転校生 矢川 誠壱は、メモを貼った。 (a2) 2020/06/17(Wed) 12:59:02 |
【人】 転校生 矢川 誠壱 ──理科室・喫茶アトリエ── [ 存外すらすらとした口調で>>14 歓迎されれば、模擬店ではない、 ほんとうの店みたいだな、なんて ぼんやりとした印象を抱いた。 まあ、部屋の景観がまるっきり 理科室だからさすがにそれはないが。 クラスメイトの姿にその名前を呼ぶと、 「うわ」なんて感嘆詞を頭につけて、 己の名前を呼ばれるものだから、>>17 下がっていた眉尻は元に戻り、 代わりに口端を意地悪くあげて、 「なにか不都合があった?」と片目を眇めた。 部屋に入り、雨宮の喫煙を 咎めながら笑って取り上げる。 案の定睨まれてしまったが>>20 そんなことは気にしない。] (38) 2020/06/17(Wed) 19:10:31 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ そういえば、注文を尋ねられていたのだったか。 ちら、と雨宮の方を見れば、 そこにあるのはコーヒーが入っていたで あろうグラスだった。] あ、Wふりよう仲間Wくん 俺もアイスコーヒーもらえる? それと、名前教えてほしいな。 俺は矢川。君の仲間と同じクラス。 [ そう注文に自己紹介も軽く付け足して、 背負ったままだったベースを下ろす。] (40) 2020/06/17(Wed) 19:11:07 |
【人】 転校生 矢川 誠壱そうだ雨宮くん、ライブの出番、 後ろから3番目らしいから。 [ と伝えておこう。 まさかWふりよう仲間くんWが、 己と彼の演奏を聴いていたなんてことも、 ライブに興味があっても、人混みが苦手で くることを躊躇っているだなんてことも、 知る由もないのだけれど。]* (41) 2020/06/17(Wed) 19:11:22 |
転校生 矢川 誠壱は、メモを貼った。 (a6) 2020/06/17(Wed) 19:15:29 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 演奏をした、という話を雨宮がしたのか。 はたまた、ここまで聞こえてきていたのか。 詳しくはわからないが ひとまず、そう返事をして。] 須藤くんも見にきてよ。 人、多いほうが盛り上がると思うし。 [ と、雨宮の宣伝にさらに乗せた。 須藤が渋るようなら、理由を聞いてみるつもり。 質問の仕方からして、きっと、 音楽が嫌いなわけではないと思うから。]* (61) 2020/06/17(Wed) 22:27:15 |
【人】 転校生 矢川 誠壱わ、 え、大丈夫っ!? [ そう、いって立ち上がる。 少しばかり彼の方へと歩みを進め、 手元と、その顔を交互に確認した。] 火傷とかしてない? …ごめん、話しかけたからだな。 [ と、続けて頭を下げ、短く息を吐いて、 大人しくまた椅子へ腰掛ける。 淹れなおしてくれている様子の彼には もう話しかけないでおこう、と またその様子をじっと見つめ。 淹れ終わると同じころ、小さな声で 聞こえた言葉に、目をまた瞬かせる。] (73) 2020/06/17(Wed) 23:43:03 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 言ってはなんだが、そう忙しい喫茶店にも 見えないし、先程の興奮具合からして、 きっと音楽は好きなのだろう。 だが、なぜそこは濁すのだろうか。 ライブ、なんて生の音に触れる 絶好の機会だというのに。 グラスに注がれたコーヒーに氷が入れられる。 カランカランっと小気味良い音のあと、 ぱききっと氷にヒビが入ったのがわかった。 ことん、と目の前に置かれる。 まだ軽く湯気の立つそれは、深みのある、 とてもいい香りがした。] ありがとう [ そう、一言礼を言って。] (74) 2020/06/17(Wed) 23:43:24 |
