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【教】 白昼夢 ファリエ「……あー。なんだ。 それもそっか。知ってるよね、聖女なんだから」 あんまりにあっさりと告げられた言葉は、冷気のように肺を縮こませる。 驚きと納得と、それから惜しみが女の顔の上でくるくると入れ替わっていた。 迷っているうちに結局切り出すのもあなたからだった。 それほどまでにこの聖女祭りというものは、あなたにとっては重要な節目なのだろう。 元の世界に帰る。それは望みはすれどまだどこか現実感を伴えない。 あなたに別れを告げなければ終わらないのではないかと、そんな風にすら心の奥底では思っていた。 「どうして私なの? 私は、だって。帰れるなら帰りたいって思ってるんだよ」 己を覗き込む幽けき存在はどこまでも真っ直ぐに在り続ける。 たとえ女が寵愛を受けようと拒もうと、永く。 とうの昔に失ってしまった大切な何かを見せつけられているようで、女はただ準透明の空気を見るばかり。 (/0) 2024/02/03(Sat) 0:47:05 |
【教】 白昼夢 ファリエ「全部知っていて、全部を仕組んだくせに。 その上で、最後かもしれないから一緒にお祭りを見たいって……私はどうしたらいいのか分からないよ…… いっそ帰したくないって無理やりにでも私を呪ってくれた方が自然なのに」 確かめていない事が多いのは、あなたを心から嫌いになりたくないから。 赤の他人のように、この世界の貴き聖女様としてあなたを型に嵌めることができないから。 手を繋ぐこともできない存在にどうやって触れられれば分かるのかも、正直分からないけれど。 「ねえリッカ。私は帰ってもいいの?」 聖女はそういうルールだと告げた。 世界が知らないこの祭りの本当の意味を。 無邪気にあなた。子供のあなた。隣に居てくれたあなた。 この瞳に映る透明でないあなたに問う。 (/1) 2024/02/03(Sat) 0:50:41 |
【人】 白昼夢 ファリエ「聖女の寵愛……」 知らしめられた名は確かにあの時教会に呼び出された者と相違なく。 こうやって例年通りに祭りが進むのだろう。 兎にも角にも女の名前が載らないということはまだうなじの痣は沈黙している筈。 「……痛かったりしたんでしょうか?」 (0) 2024/02/03(Sat) 1:05:08 |
ファリエは、両名とも深く知らない。これから出会うのも少し気が引けた。 (a0) 2024/02/03(Sat) 1:06:07 |
【秘】 白昼夢 ファリエ → 寡黙 エミール「それって私の要望に合わせてまた誘ってくれるって風にも聞こえますけど? 独りで楽しむなら私の意見なんて余所において通いつめなさいな」 女の酒精は口当たりがよく、するする喉を通る。 酒に強くも弱くもない体はほんのり肌を赤らめ始めていた。 あなたのお勧めを聞きながら、適当に追加の料理を注文する。 こちらは軽食程度の注文。 「孤児院の職員同士はお互いそんな感じですし、子供と遊ぶのに支障が無いのが一番。 外の人で見るのはあなたくらいですよ」 あなたも気にしないでしょう?と言外に滲ませる。 それなりに似通った部分もあるからこんな話をしているのだし。 「仕事というと……確か村の警護だとかそういうのしてるんでしたっけ。 テイマー?とか詳しいことは私も知らないけれど、その気になれば戦えるって事なんですよね。 う〜ん。ちょっと想像つきません」 顎に手を当てて考えても、子供をあやすように動物のお世話をしている様子までしか浮かばなかった。 不自由していないと感じているから冒険者のような外に出る仕事もしないのだろうか。 「エミールは……今とは違う人生だったらとか、考えしたことありますか?」 からんころん。グラスを揺らすと氷がぶつかる小気味いい音を立てる。 言おうか言わまいかを迷うような暫しの間を挟んで切り出したのは、含みのある声音。 (-61) 2024/02/04(Sun) 12:50:36 |
【教】 白昼夢 ファリエ「────────」 はくり。開いた口から白い息が何度か漏れて朝日に溶ける。 女にだけ見えている白昼夢にすら届かない音はどんな形を成そうとしたのか。 寄った眉根は、困っているようにも怒っているようにも見えた。 「ごめん」 結局そんな逃げしか吐けない。 全部あなたの言う通りで目を伏せた。 口にしてからそもそもの元凶にどうして謝る必要があるのだろうかと内心苦笑しながら、歩み寄った。 今日はただ傍にいるだけではない。一緒にお祭りを見に行く。 実体のないあなたと過ごすまるでデートのような時間。 ファリエとして過ごしたことのない初めての時間。 (/6) 2024/02/04(Sun) 13:25:19 |
