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【人】 マリィ[そうして、生まれて初めて 北の大地に降り立ったアタシの第一声───] さっむ!! てか思ってたより都会!! [空港と商業施設とホテルとが合体した 広い空港を前に、うっかり声が出てしまう。 外は晴れてはいるものの、 日の温もりなんてものは感じない。 さくさくひとりで受付まで 歩いていこうとする由人を追って はぐれないように手を繋ごうとするの。 普段の化粧も衣装もない、 ありのままの男の姿で 今アタシはあなたの隣に並んで立ってる。] (153) 2020/09/14(Mon) 11:41:31 |
【人】 マリィ[寒さから逃げるように 真っ青なレンタカーの助手席に逃げ込むと ほわ……と暖かな風が車内を温めてくれる。] チーズ作ったり、ピザ作ったりできる 工房だったっけ……? いいじゃない。暖かいもの食べたいもの。 [その提案に小さく頷くと そっと白銀の景色からの景色に 視線を向けるでしょう。 もしかしたら「旅行もやめよう」って 言われたらどうしよう、って思ってた。 だけど今この凍るように寒い場所に 由人と二人きりでいられている。] 安全運転よろしくね。 [そう言ってアタシは笑ったけど もしこのまま事故で二人とも死んでも それはそれでいい終わり方な気もして。] (154) 2020/09/14(Mon) 11:42:00 |
【人】 マリィ ー 富良野のチーズ工房 ー [ラベンダーの季節はとっくにすぎて 夏には一面紫で染まった丘陵も 今は一面の銀世界。 目的の工房はそんな真っ白な世界の中の 白樺で囲まれた林の中にあったでしよう。 絵本の中の1ページみたいな 何だか可愛いお店の中に入ってみると 正面にどどん、と等身大の牛のオブジェが お出迎えしてくれる。 ここでは手作りのチーズやアイス 釜で焼くピッツァが作れるらしく、 受付のお姉さんは男ふたりの客に 嫌な顔もしないで色々説明してくれた。] ねえ、由人ピザ作るのやってみてよ。 [そう悪戯っぽくおねだりしたら どういう反応が返ってきたかしら。 カッコイイじゃない、ピザ生地回すの。] (155) 2020/09/14(Mon) 11:42:25 |
【人】 マリィ[一緒にやろう、って言われたら なんて答えようかしら……。] 由人が作ったのが、食べたいの。 [って普段絶対言わないこと 口を滑らせちゃうかしら。 だってアタシ、普段より静かだけど 心の中はそれはもう大はしゃぎなんだもの!]* (156) 2020/09/14(Mon) 11:43:03 |
【人】 マリィはいはい、最初は怖いかもしれないけど 案外痛くも怖くもないものよ。 [困ったように笑う由人にアタシはけらりと笑ってみせるの。 旅行に来てまで何か作るの、嫌かもしれないけど 由人はそれでも、アタシのわがままを聞いてくれた。 本当は、ね。恥ずかしいから言わないけど あんたがアタシのために作ってくれたご飯が 「余り物」じゃないご飯が食べてみたかったのよ。 文句言ってたくせに、工房で他の観光客のパパに交じって 粉をこねる姿は、正直とっても様になってて ハンドトスは……まあ、ちょっと失敗してたけど 真剣に生地をこねてまあるいピザを作る姿を アタシは工房の外からじっと見ていたの。] (172) 2020/09/14(Mon) 15:55:15 |
【人】 マリィ[……なんで工房の外からかって言うと、 アタシはピザ作りに参加しなかったから。 見てるだけのつもりだったのに、受付のお姉さんに 「お連れ様が作っている間、こちらに参加してはどうですか」 ……って、半ば強制的に「バター作り」のコーナーに 移動させられてしまって。 キッズに並んで図体のデカいオネエが一人、 気が付いたら搾りたてのミルクの入った瓶を片手に 口をあんぐり、お姉さんの説明を聞く羽目になっていたの。] 10分これを振り続けるの……? [オナホサイズの小さい瓶に怪訝な視線を向けて。 そもそもバターって作れるものなんだ……とか そんな簡単に作れるなら、帰ってからも作ってみようかとか 色んな考えが頭をよぎったけれど…… ―――3分後には、全部どうでもよくなっていた。] (173) 2020/09/14(Mon) 15:55:28 |