【人】 転校生 矢川 誠壱今回はオルタナティブロックらしい ラウドもちょっと入ってるけど [ バンドのジャンルについて問われれば そう簡単に答える。>>68 ちなみにロックのジャンルはかなり 曖昧な部分もあるとおもっているし、 よくわかっていない部分も大きい。 だから、それってどんなの?と 聞かれたところでうまく答えられる わけもないから「よく知らないけど、 たぶん聞いたらわかるんじゃない?」と 曖昧に濁してしまうだろうけれど。 一口、コーヒーを含む。 すう、と通っていく苦味。 喉を通る箇所が冷えていくのがわかる。 鼻から抜ける香ばしさと、コクと、 かすかに舌の上に残る酸味がいいバランスだ。 は、と息を吐いて「…うまいな」と落とした。] (75) 2020/06/17(Wed) 23:43:47 |
【人】 転校生 矢川 誠壱───ひとつ、聞いてもいい? [ と一言前置きをしてから ] ライブ、苦手だったりする? [ と単刀直入に聞いてみよう。 「ちなみにこの話って終わってたりする?」と ライブの宣伝をすでにしてくれていたらしい 雨宮には確認をとって。]* (77) 2020/06/17(Wed) 23:44:52 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ じっと絵画を見ていると、 なにやら取り繕うように、言い訳するように 作者本人がわたわたと早口をはじめるが、>>85 それよりも早く、重ねるようにして 素直に褒めると、それも止まる。 ふ、と目線をそちらに目を向けると、 少しばかりその瞳が潤んでいるようにも見えて。 ああ、だけど。 ───きっと、あまり見られたくないだろうから。 そっと視線を戻して、伏せた。 それから、ゆっくりと口を開く。 少しの、沈黙。 小さくかたん、となにかが動く音。>>87 目線を彼の方へとまた、上げた。 途切れ途切れに紡がれたことの葉に、 一度、頷いて。] ───理由を、聞いても? 嫌なら話さなくていいよ。 [ と続けた。]* (89) 2020/06/18(Thu) 12:49:26 |
【人】 転校生 矢川 誠壱 ──理科室・喫茶アトリエ── [ 「意外」という言葉に「そう?」と 首を軽く傾げて見せる。>>91 だが言われてみればそうか。 彼と演奏したのはジャズだったしなあ、と 思い返しながら頷いて首を真っ直ぐに戻した。 気分を害したりはしない。 「ロックも好きだよ。ジャズも好きだけど」と 付け足して、目を細めた。 そうして尋ねた言葉。 ついでに、この話はもしかしてすでに 終わっているのかと確認したら、 否定の言葉が返ってくる。>>93 辿々しく伝えてくれた目の前の後輩に、 理由を問うと、また少し躊躇いを見せてから、 静かにその唇が開かれる。 すう、と息を吸ったのがわかった。 語られる、理由は黙って聞いていた。] (105) 2020/06/18(Thu) 19:28:17 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ ソウボウシツニンというものを 全く知らないわけではない。 昔は見えていたというのだから、 つまりは後天的なものなのだろう。 たとえば事故にあっただとか、 なにか脳の病に侵されただとか、 そういう過去が彼にはあるのだろうか。 それを乗り越えて、今ここにいるのに、 目の前の人間の顔すらも認識できないなんて 彼の目に今世界はどう映っているのだろう。 そして、隣にいる彼も───>>1:130 己にはそんな過去はない。 普通に、平和に、なんの苦労もなく、 生きてきた。たぶん。 だから、彼らの思いなどなにひとつ 理解することはできないし、 きっとこれからもわからない。 かける言葉など己には持ち合わせて いないのだろうとはっきり言える。 なにも浮かばなくて、ただひとつ、 ぼんやりとした形のものがひとつ、 頭の中にあって。 それを形にすべきかどうか、迷って。 すると、己よりも先に隣の彼が 口を開いた。>>100] (106) 2020/06/18(Thu) 19:28:54 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 小さな謝罪の言葉に、須藤が ぶんぶんと左右に手を振る。>>103 続けられる言葉のあとに響いた 笑い声に含まれた意図を悟ることは 上手くできなくて。 それが無理をして明るく振る舞ったのか、 はたまた本当にそう思っているのか。 ちら、と黒板の方に置かれた絵を見る。 聞こえてきたセッションをイメージして 描いたというその絵は、楽しそうで、 その色合いはカラフルなのに、 どこかに寂しさもある気がして。 ───だけど、想像してみる。 己が人の顔が認識できなかったとして。 おそらく人間であろう何かわからないものの 有象無象が蠕く体育館。光の先にある、 なにかもが認識できない。それはきっと、 たまらなく恐ろしい気がして。 きゅ、と上下の唇を合わせて結ぶ。 軽く、噛んだ。] (107) 2020/06/18(Thu) 19:29:15 |
