ったオムレットだとか、 魚のムニエルくらいしか作れそうにないけれど。 (131) 2021/12/12(Sun) 19:07:03 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ彼がそれでいいと頷くのなら、女はこくんと頷いて 魔力がある程度まで回復したのを確認した後、 立ち上がってキッチンの方へ向かうだろう。 今ではなくもう少し後が、ということならば 彼が住まう以上、危ない薬品だけは片付けたいと どのみち一旦は隣を離れるのだけれど。 ―――― 室内には貴重な魔術書も沢山あるのだから まさか古びたノートに興味を抱いているとは知らず。>>116 故に、彼が手に取って読もうと思えば容易だろう。 (132) 2021/12/12(Sun) 19:07:11 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラどちらにせよ女は、久方振りの同居人の気配に 頬を緩めながら 作業の為に手を動かす。 兎族とはいえ兎のように、 寂しいと死んでしまうなんてことはないけれど ―― …… 事態が落ち着くまでの一時とはいえ 彼が戻って来てくれて嬉しい、と喜ぶのは …不謹慎だと怒られてしまうのかもしれない。* (133) 2021/12/12(Sun) 19:08:23 |
魔術師 ラヴァンドラは、メモを貼った。 (a25) 2021/12/12(Sun) 19:09:46 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラまさか性格の捻くれた者が多数を占める魔術師である女に 神聖なものを連想しているとは、夢にも思わない。>>146 ―― それは彼の性格故なのか 或いは陸の世界を知らぬが故のものなのか、 …… 「 …… だ、だめじゃない けど…。 えっ、……と…… ありがと、ぅ……? 」 >>147 彼の優しさは、今まで共に過ごした時間分だけで 痛切に染み渡るくらいには識っているから。 率直な褒め言葉を上手く揶揄いで流せなくて 頬を薄桃に染め、咄嗟に俯いた。 (154) 2021/12/12(Sun) 21:19:58 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ黙された耳や尻尾への思いは、当然ながら察せないが。 確かに感情と直に結びついているだけに 料理中ぱたぱた揺れたり、尻尾も毛が逆立ったり、 そんな光景をお見せしていたのだろうけれども。 「 私へのお願いで、魔術じゃ無くて 料理を頼んだの … 貴方が初めてだよ。 じゃあ、一緒に食べよっか。 すこしだけここで待っててね。 」 微笑みながらそう紡いで、 女の身体は彼から離れ キッチンへと消えていく。 (155) 2021/12/12(Sun) 21:20:05 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ朝から不運に見舞われたのだから、 林檎と苺を使ったオムレットの方にしてあげよう。 甘いものは疲れた心を癒してくれるとよく言うし、 彼もパイ屋のアップルパイなんかは好物だったはずだ。 魔術に関して魔術師に敵う者がいないように、 料理については料理の専門家に勝てるわけもないが。 ―――― なんだか少し、心の中で張り合ってしまうのは 誰かの為に何かを作るのが久しぶりだからで。 まさかその間に、来客の少なさ故油断して放置していた あのノートを彼が読んでいる、などとは知らず。>>150 女は丸い尻尾をご機嫌に揺らして、 甘い香りが漂うオムレットを皿へ移した。 (156) 2021/12/12(Sun) 21:20:10 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 ねえ、テレベルム 飲み物なにが、―――― …… 」 オムレットの乗った皿を持ち、部屋に戻りながら 魔術師は呑気に飲み物の好みを尋ねようとして。 >>151 ノートを開き、何事かを思案する彼の姿を見捉え 続くはずだった言葉を宙へ溶かした。 「 ………… それ仕舞うの、忘れてたな。 」 全容を理解出来ている、とは思わないけれど 全てを読み解けないようには、書いていない。 (157) 2021/12/12(Sun) 21:20:13 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ下手に触れれば余計な墓穴を掘りかねない気がして、 女は静かに息を零した。 机の上へ皿を置き、椅子にゆっくりと腰掛ける。 「 ――― … 安心してよ。 それ、人魚のなにかが必要な魔術でも無いし…。 ………… …… 、 」 そこまでを揶揄うように紡いで、結局言葉が消える。 彼が考えていることは 今更そんな心配事などではないことくらい、 流石に理解っているつもりだった。 