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【人】 過去から 編笠>>27 夕凪 ずっと、その器用に何かをこなす彼に憧れていた。 子どもだった俺たちは全員、その背中に背負われてきたはずだ。 普遍で、不動で、信頼できて、 何故かそれが絶対崩れないと信頼していた。 だから、誰も気づかなかった。 他の皆には夜凪の旦那がいても、 夜凪の旦那には、夜凪の旦那が居なかったことを。 弟分が、卯波が憧れを捨て去ったなら。 あいつのことを格好いいと思ってしまった俺が。 ――じゃあいつまでも、 こんな気持ちを抱えてていいはずがない。 助けての言葉が言えない相手に、手を伸ばさずにいられない。 「……伝わんないかもしれないけど。 ……全部勘違いかもしれないけど。 俺は憧れていた『夜凪の旦那』になる覚悟が出来たから。 だから、アンタにも必ず会いに行くよ。 でも、一人じゃ何もできないから。 ――たくさんの仲間を連れて」 そしたらきっと。 俺は、俺たちは――無敵だと。 そう信じさせてくれた親友がいるから。 (30) 2021/08/20(Fri) 21:37:16 |
【人】 夜を越えて 編笠>>27 夕凪 たち 一人じゃ救えないかもしれない。 一人じゃ答えを出せないかもしれない。 人は、誰かを救うようには出来ていない。 何もかもを解決するなんて無理だ。 なあ、もう一人の俺。 もし会えたら言うよ。必ず探し出して伝えるよ 人の腕が二本しかないのは。 誰かの差し出した手を握り、誰かに手を差し伸べるためだって。 「……だから夕凪の姉さん。 『 旦那も姉さんも待っててくれ 』って。そう伝えてくれねえかな。必ず、迎えに行くから。 それが、俺のお願いだ」 少しは、これで惚れた相手の前で格好つくかなと、 少年だった顔で、自然な顔で笑って肩を竦めた。 (31) 2021/08/20(Fri) 21:39:34 |
【人】 夜を越えて 編笠>>33 夕凪 「残念だけど夜凪の旦那との関係は、 夜凪の旦那との関係だけなんだよ。 同じように、夕凪の姉さんとの関係も、 夕凪の姉さんとの間のものだけだけど。 だから、俺にとっては…… どっちだって欠けがたいもんなんだよ」 それは。 幼馴染三人の誰一人、 何一つ手放す勇気を持てなかったのと同じで。 今まで何かを支えてきた人が居るなら、 今度はそれになりたがったっていいはずだ。 どうせここが夢なんだとしたら。 夢みたいな話をしたって構わないだろう。 そしてその夢を現実にするために、 少しばかり頑張ってしまうのが男という生き物なんだ。 大切な誰かの夢を叶えてほしいから、 方法を迷わないのが、男なんだ。 そうだろう――夜凪の旦那。俺たちやっぱ、似てるかもな。 (34) 2021/08/21(Sat) 0:18:55 |
【人】 茜差す方へ 編笠言いながら、自転車に跨った。 もう、後ろは振りむかない。 後ろに置いていくんじゃない、前に迎えに行くために。 だから、ここでは、さよならしなきゃな。 少年の残滓を置いていくようにして、 自転車のペダルに足を置いた。 「さあ、伝えてくるか。 ――今度は、俺の番だ、アカネ」 世界の何処にいたって一番最初にはきっと、 お前を見つけてやる。何回でも。何十回でも。 そう思いながら、自転車に跨った。 お前のことが好きだと。 今どこにいても伝えにいってやるからな――。 (36) 2021/08/21(Sat) 0:23:11 |
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