【人】 転校生 矢川 誠壱あ、ごめん、ライブのことなんだけどさ …後ろの方って、席どんなかんじなの? ステージにいる奴らの顔って見れる? 「後ろぉ?…あーまあ見えると思うけど」 ちなみに、見えないとこってある? 見えないけどライブ見てんなーって こう、思えるとこ。 「んーどうだろ…」 [ 電話口の相手である我がバンドの ギター担当が困ったように唸る。 すると、後ろから「どしたの?」と 彼の双子の声が聞こえた。 電話口で説明がされる。] (109) 2020/06/18(Thu) 19:29:58 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「もしもしイチ!?それならさぁ! 体育館の二階に、照明担当が 何人かいるからそのあたりはー? で、なんで?」 …そうか。いや、───友達がさ、 人混みが苦手らしくて。 でも音楽好きだから、ライブに 誘おっかなって。 [ ちら、と目配せをして。 こてり、首を倒す。電話口では相変わらず やかましく「いーじゃんきてきて!!」と ボーカルの声が響いた。 それに同じ声が続く。 「先生に聞いてみるよ、また連絡する」と 言われて、お礼を言う前に電話は切れた。 無音になったスマートフォンに 面食らったように目を開いて、 ゆっくり耳から離す。瞬間、メッセージの 通知に震えて、思わず肩が跳ねた。] (110) 2020/06/18(Thu) 19:30:17 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「おっけーだって」 [ そうシンプルに一言書かれたそれ。] いや、早いな [ と思わず眉を下げて笑う。 そのままゆっくりスマートフォンから 顔を上げて、W友達Wの方を見た。] (111) 2020/06/18(Thu) 19:31:15 |
【人】 転校生 矢川 誠壱…照明担当が体育館の 二階にいるらしくてさ。 ───そこなら、人の顔もほとんど 見えないし、そこまでの 圧迫感はないんじゃねえかなって 思うんだけどさ。 [ ……とそこまで、伝えて。 とぼけるように片目を眇めて、 唇を歪める。 目の前にあるアイスコーヒーのグラスを とって、ぐい、と喉を通した。 最適解なんてきっとわからない。 余計なお世話かもしれないとはわかってる。 ただ、とりあえずできることだけしてみたが、 それが吉と出るか凶と出るか それは彼次第だから。] (112) 2020/06/18(Thu) 19:31:24 |
【人】 転校生 矢川 誠壱俺もそろそろ行くね [ と立ち上がって、おなじく代金を渡し、 置いたままだったベースケースを背負う。] じゃあ、またWあとでW [ そう微笑んで、喫茶店を出た。]* (127) 2020/06/18(Thu) 21:10:53 |
転校生 矢川 誠壱は、メモを貼った。 (a20) 2020/06/18(Thu) 21:18:30 |
【人】 転校生 矢川 誠壱 ──ライブ── [ 会場が、ざわついている。 照明の落とされたステージの上には、 生ピアノ、ドラム、キーボード、それから アンプと配線。スタンドマイクが数本。 体育館の袖で、息を吐いた。] 「とにかく!!!楽しもう!!!」 [ そうボーカルの祐樹が叫んだ。 全員が「おう!!!」と答える。 ほどよい緊張感が体を走る。 一度ぎゅ、と握った掌は湿っていた。 目の前にいた祐樹のてのひらが額につく。 そのままぐい、と前髪ごと顔を上げられた。 それでやっと、いつのまにか、 下を向いていたのがわかった。] (165) 2020/06/19(Fri) 7:52:20 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「イチ、ありがと。イチが入ってくれたから、 俺らは今ここに立ててる。 ────イチで、よかった。」 [ そういって、にかっと笑うから。 泣きそうに眉根を寄せて、微笑んだ。] 俺の方こそ。ありがとな、みんな。 [ たった、1ヶ月だ。彼らと共に過ごしたのは。 己の人生において音楽は必要不可欠だし、 いつだって共にあったものだけれど。 ひとりで、弾くことも多かった。 もちろん、バンドを組んでいた頃も あったにはあったけれど。 それでも、こんなにも短い期間で、 こんなにも濃厚な時間を、 こんなにも楽しく共有できたのは きっと後にも先にも今回だけだろう。 ただ、ひたすら、走った日々。 これからの話は、まだなにもしてない。] (166) 2020/06/19(Fri) 7:52:59 |