耳がぺたりと垂れて、女の視線も迷子のように彷徨い ―― それから視線を上げ、彼の顔を見詰める。* (158) 2021/12/12(Sun) 21:21:33 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ紅茶やココアを淹れるのは、もう少し先になりそうだ。 ―――― ノートを手に思案顔を浮かべていた彼が、 殆ど反射のように謝罪を紡いだのを聞けば>>161 女はふるふると頭を横へ動かした。 元はと言えば、机などに放置していた自分が悪い。 彼が信頼していると言ってくれるのなら 安堵したように肩から僅か力を抜いた。>>162 それから続けられた言葉には、眉を下げ。 「 ………… それは、だめ。 私がほしいって言うことがあっても……。 」 ぽつりとそう返そう。 (195) 2021/12/12(Sun) 22:52:27 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ人魚の血肉や涙は、人を一夜で王に変えかねない。 そんなものに興味が無い相手だろうと 易々と渡すなんて 死期を早めるようなものだ。 人も人外も欲深いと、身を持って今日識っただろうに。 「 ………… なぁに 」 名前を呼ばれれば、びく、と身体を揺らし 女のことを見つめ返す海色へ、視線を交わらせる。 椅子ごと女に近寄った彼が腕を伸ばせば 叱られる直前の子どものようにぎゅうと目を閉じて。 (196) 2021/12/12(Sun) 22:52:36 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ馬鹿なことをするなと言われるのだろうか。 それとも魔術師である女を恐れて消えるだろうか。 ―――― 最悪の想定を覚悟した女に訪ったのは、 ふわりと頭を抱き込まれる感触だった。 「 ―――― … 、? 」 月の色を閉じ込めたような瞳を見開いて、 何も言えないまま、彼の問いが耳に入る。>>164 耳へ触れないようにする気遣いひとつが痛くて、 …… 女はローブに隠れた掌を握り締めた。 (197) 2021/12/12(Sun) 22:52:42 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 ……………… 人間、なら …… 」 ようやく紡いだ声は、寒くもないのに震えていた。 誰にも踏み入らせなかった境界線。 言ってしまえば、言わなかった頃には帰れないのに 女はそれでも、言葉を発してしまったのだ。 「 こんな耳だからって、独りになることも 魔力が多い兎は面倒だって言われることも、 …… なんにもないと思ったの … 」 彼だってきっと、見たことくらいはあるだろう。 兎族は殆どが真っ直ぐな耳で、 女のように垂れた耳の持ち主はいないことも。 (198) 2021/12/12(Sun) 22:52:47 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ彼への問いに返したものはどれもが夢見事で、 ―――― 必ず約束されるとは限らないことばかり。 この魔力と魔術で、 かつて自分を突き飛ばした子らを殺すことなんて 赤子の手をひねるよりも簡単だった。 夢を夢見るより、 全てを壊してしまえる力があった。 …… 街で見かけた幸せそうな子達のように 笑って生きていきたかった。 (199) 2021/12/12(Sun) 22:53:08 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 ………… この魔術、大嘘なの 私でもきっと使えない。 人間を作るところまでは可能でも きっと、魂を移すところで失敗して …… そのまま死んじゃうから 」 そう。――だから、私の願いは 最初から叶うはずなんて、無かったのだ。 それで良かった。死んでしまっても。 彼が妹を探すためにこの家を出て行ってしまって以来 …… 私はもう、ひとりぼっちを耐えられなかったから。* (200) 2021/12/12(Sun) 22:53:14 |
魔術師 ラヴァンドラは、メモを貼った。 (a39) 2021/12/12(Sun) 23:56:02 |
