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【人】 鬼の子 千[たった一瞬の出来事で熱は冷え切る。 草地に身体を打ち付けられ、無様に転がった。] ………… [そのまま黙って頭上から届く声を聞いていた。 分かりきっていた筈の本心、 望んでいない「お前の為」 そして、「さと」 起き上がり乱れた衿元を正しながら、鬼子の目もどこか遠くを見た。 先を行く相手を追い掛けるのが辛くとも、何も言わなかった。 傷薬を受け取り部屋に戻り、その日は部屋から出てくることはなく。 どれだけの時間鬼が帰ってこなかったのか、それすら知りもせず。] (135) 2021/06/22(Tue) 3:19:42 |
【人】 鬼の子 千[その日は眠れなかった。 翌朝、何事も無かったように接されて、合わせて振る舞った。 次の日も眠れなかった。 更に翌日も、ずっと、ずっと。 毎晩暗闇で手首に残る赤紫色の跡をじっと眺めていた。 既に塞がり始めていた傷のように、消えてしまうことがどうしても──だったから。 もうあの時のようにはしてくれないと分かっていても。] (136) 2021/06/22(Tue) 3:20:01 |
【人】 鬼の子 千[それでも、疑いもなく信じていた。 その内関係も元に戻れると、これからも一緒なのだと。 未だ押し花は確かめていないし、 身体の跡の理由も聞いていなくて、 川に入ってもいなかったのだから、 沢山の約束が鬼と鬼子にはあった筈なのだから。 役目を果たせない日々が、まるで牢の飼い殺しと変わらないと思っても 心苦しく虚しくても、────何にもない日常が、嫌だったわけじゃなかった。] (137) 2021/06/22(Tue) 3:20:19 |
【人】 鬼の子 千─ そして ─ なあ旦那様、なんで抱えるんだ あの時以外今までちゃんと歩いてただろう俺は この風呂敷の中身はなんだ 何が入っていたらこんなに重くなるんだ、なあ [理由と行動が全く合っていない。抱き上げられた瞬間には指摘していた。 少しも解決にならない返答に何も返せなくなっても、すぐに別のことを問いたくなる。] (138) 2021/06/22(Tue) 3:21:59 |
【人】 鬼の子 千そもそも何処に行くっていうんだい ここは村に行く人間が通るところだよ、なあ あんた見つかっていいのかい、怯えられちまうぜ 帰ろう、なあ…… …………紅鉄様 [語らいながら何を思っているのかは理解しても、傍にいない時の脳裏の思考まで分かるわけがない。 理解出来ないまま広がっていく不安に似合わない狼狽えを鬼子は見せ、暴れて嫌がり触れた身を離すことを躊躇い指一つ動かせなかった。 どれだけ見上げても声をかけても、紅色は白色を見ない。**] (139) 2021/06/22(Tue) 3:22:19 |
【赤】 鬼の子 千─ さとという女 ─ 「あら、見つかったわ」 「折角逃げようとしていたのに」 [許可なく山に立ち入ってはならない。深くまで踏み入れば命はない。 この村に住まう者は誰しもが知っている。 繊細な花の刺繍を施された白い着物を纏った女は、向き合う角の生えた大男を見上げ、少しも悪びれない声で呟き 白魚のような手の右を頬に添え淑やかに微笑んだ。] (*13) 2021/06/22(Tue) 8:59:19 |
【赤】 鬼の子 千「紅鉄坊様には見えないの? わたしの首に掛かった、運命の縄が」 [何処か夢見がちな顔で女は語り、締め上げる如く己の細首に触れる。 何度目かの失敗を遂げた、ある日のこと。 幾度鬼と面しても怯え一つ見せることはなく反省もせず、追い返されても村の者に連れ戻されても、懲りることもなくやって来る。 遂に廃寺の中まで入り込むようになり、咎める声にも気にした様子もなく山での暮らしや鬼という生き物について聞きたがる程に懐いていた。 鬼の落ち着いた振る舞いと、見目に合わない優しさがそうさせたのだ。 望まぬ許嫁の花嫁となることが受け入れ難い。 ただそれだけとは言えない事情が、彼女の足を山に向かわせ続ける。 しかし若い女が追手を巻きながら一人下るには山は険しく、大型動物より危険なモノたちが暗がりに犇めく。 望みは中々叶うことはなく、鬼との親交だけが深まっていく。] (*14) 2021/06/22(Tue) 8:59:47 |