【人】 転校生 矢川 誠壱(───今日が、最初で最後かもしれないな) [ ならば、感傷的にはならず。 とにかく、この熱を全て吐き出す勢いで 全力で、捧げようじゃあないか。 揃えのTシャツに身を包んだ、 急揃えの4人で。] 「おっしゃいくぞーッ!!!」 [ その声にダァンッと足を鳴らして。 右手でベースのネックを掴んで、 ステージへと足を進める。] (167) 2020/06/19(Fri) 7:53:52 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ まだ暗い。 照明のない闇の中。 ジジッと電子音が聞こえる。 己もジャックにシールドを挿した。 響いた小さなリズム音に、ドラムの智が ハイハットとバスドラムのペダルに 足を置いたのだとわかる。 すう、と息を吸って。 吐きながら、Eを鳴らした。 ギターの音も、重なる。 そのままチューニングに問題がないか もう一度確かめて。 ゴンゴンゴンっとマイクを叩く音。 キィーーーンッと歪んだ。 ざわつく会場は、体育館の半分から後ろが パイプ椅子の座席、前半分はライブハウス よろしくアリーナ席のように立ち見状態。 ステージ近くまで押し寄せる人の波は、 各々好き勝手にメンバーの名前を呼ぶ。 もちろん、己の名前を呼ぶ人はいない。 ───それで、いい。] (168) 2020/06/19(Fri) 7:54:50 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ ふーーと深く息を吐く音が、 マイクにひろわれている。 音が止まる。 ざわついていた人の声が止んだ。 一瞬の、確かな静寂。 スタンドマイクを祐樹の掌が包む。 すう、と息を吸ったのがわかる。 ああ ───はじまる。 一曲目。 アカペラからはじまった。 繰り返した二度目のフレーズから、声が重なる。 大きくなって、大きくなって。 ドラムと、ギターが響く。 じりじりとなにかが燻るような、 焼けるようなひずんだ音。] (170) 2020/06/19(Fri) 7:59:59 |
【人】 転校生 矢川 誠壱 「叫べーーッッ!!!」 [ 祐樹が煽ると、息を吸い込む 瞬間のような休符の直後、 バンド全体が大きく鳴りはじめる。 会場が大きく沸く。一体になる。 体が揺れる。その重いリズムに合わせ。 がなる、響く、揺れる。 ひずむ、鳴る、激しく。 先ほど、教室で演奏したしっとりと 柔らかな音とは全く違うけれど。 これも、楽しくて仕方がない。 観客の方を見ると、みんな、笑っている。 楽しそうに手を上げ、声を上げて、 飛ぶ、リズムに乗る。] (171) 2020/06/19(Fri) 8:03:50 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「この町を、歩き回る君。 消え去ったりしないよ。 本当に、見ているだけか? ならどうして、そんなに急いでるのさ。 ───ここから、踏み出す時、 一歩、一歩忘れないよう、息を吸って。 生きるって、きっと傷つけるし 生きるって、きっと失うことだ。 それでも、君が自分のW街Wで 迷子になっているのなら。 生きることって、笑うこと。 生きることって、泣くこと。 自分を見つける意味を失ってしまったのかい? 生きるってきっと、愛することだよ。」 (173) 2020/06/19(Fri) 8:05:46 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ これは、メッセージソングだ。 全英詞だから、己には理解できないが、 ライブでやる曲を話した時、 祐樹がまず初めに挙げたのはこれだった。 