【人】 マリィ ちょっとォ!手が!!手がもげる!! まだ出来ないの?! [アタシの悲鳴をよそに、周りのガキどもは笑い転げているし お姉さんも「まだですねー」なんてのんきに笑っている。 プラスチックの小さい瓶とはいえ、ずっと振り続けるのは 想像したよりハードなお仕事だった。 着込んだコートも熱くなったからと脱ぎ捨てて] う、うおおおおおおッッ!!! [ついでにオカマの仮面も脱ぎ捨てドス声出したら キッズのひとりが「ゴリラ!」と笑う。 うっせえっての!誰がゴリラよ! ……なんて怒鳴り返せば、笑い声が返ってくる。 ああ、でも、なんかこの空間は、嫌いじゃない。] (174) 2020/09/14(Mon) 15:55:53 |
【人】 マリィ[10分間、汗だくになって振り続けたミルクが こっくりした黄色のバターになる頃には 由人作のピザが焼きあがった頃でしょう。 こんがり焼けた小麦の匂いが、疲れた脳髄に じんと染み渡って、今にもよだれが垂れてしまいそう。] ……?二枚作ったの? [素人目に、どっちがピザ職人のものか分からなくって 何にも考えずにそう聞いちゃった。 言われてみれば、チーズピザの方が薄く均一かもしれないけれど もっちり耳のマルゲリータも、なかなか愛嬌があると思う。] ……ッ、あっつ!あは、ホント、熱い! [熱がる由人を見て、気を付けていたはずなのに 手に持った焼き立てピザは熱くて、でも一口食べると フレッシュなトマトとミルキーなチーズの香りがふんわり 舌の上で弾けるようで……] (175) 2020/09/14(Mon) 15:56:09 |
【人】 マリィうふ、ほんとだ。うンめ…… [笑みとともに自然に零れた言葉。 何かを「作る」ことの大変さを知った後だから 余計にすんなり出てきてしまったの。] (176) 2020/09/14(Mon) 15:56:33 |
【人】 マリィ[二人でピザを完食した後、さっき作ったバターを受け取った。 努力の末に出来たバターは、ココット一つ分。 じゃがバター推定2個分、パンに塗れば4、5回分くらい。 初めて作ったバターは、アタシから由人へプレゼント。 料理と違って、誰が作っても同じかもしれないけれど ……でも由人に食べてほしいって思ったの。 お店の子からのプレゼントを渡すだけじゃなくって これはちゃんと、アタシが作ったものなんだから。] これの味は、帰ってからのお楽しみってことで。 [そう言って、自宅へ送るクール便の中に 小さなココットを入れさせてもらって。] (177) 2020/09/14(Mon) 15:56:48 |
【赤】 マリィ[バターを手渡した時、ちょっと思っちゃった。 「これ食べて、由人、なんて言うのかな」なんて。 この先、生きていく気もなかったくせにね。] (*6) 2020/09/14(Mon) 15:57:00 |
【人】 マリィ[次の目的地へと滑り出す車の中、 寝ててもいい、ってサジェストには首を横に振るの。 二人きりの時間を寝て過ごしたらもったいないわ。] それより聞いてよ、さっきのバター作りの話! [口調だけは怒った感じ、そのくせ口元に笑みを浮かべて アタシはキッズの人気者になってしまった話をするでしょう。 「ゴリラねえさん」だの「ドンキーコングオネエ」だの 悪意のないあだ名をつけられて、「みて!」とせがまれるまま ひとりひとりの具合を確かめた、あの忙しいひと時のこと。] アタシ、こどもって嫌いだったの。 どう接していいかわからなかったし、 そもそも親御さん達が嫌がるだろうし、 ……欲しいって思っても、苦しくなるだけだし。 [相変わらず、車窓からの風景は真っ白。 だけれど、ぽつぽつ、遠くに人の営みが見える。] でも、さっきまでの時間は、嫌いじゃなかった。 [ふう、と吐息を吹きつけると、窓ガラスが白く曇る。 そこにハートを書きながら、アタシは小さく喉を鳴らすの。] (178) 2020/09/14(Mon) 15:59:12 |
【人】 マリィ[取り留めのない話をしながら、 アタシは描いたばかりのハートを袖口で拭ってしまう。] ステンドグラス美術館なら、さすがに こどもも少なくて見やすいかしらね。 [まだ見ぬ到着地を思い描きながら アタシは真っすぐ前を見つめる由人の横顔を 睫毛の隙間からじっと見つめていたでしょう。]* (179) 2020/09/14(Mon) 16:08:45 |