【赤】 鬼の子 千「従順な道具で在らないのは、そんなにも罪かしら」 「女には思考の権利すら、無いのかしら?」 「知っているのよ。あの家がなんでこんな息苦しい村に来たのか」 「幕府のお膝元の呉服問屋を分家に任せて逃げるように……、」 [鈴を転がす声色が、吐き捨てる一言を発する時だけは低くなる。 優しい母は立場も心も非常に弱い、父や兄に逆らうことは出来ない。 女にとって胸の内を打ち明けられる存在は鬼だけだった。] 「一つしかない人生を、家と兄様の為にすり減らしたくないの」 [分かるでしょうと影の中の紅い光を見上げる。] (*15) 2021/06/22(Tue) 9:00:14 |
【赤】 鬼の子 千「心配してくれているのね。紅鉄坊様は、いつもそう」 「村の皆とは違うわ。 自分の為ではなく、ただ心から誰かを想っている」 「…………、一体どちらが鬼なのか分かったものじゃないわね」 [選ばれる言葉の節々から、穏やかな低い声から伝わるもの。 性を理由にしてもそこにあるのは嘲りや見下しではない。 弱者と定義されながらも女の胸に憤りがないのは、ただただ目の前の鬼が真摯であり続けるからこそ。] 「でもわたし、どれだけ辛くてもいいの。自由になりたい 何の苦しみもない世界には、喜びだって存在しないでしょう?」 [理解しながらも頷くことが出来ないのは、夢があるから。 女の身で男達と同じように働くことが、必ずしも不可能だとは思えなかったから。] (*16) 2021/06/22(Tue) 9:00:34 |
【赤】 鬼の子 千「ねえ紅鉄坊様、わたし好きな人が出来たの。 向日葵より綺麗な御髪の、異人さんよ。 お父様に会う為に、村に来たんですって」 [ある日初めて、逃げるでも苦しみを語るでもなく幸せそうな笑顔で鬼の元へやって来ることとなる。 道で足を挫いた女を、海の向こうからやって来た異国の商人である男が助けてくれたのだという。 彼の目的が父親だったこともあり、二人は何度も顔を合わせ語らう機会があった。自立を望む女の想いを理解し、外の世界について沢山の面白い話を聞かせてくれた。 幼子のようにはしゃぎ語るその頬は赤らんでいた。] (*17) 2021/06/22(Tue) 9:03:02 |
【赤】 鬼の子 千「わたしを連れて行ってくれるって 一緒に船に乗って、彼の祖国に行こうって」 「あの花がまた咲く頃に、迎えに来てくれるのよ」 「ええきっと、国を渡るのはとても大変なことだわ それでもわたし、理由を探して諦めたくない。 あの方となら、頑張れる気がするの」 [だからその時は──……と女は願う。 鬼にも立場がある、あの約束を結んだことも知っている。 それでも、愛する人と山を越える為には彼を頼る以外には無かった。] (*18) 2021/06/22(Tue) 9:03:54 |
【赤】 鬼の子 千「紅鉄坊様、今のあなたは自由?」 [故に、最後に向けた問い掛けには鬼に向ける想いが乗る。 全てが上手く行けば人間が訪ねてくることも無くなり、これからも独り役目を果たし続けることになるだろう彼は それについて納得しているのだろうか、それが彼の幸せなのだろうかと。 その後、身重になった女は家族に問い詰められ、子を守る為に説得して懸命に手を尽くしながら愛した男を待った。 ──男は、帰ってこなかった。 さとは出産に耐え切れず、もし村の者に鬼が問えば彼女は赤子と共に死んだと伝えられる。*] (*19) 2021/06/22(Tue) 9:04:13 |
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