絶対やりたい、と。 そのあと、自分で歌詞を見て訳したっけ。] (174) 2020/06/19(Fri) 8:09:50 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「失うものがなにもないなんて、 本当にそうならどこへ行く? もしそれがわかるのなら、 君はなにを信じてるんだ? 忘れないで、今までの道のりに、 自分の足跡があるんだから。 自分のこれからを見つけるとき どうかまた息を吸って、 君の人生は君が作るんだから。 一歩踏み出すことに意味がないなんて、 誰が言った?そんなわけないだろ。 生きることは、愛することなんだから。」 (175) 2020/06/19(Fri) 8:16:13 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 爽やかで、綺麗なメロディに 乗せられたのは、たしかな応援。 直接的な励ましの言葉じゃない。 ただ、遠くから見守っていて、 時折優しくエールを送るような曲。 届け。 だれかに。 その先を、望む人たちのもとに。 そう願いながら、歌ったのがわかる。 汗が、首筋を伝った。 音が止む。 ボーカルの微かな呼吸音のあと、 わあ、と大きな拍手と声が沸いた。 にい、と笑った祐樹がこちらを見る。 己も柔く微笑み返した。 手首で顎の下を拭って、息を吐いた。] (176) 2020/06/19(Fri) 8:16:32 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「どーも、Two wins でっす!!!」 [ そういってピースを二つ揃えて Wの形を作るポーズは、このバンドの シンボルマークらしく。 祐樹がそのポーズをしたときは、 全員がしなければ怒られてしまう。 だから己も大きな掌でピースを 2つつくり、重ねて。 気恥ずかしさに首をこてりと倒して、 そのまま俯くようにして笑った。 さあ、MCがはじまった。 あと三曲。 走りきる。 この瞬間は、今しかない。]* (177) 2020/06/19(Fri) 8:16:47 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 矢川誠壱という男に、W自分Wはいらない。 人に弱いところを見せるのは苦手だった。 個人として認識されてしまいそうで。 幼い頃から引っ越しの多い環境だった。 昔は自己主張もしっかりする子だった らしいのだけれど、それも今は形を変え。 複数人対複数人なら平気だった。 己がメインにならなければ、いいから。 接客は違う。個人対個人だ。 だから、絶対に無理だと思った。 雨宮と2人でした演奏は良かった。 己がすぐに下がって仕舞えば、メインは ピアノになる。きっと、客の印象に 強く残るのはキラキラしたピアノ。 己は枠外で広げた布でいい。 バンドも同じだ。 このバンドのメインは双子。 それを支える柱になれればいい。] (205) 2020/06/19(Fri) 13:25:48 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 誰かにとって強く印象に残る存在に なることが、それを自身で認識することが とても、怖かった。 誰かにとっての特別になることが 誰かを、特別に思うことが、怖い。 だからいつだって飄々と。 温厚で、ノリよく、「普通」で。 いつか、この日々を誰かが思い出して そのとき己がもうそこにいなかったら そのとき名前が挙がることもなくていい。 挙がったとしても、ただ「元気かな」で 話が終わるくらいの存在でいたい。 思い出は自分の中には閉じ込めるから。 「ぜったいわすれないからね」 「ずっとともだちだよ」 そう言った子たちから 徐々に届かなくなる手紙。 途切れていく連絡。 少しずつ忘れられていく それがわかるのはもう、嫌だった。 (206) 2020/06/19(Fri) 13:26:37 |