【人】 マリィ[楽しかった、って言葉に そうね、って返すくせに どっちも「また来よう」を言わないまんま。 少し歪な空気のまま、車は芸術村へ するりと滑り込むでしょう。 いよいよ日も陰り、夜の時間の近付く頃。 人影もまばらな美術館へ入れば 途端に、眩しい色彩が目を焼いた。] ………………、 [四面を取り囲むように聳え立つ 天使や聖なる御子、聖母を象ったステンドグラス。 正面にどんと構えていたのは、 磔刑に処されるキリスト像だった。] (237) 2020/09/14(Mon) 22:53:50 |
【人】 マリィ[ステンドグラスとは、識字率が低かった昔 阿呆んダラでも分かるように、聖書の内容を 噛み砕いて図にしたもの…… そう、ガイドブックに書いてあった。 アタシは神様仏様を信じてないけど 流石に聖書のあらすじくらいは知ってる。 聖母マリアから生まれたイエス・キリストは 人の咎を負って磔刑に処されるの。 聖書には、同性愛も罪のひとつとして 数えられているのも、知ってる。 隣で聴こえた吐息と正反対に、 アタシは、もう息が出来なくなった。 荘厳な雰囲気の中、死んだ目をしたキリストが じっとアタシを見下ろしている。 「美味しい」の代わりの軽口に 笑ってみせてくれる由人より厳格な 全部お見通しの顔をして。 怖い。怖い。もう、逃げ出したい。 全部かなぐり捨てて、ひれ伏して、 泣きながら地に頭を擦り付けて謝りたい。] (238) 2020/09/14(Mon) 22:54:37 |
【人】 マリィごめんなさい…… [そう呟いたのと、由人の手が アタシの手を取ったのは同時くらい。 続いて落とされる由人の呟きに 視線を彼の横顔へと移すと、 硝子越しに差し込んだ光が 彼の睫毛へ影を落としていて……] (239) 2020/09/14(Mon) 22:56:04 |
【人】 マリィ…………そう、だね。 [アタシは、由人の横顔に視線を向けたまま 漸く手を握り返せたの。 相変わらず息苦しくて 射抜くような視線を上から四方から感じてたけど 今、アタシはひとりじゃないもの。 ……情けないこの手の震えが、 由人に伝わりませんように。] (240) 2020/09/14(Mon) 22:56:21 |
【赤】 橋本 雅治[─────ああ、神様。 俺は許されたい。 あなたが許してくれなくってもいい。 地獄に落ちて焼かれたっていい。 けど、せめてこの地上で生きる間だけ この人のそばに居たいんだって この人に伝える勇気をください。] (*10) 2020/09/14(Mon) 22:56:58 |
【人】 マリィ[そうしてアール・ヌーヴォー美術館の方へ 足を運んだけれど…… 正直、「良さげなツボとか皿」以外の 感想が思い付かなくって 多分アタシはずっと黙ってたと思う。 ガイドブックの「小樽」も読めなくて 何度も由人に聞いたもの。 もう少し、頭が良くなりたかった。 ……いいえ、頭が良いとか悪いとかじゃなく もっとちゃんと勉強すれば 今日はもっと楽しかったかもしれない。 由人と暮らすまで豚肉と牛肉の違いすら 正直よく分からなかったし、 興味もそんなに持ってなかった。 もっとよく分かっていれば ちゃんと「美味しい」って言う時に 気の利いた感想が言えるかもしれない。 振り返っても、後悔ばっかり。 今更禊をしたところで 払いきれる穢れじゃないかもしれない。] (243) 2020/09/14(Mon) 22:58:19 |
【人】 マリィ[ホテルに着いた頃には 随分辺りは暗かったでしょう。 古い歴史ある造りの玄関の上に 近未来的な造形の客室がドッキングした 何だか奇妙な感じの宿だったけれど 客室温泉はあるし 海の幸溢れる夕食が絶品!とかなんとか。 でも正直、お夕飯をすぐに楽しめそうな 心持ちじゃあなくって。 通された部屋はダブル。 お行儀よく並んだふたつのベッド。 分厚いカーテンは寒さ避けのためか 全て固く閉ざされている。 アタシは手持ちのボストンバッグを、 どさり、とベッドに放り捨てると] ……ねえ、お夕飯の前に話しちゃわない? [少し、震える声で切り出した。 「どうせなら、美味しく食べたいじゃない?」 なんて笑おうとしたけど、 うまく、口角が上げられなかった。]* (244) 2020/09/14(Mon) 22:59:38 |
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