【人】 高山 智恵 さて、この日の営業は少しばかり慌ただしかった。 学生たちでごった返す時間帯に、バイトの手がひとり分足りない状態で店を回すことになったのだ。 (当のそのバイトの学生からの連絡はあったか否か……どっちにしたって、今いる人数で現場を捌かないといけないことには変わりないわけで) まあ多忙だった分、余計な思考も削ぎ落される訳で、その点では個人的にはラッキーだったのかもしれないけれど。 「ゴーストモンブランはカウンター席に、 パンプキンタルトは向こうのテーブル席に―― 違う、そのジャック・オー・ランタンはあっち!」 いつものメニューに加えて、この季節のメニューも取り揃えている今、ハロウィーンの気分を楽しむ学生たちのお喋りは止まない。 他愛ない――時に他愛なくないかもしれない――会話に耳を澄ます余裕もなしに、未だおぼつかなさの残るバイトたちと共にこの慌ただしさを乗り切っていく。 (19) 2022/10/13(Thu) 9:35:12 |
【人】 高山 智恵 こうして混雑時を乗り切って、ひと心地ついた頃だったかな。 ひとりの客がこのカフェを訪れてきた。 学生、という風には見えなかったけれど、別におかしいことではない。大学のすぐ近くに立地していることからその大学の生徒が客の多数になるというだけで、近隣の住民や通りがかりの人が店を訪れることだって普通にある。 さて、その客は常設のメニューにあるアイスカフェオレを注文してきたのだけれど――。 「何かあったんですか、お客さん?」 いかにも何か愚痴りたい……否、はっきり「愚痴吐き出し」たいと零したその声を私は聞き逃していない。 さっきまでの繁忙時間帯の修羅場の時にここに辿り着かなくて良かったね、と内心思いながら。 私はカウンター越しに、ちょっとどころか大分心労を抱えているように見えたその客の愚痴を聞くことにしたのさ。** (21) 2022/10/13(Thu) 9:49:18 |
高山 智恵は、メモを貼った。 (a4) 2022/10/13(Thu) 9:50:31 |
【人】 高山 智恵 さて、うちのカフェで出すご飯は、いつものメニューにせよ季節限定ものにせよ、一品の量はそこまで多くない。 これはいかにもおしゃれなカフェでありがちな「かわい子気取りの女子狙い」的な意図から……という訳ではない。単に「多すぎて食べ残される」という事態を極力防ぐための方針だ。フードロスの問題だってちゃんと頭にある。 一方で、希望があればライスの大盛りやパンのおかわりだって受け付ける。その分の追加料金は取るけれど、もともとの量の価格はそこまで高くしていないからってことで、どうかひとつ。 男子でも女子でもそれ以外の子でも、とにかくめいっぱい食わせろ!な学生はいるものだ。単にカロリー不足だとか、たまには思う存分食べたいとか、あとはまあ……失恋してのヤケ食いとか、事情は色々だけれども。 (量に対してのコスパは、少し離れたところの老舗の定食屋のほうが断然いいけれどもね!) 「あ、いらっしゃいませ! お一人様ですか?」 ほら、今入ってきたお客様も、いかにも無性に空腹で仕方ない……って顔をしていたかどうかはともかくとして。 別に食べ盛りの学生からじゃなくたって、大盛りおかわりその他の注文は受け付けている。 メニューボードの端の方にも、ライス1.5倍・2倍・3倍のオプションを記載しておいているけれど、他の要望だって今なら聞ける。なんたって今は店が空いているからね。** (29) 2022/10/13(Thu) 15:46:13 |
高山 智恵は、メモを貼った。 (a7) 2022/10/13(Thu) 15:51:06 |
高山 智恵は、メモを貼った。 (a8) 2022/10/13(Thu) 15:52:45 |