【人】 転校生 矢川 誠壱 ──ライブ── [ 3曲目。 観客からのコールのあるこの曲。 簡単に呼びかけて練習する。 声を出して一緒に楽しんでほしい、と 言い出したのもボーカルの祐樹だった。 突拍子もないことを言い出すのはいつだって メインボーカルだった。それを理性的に とめつつも叶えるのがギター。 穏やかに見守るのがドラム。 バランスの良いチームだと思う。 祐樹が言い出した提案に、 ならこの曲はと挙げられたそれは、 満場一致で決まった。 ボーカルの右手が挙がる。 それを合図にコールが始まる。 はじめは小さなそれも、煽ると だんだんと大きくなっていく。 最高潮で二度、三度、繰り返したらば、 そこにドラムが、ギターが加わり、 重なる音に、ボーカルの声が足されて、 がなった。 そして、吠える。] (232) 2020/06/19(Fri) 19:27:03 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 白旗だと呼ばれても掲げたその旗を、 揺れる船の上からでも切り開く。 負け犬と呼ばれたって、 この曲の主人公はきっと、 挫けることなどないのだろう。 確かな強さを感じる。 ステージの上からでもわかる。 やはり、このバンドはかっこいい。 クールで、熱くて、強い。 今この場所に立てていることが、 本当に誇りだとおもった。] (233) 2020/06/19(Fri) 19:27:24 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ そして、4曲目。 はっきりとしたメッセージの響く、 この曲もまたきっと、誰かへの応援歌。 ありのままの己を認める、 それがどれだけ難しいことか そんなことわかり切っているけど。 指の間をすり抜けていくように、 人生がうまく掴めないときだって。 間違いごと誇りに思って、 自分自身を愛してあげることが。 ───俺も、出来てるとは思えないな。 わかってたって、怖いじゃないか。] (234) 2020/06/19(Fri) 19:27:54 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ それでもいつか、いつの日か。 全てを持って己を愛せる日が来たら、 ───誰かを特別に思えるのだろうか。 きゅ、と唇を結ぶ。 コーラスが響いた。 ドラムが鳴り、余韻のように 残ったエコーが体育館を駆けて、抜ける。 歓声と、拍手が聞こえた。 息を吐く。暑くてたまらない。 またペットボトルをひねって開け、 口に含んで、流し込んだ。 ぐい、と手のひらで前髪をあげる。 深く息を吐いた。] (235) 2020/06/19(Fri) 19:28:16 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「以上、Two winsでしたー!って、 ほんとはなるはずだったんだけど、 実は!もう一曲演らせてもらえる ことになりました!」 [ そういって祐樹がにかっと笑うと、 観客が沸いた。裕也の方を見ると、 困ったように眉尻を下げて笑っていた。] 「ほんとに急に決まったから、 あんまり練習できてなくてさ、 まだまだ、荒削りだし、 間違えたりとかもするかもだけど それ含めて、聞いてくれたら嬉しい。 これが今のWTwo winsWだからさ。」 [ 「な?」と振り向いてこちらを見る。 ぱちり、目を瞬かせてから、数度うなずいた。 メンバー紹介はしないでくれと頼んだのは己だ。 祐樹にどんな意図があったのかはわからない。 だが、否定もしなかった。] (236) 2020/06/19(Fri) 19:28:33 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「イチで、ほんとによかった」 [ 切ったマイクが拾わない声。 だがそれは確かに届く。 ああ、 やめてくれ。 だっておれは───] (238) 2020/06/19(Fri) 19:29:15 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ この曲を初めてきいたとき、 なんてかっこいいんだろうと思った。 その歌詞を訳してみたとき、 人生の岐路に立ったときに きっともう一度聞こうとおもった。 聞いてほしいとおもった。 伝えたいと、思ったから 演りたいと言ったのだ。 それが、どうしてだろう。 今響くこの曲が自分に問いかけてくるのだ。] (266) 2020/06/19(Fri) 23:10:01 |