【教】 白昼夢 ファリエ「リッカは優しいんだね」 切り替えるように次に顔をあげたのは、祭り前の子供のような笑み。 ファリエとしての人生と転生前の人生を天秤にかければ、後者に傾くのは違いなく。 子供の世話を長くしているからか、言葉にできない訴えを読み取ることには長けている女は、浮かび上がった僅かな含みに気づいて。 それから。 「行こっか。最後ならめいっぱい楽しまないと。 知ってる?今年は面白い出し物もあるんだって……」 ──見ない振りをした。 みんながそうしたように。 特別な事なんてこれっぽっちもない人間だから。 きっとこれが自然で、当たり前のことなのだろう。 「優しくなんてされなきゃ良かった」 掠れるような言葉を踏み潰すように祭りの喧騒へと足を踏み出した。 (/7) 2024/02/04(Sun) 13:31:04 |
【教】 白昼夢 ファリエ不思議そうにしているあなたは、なんだか本当にただの幼子のようで。 同時に時折見せるその姿はなんとなく見覚えがある気がした。 たぶんそれは。 ──そうだ。鏡に映った孤児になったばかりの自分だ。 純真無垢なその心を、奔放にさせてしまないところ。 女はそのやり方しか知らないから、その気配を察しても何もできない。 あなたは会おうと思えば私に会いに来られるけれど。 私はあなたに会いたくても会いに行けないのと同じだ。 (/10) 2024/02/04(Sun) 19:11:04 |
【教】 白昼夢 ファリエ「そうなんだよ。私にとってはね」 徐々に賑やかさを増していく通りを歩きながら、あなたの説明通り周囲の視線を感じていた。 確かに姉妹に見えなくも、ない。 あなたに抱く感情も元々はそうだったから、すとんと腑に落ちた。 「『聖女様のたからもの』みたいな名前の演劇だったかな。 大方聖女様にあやかった創作かな。 他には一般参加型の催しもあるんだって。 ミニゲームみたいなもので、勝ったら景品が出たり……あ、聖女様の祝福を受けた冠飾りだって」 右も左も聖女だらけ。それもそのはず、聖女祭りの名に恥じない。 その主役を連れていると言ったら大変なことになりそうだ。 あるいは案外笑い話で済ませられるかもしれない。 実在の祝福とも言える痣持ちという存在の方が、今は信ぴょう性がある。 「私が── こほん 。お姉ちゃん がどこでも連れて行ってあげる」どちらにせよ明かす気は無い。 あなたの計らいで中空に向かって話しかける必要がなくなった女はその役に準ずることにしたようだ。 (/11) 2024/02/04(Sun) 19:15:28 |
【秘】 白昼夢 ファリエ → 寡黙 エミール「……ちょっと揶揄いすぎました?」 小さく舌を出して申し訳なさそうに眉を下げた。まさか店員にまで面白がられるとは…… 酒精の助けもあって、この様子ではすっかり緊張は解けている。 当初の目的は十分すぎるほどに達成されていた。 料理を少しずつ摘みながら、空になったグラスを置いてお代わりを頼んだ。 気に入ったらしい。 「別に構いませんよ。 この痣があると仕事もままならなさそうですし。 子供が何かのトラブルに巻き込まれないとも限りませんから」 聖女の祝福を受けた者。 それは憧れの対象……だけではない可能性は十二分にある。 とにかく目立ち、身元も公開されている以上は祭りが終わるまでは休ませてもらう心算になっていた。 今まで殆ど孤児院に居た分、事情を話せば許してもらえるだろう。 ▼ (-85) 2024/02/05(Mon) 0:29:34 |
【秘】 白昼夢 ファリエ → 寡黙 エミール「じゃああなたが孤児院に居るときはいざとなっても守ってもらえる……ってことですか? 頼もしい〜。いつか私が都市の外に出向く事があったら護衛をお願いしますよ。 もちろん友情価格で 」ちゃっかりそんな事まで付け加えた。 有事なんて無いに越したことは無いのだけれど。 あなたがテイマーとして仕事をしている所はちょっと興味があった。 ……兎にも角にも全部祭りが終わってからの話だ。 「そうなんですか? 自分で選んだことじゃなくて、選ばざるを得なかったこと。 どうやっても変えられない運命のようなこと。 たったのひとつもありませんか?」 質問の答えは、無し。 女はその答えにどこか納得していないような表情で目を細めた。 酔いが回ってきたのか瞳も夜色の瞳が潤んでいるようにも見えるかもしれない。 「私はあります。 口にしなくてもなんとなくは分かるでしょう? 今あなたが想像したそれが正解ですよ」 孤児院にずっと居る。それだけで誰にでも伝わる簡単な事。 「もちろんだからと言って全部が全部嫌な訳でもありません」 「でも……"これ"が祝福だと言うのなら、これからの人生がもっと幸せになるようなものだったら良いのにって」 うなじにそっと手を回して、萎んでいく声を丁度に運ばれてきた林檎酒で流し込んだ。 (-86) 2024/02/05(Mon) 0:32:57 |
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