【人】 高山 智恵 空腹のお一人様がオーダーした>>30のは、ものすごく端的に言えば、トリプルライス。しかもエビピラフは大盛りでAセットのライスは1.5倍と来ている。 お試しであれこれ食べてみる……にしては一品の量が多い注文ばかり。つまり、事情はともかくとして、ガチの大食い客ということだ。注文を受けた同僚の店員が「えっ」という声を漏らしていたので、私はその同僚を視線だけでちょっと睨んでおいた。厨房に向かうそいつを引き止めて注意するまではここではしなかったけれど(後で一言言っておこう)。 「(8)4n10倍オプションは裏メニュー扱いにしなくても 良くない?って店長に打診してもいいかな……」 こうつぶやいたのは、既にオーダーを承った後のことだったけれども。 まああまり堂々と特盛り極盛りメニューを全面に出してしまうのは「あのトンカツ定食屋とイメージダブる」って店長に言われかねないから、これまで通り裏メニュー扱いでいいか。 (44) 2022/10/13(Thu) 19:33:42 |
【人】 高山 智恵 さて、件の客は愚痴を正直に白状した>>32。……「白状した」っていう言い方はあまり良くない気もしたけれど、相手が眉を下げてちょっと言いにくそうにしていたような素振りも見えたものだから、こんなふうに一瞬思ってしまったことを許してほしい。 「あー。 ……あーあー。 なるほど、それ確かにキツいやつですね」 おんなじように眉を下げて、うん、うん、と相槌を打つ。 ぼそりと告げられた言葉は多くはなかったけれども、だいたいの事情は想像できた。 ――好きだった幼馴染が、別の誰かと幸せな結婚を遂げた。そういった辺りだろうと。 実際のところとか詳しい話とかをこちらから直接聞き出すことはしなかったけれども。 (45) 2022/10/13(Thu) 19:34:19 |
【人】 高山 智恵「お客さんほどじゃないと思いますけど、私も、 幼馴染の式でちょーーーーっと凹んだことあるんですよ。 それこそ、無茶苦茶幸せそう、で」 私の場合、幼馴染への恋心はわりと早い時期に消えてしまったから、彼女の式を見届けてハートブレイクしたなんて経験もなかったわけだった、けれども。 そもそも私自身、結婚って形にものすごく拘っている心算も、たぶん、ないけれど。 それでも見知った人の結婚の報に触れる度に、薄らとぼんやりと積み重なっていくものはある。 (46) 2022/10/13(Thu) 19:35:19 |
【人】 高山 智恵( 私だけ、取り残されてく、みたいな感じ。 世界で私だけ、って訳じゃないんだって 知ってても、解ってても、さ。 あの娘だって、きっといつかは “ 素敵なあの男 ”と結婚するんだし。 ) ……そんな私の独り言は、流石にいきなり初対面のお客様の前では零せなくて、胸の内にだけ仕舞い込む。 ああやだやだ、今は仕事中だってのに! でもまあ、つい顔に出てしまったしょんぼりした感じ(そう自覚するくらい、なんか思いっきり眉が下がって口角も下がった)が、お客様への共感として捉えて貰えるならいっか――なんて妙な打算もこの時浮かんでしまったんだよね。 (47) 2022/10/13(Thu) 19:36:14 |
【人】 高山 智恵「そうだ、お客さん。 良かったらホットドリンクもいかがですか? 温かいもの飲んだら、多少気が紛れたりも するかもしれませんし」 アイスカフェオレのグラスの中の氷が融ける音まで聞こえるくらい落ち着いた店内で、そう提案するだけしてみる。勿論、無料サービスって訳にはいかないけれども。 ちなみに季節限定のホットドリンクでは、甘さ控えめの「黒猫のホットココア」が今はあるのだけれど、他のものを頼む頼まないのことも含めて、そこはお客様次第だ。 ところでさっきのトリプルライスのお客様と同じようなヤケ食いの提案はどうなのかって? 流石にあの量を食えという提案は、初来店のお客様に対してこちらからはしにくいな……** (48) 2022/10/13(Thu) 19:38:40 |
(a13) 2022/10/13(Thu) 19:45:07 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新