【人】 転校生 矢川 誠壱W自分をごまかしては 曲がっていくんだ。 もう限界なのかな。W W強いフリをして自分を誤魔化して そうやって作り上げたものは 心を空っぽにしていくだろ。W [ ごまかして いたのか? 強いフリばかりして?] (268) 2020/06/19(Fri) 23:10:25 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ どうして、あのとき] 「比べた 数が 痛みだす 消えない弱さや傷さえも」 [ おれは ] 「全ては僕を作り出す」 [ おれは? ] Wおれの名前はW (269) 2020/06/19(Fri) 23:10:53 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 客席を見た。さっき歓声をとめた 女の子たちと目があった。 この子たちにとって、おれはきっと個人で。 それは、怖いこと、なんだけど。 ふ、と柔く微笑んでみる。 ひとりの女の子の顔が綻んだ。 自分を守るために個人であることを 拒絶するのは、それを見てくれている 人たちのことも、否定することに なるのかもしれないな、と思った。 顔を上げる。 照明の向こう側は、光が強くて見えない。 ただ、きっとそこにいるんだろう。 否定して、ごめん。 ほんとは、おれが一番逃げてるのかも しれないのにさ、偉そうに言ってごめん。] (274) 2020/06/19(Fri) 23:14:03 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ ───記憶に、残りたいよ。 もう誤魔化さないでさ。] っ ─── [ ボーカルのがなりが響く。 勢いだけで切り開いていく。 コーラスを、重ねる。] (279) 2020/06/19(Fri) 23:20:48 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ ああ 気づくのが遅いんだよな。 だってもう、終わってしまうじゃないか。 まだ もうすこしここにいたい。 まだ、おわってほしくない。 おれは まだ、] WMy Name isW [ 息遣いが、無音に響く。] (280) 2020/06/19(Fri) 23:21:11 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ そして、静寂を挟んで、沸いた。 満面の笑みのボーカルがこちらを向く。] 「やっぱメンバーだけ紹介しとく! ギターの裕也!ドラムの智! ベースのイチ!んで、祐樹でした! Two winsはまだ終わらねーからな! ありがとうございました!!」 [ 半ば雑な紹介を最後に持ってきて、 そうして、WTwo winsWの 文化祭のステージは幕を閉じた。 袖に引っ込んで。瞬間、深いため息が そして、目頭が熱くなった。] (281) 2020/06/19(Fri) 23:21:34 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「ごめん、やっぱさ、紹介してえよ だって新しいメンバー入ったのにさ なんも言わないままなんて寂しいよ」 [ と、祐樹が眉尻を下げた。] ──────大丈夫、 …ありがと、みんな [ そう小さくお礼を言って。 一度顔を洗おうと袖を出ようと。 そのとき、ステージを挟んで向こう側。 これから出番となる人が立つはずのそこに、 見知った顔があるものだから。]] (282) 2020/06/19(Fri) 23:21:53 |
【人】 転校生 矢川 誠壱え、 [ 小さく溢れる。 そのまま、ステージ近くまで足を進め。 暗い。暗いけれど、見える。 なにか、言ったのはわかったが、 その言葉までは分からなくて。 ただ、その左手が上がって、 こちらに示すのは、希望だから。 ───淡い期待。 深く頷いて、こちらもサムズアップした。 ───届いたのだろうか。彼に。 もしそうならいいのに、と淡い期待を抱いて。]* (283) 2020/06/19(Fri) 23:22:12 |
[|<] [<<] [<] [1] [2] ... [>] [>>] [>|]
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新