魔術師 ラヴァンドラは、メモを貼った。 (a41) 2021/12/13(Mon) 0:00:14 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラきっと女は彼の痛切な覚悟の話を聞いたとしても>>215 それでも、首を縦に振ることなんて永劫に無いのだ。 唯一の肉親を探すため、陸へ上がった人魚の彼に 欲の犠牲になれなんて ―― とてもではないけれど。 例えば拾った人魚が、もっと女に優しくなくて 魔力全てを使ってでも妹を探せ … だとか そんな者であれば、女だって躊躇いはしない。 けれど実際彼はどこまでも女に甘いのだ。 ―――― だからこそ、 …… (258) 2021/12/13(Mon) 11:05:02 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ彼は名前を一度呼ぶだけで、女の言葉を聞いていた。>>217 拙いばかりだっただろう独白めいた願いを、 遮ることも ――――窘めることもせず。 この願いが本当の意味で叶わないことを識っていて、 だから女はあの日、友人の正解を誤魔化した。 「 ………… ばかだって、言ってもいいのに。 」 手向けられる優しさに、女は苦く笑おうとして 結局目を伏せた。>>218 人の欲などないだろう綺麗な世界の生き物に、 女の馬鹿げた空想を知られた苦さが胸中を占めて。 …… 友達がいて、人に求められる力もある。 ―――― けれそれは、きっと唯一では、ない。 (259) 2021/12/13(Mon) 11:05:41 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 ―――――― 、 ………… …… ぇ、 」 無意識に零れ落ちた言葉は、宙に溶けた。>>221 女の耳へ届いた彼の優しさどれもが嬉しくて、 だからこそ手を離してあげようと思っていたのに。 >>224 彼の腕が少しばかり緩めば、 俯いたままだった女も漸く頭を上げた。 綯い交ぜになった感情ゆえに、涙で潤んだ双眸が 彼の曇り一点もないような海色を見つめて。 (260) 2021/12/13(Mon) 11:05:47 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 …… でも、……。 妹のこと探しに、ここまで来たんでしょ … ? 」 その使命と、女の願い。 ―――― 彼にとって釣り合いが取れると思えずに 女は耳をぱたりと揺らした。 探し探されるような肉親もいない自分には、 縁の遠い話だ、と思っていたけれど。 彼はその為に危険を犯し、身を削っていたのではないか。 ―― ここを出て行った理由など識らぬ女は>>165 迷子の子どもめいた仕草と躊躇いで、 男の服を きゅぅ、と握った。 (261) 2021/12/13(Mon) 11:06:00 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラふるりと睫毛が震え、少しだけ目を伏せる。 対価さえあれば願いが叶う場所で ―――― … 欲することが罪ではないのなら、 「 もう、どこにもいかないなら …… テレベルムに、あげる。 だから … ひとりにしないで……。 」 彼の行動や心を縛るつもりなんて欠片もない。 ただ、最後に帰ってくる場所がここであるならば 其れで良いと、女は思ってしまったから。* (262) 2021/12/13(Mon) 11:06:18 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ―――― 夕刻/自宅 ―――― 魔術師の家を知る者は、少数の友人と人魚しかいない。 故にそれ以外の訪問者といえば大抵が、 何らかの企みを抱えた招かれざる客人だ。 「 ………… 誰? 」 窓の外は、空色が陽色に傾き始める頃合い。 ノックの音と、友人のものではない声に>>238 魔術師は雰囲気を尖らせ、扉を開いた。 (270) 2021/12/13(Mon) 11:41:33 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ夕刻ともなれば、人魚の彼は家にいたか。 何処かへ出掛けるというのなら、女は過保護を表に出し ローブに防御魔術を掛けて与えただろうけれど。 そうでないのなら、奥へ下がるように言い含めて。 扉を開ければそこには、 予想とは真逆の、可愛らしい少女が立っていた。 「 ―――― ぁ、れ 貴方確か、パイ屋で会った……? 」 女は思わずといった様子で小首を傾ぎ、 それから少し悩む素振りの後、彼女を招き入れる。 人魚の在り処が漏れたとは考え辛い。 ならば恐らく、目的は女の方だろうから。 (271) 2021/12/13(Mon) 11:41:53 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ少女には背を向けないまま椅子を勧めてみるけれど、 彼女は素直に従ったかどうか ―――― どちらにせよ女は、一見すれば柔らかな笑みを浮かべ。 「 …… それで、どうしたの? 誰かに言われてここに来たのかな。 」 まさか迷子というわけでもないだろう。 入り組んでいる場所ではないし、 賑やかな喧騒を辿れば 祭りの間はすぐ表へ出られる。 目的と ―― 依頼主の正体を探るように 女は問いを投げた。* (272) 2021/12/13(Mon) 11:42:03 |
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