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【置】 二年生 小林 友 人魚は可哀想だ。 人間の所へなんか来たくなかったろうに。 こんな未来になるなんて 誰も思ってなかったのかもしれないけど それでも、親のエゴに振り回されて 来たくない所へ来させられて。 恋も知らず、泡にもなれず。 (L0) 2020/09/27(Sun) 21:18:10 公開: 2020/09/27(Sun) 21:20:00 |
【人】 二年生 小林 友[コバルトブルーのインクが、 薄桃の便箋の上を走る。 はっきりそこに、俺の意思として。 ……後半のポエムな感じはまあ、ともかく。 大して読み進められなかった本も この便箋のせいで読む気になれなくて 俺はそそくさと本を取って棚に閉まった。 その日は、それっきり。 ベッドに入る頃には、便箋のことより 俺は元カノの事に想いを馳せていただろう。] (52) 2020/09/27(Sun) 21:18:33 |
【人】 二年生 小林 友 ー 回想 元カノとの蜜月 ー [……………………………………………………。 …………………………………………………… …………はい、すいません、見栄張りました。 いた事ありません。 彼女とか。もうかれこれ17年ほど。 大体、野郎の青柳にも ろくに話しかけられないのに 女子相手とかホント輪をかけて無理。 無理オブ無理。多分話しかける前に泣く。 ……いいんだ、俺将来の夢、魔法使いだし。 あーあ、マジしんど。寝よ。] [〜蜜月編、完〜] (53) 2020/09/27(Sun) 21:19:46 |
【人】 二年生 小林 友[そうして翌日、あの本に挟んだメモを見に 再び図書館を訪れたのだけれど…… やはり、図書館は波を打ったように静か。 ごくり、と何となく飲んだつばきの音すら 館内に響き渡ってしまいそうなほど。 毎回このくらい静かだったらいいのに、なんて。 けれど、目的の書架に向かって歩き始めると ……なんだろ、妙な視線を感じる>>30 相も変わらず図書館は無音で、足音は一人分。 なのに、誰かにじっとつけられてるような じんわり背筋を逆撫でするような、 妙な心地が続いていたか。 もしかしたら、ここで振り向いていれば ]忍べてない忍者みたいな格好の影に ばったり出くわしてたかもしれないけど>>31 やだよだって怖いじゃん。 イジメだった時に主犯格がいても怖い。 つまり、俺には振り返るメリットが無いのだ。 (54) 2020/09/27(Sun) 21:28:42 |
【人】 二年生 小林 友[『赤いろうそくと人魚』は 相も変わらず本棚の一角に収まっていた。 いつもの通り、背表紙に手をかけて 棚から引き抜こうとしたその時───── 横合いから ズァッ! と真っ黒な影が現れて本を取る俺の手の上へと手を伸ばそうとしたのだ。] おヒ─────っ!!!! [俺は思わず悲鳴を上げて飛び退いた。 見れば、身長同じくらいの、影だけが ぬぼーっと俺の真横に立っている。 何これ、どんないじめ?祟り系いじめ? 影は物言いたげに本棚へと手を伸ばすけれど 俺はもう、正直、キャパシティオーバー。 シャカシャカと床を這いずって 出口の方へと逃げようとする。] (60) 2020/09/27(Sun) 22:08:45 |
【人】 二年生 小林 友[……もし、影の声が聞こえていたら この後の話って変わっていただろうか。 後から思えば、そうなんだけど。 でもあの時の俺は突然の怪奇現象を前に チビらんばかりにビビりあがっていた。 顔中でろでろにしながら図書館を飛び出し……] 「うわっ!……えっ、どしたトモちん!」 [そのまま、図書館の外を歩いていた青柳に 思い切り体当たりしたのだった。] あ、わ、ま、ま、ま……! か、かぎぇ、わ! [顔面蒼白、歯をガチガチ鳴らしながら 俺は今起きたことを説明しようとしたけれど 全然、言葉にできなくて。] (61) 2020/09/27(Sun) 22:10:00 |
【人】 二年生 小林 友[なんて説明すればいい。 図書館で本を借りようとしたら 突然黒い影が現れた? 本当にそれ、見間違えじゃないの? 居眠りでもしてた? 床に蹲った俺の肩をしっかり支えながら じっと顔を覗き込んでくる青柳を見ていたら パニックの波が引く毎に、 だんだん惨めさと恥ずかしさとが募ってきて 結局俺は何も答えられずに 赤い顔して、胸中の本を抱き締めるだろう。 それでも、青柳は黙って俺に着いてきてくれて その日はバスケ部の面々に囲まれながら帰った。 「いじめられてるなら、言えよ?」 「トモちんちょっと疲れてたんだよね」 「ほんとに、無理してない?」 もうどいつもこいつもほんとに、イケメンで 優しくて……俺はいっそ殺して欲しくなった。] (62) 2020/09/27(Sun) 22:10:41 |
【人】 二年生 小林 友[優しいバスケ部の面々は 最寄りの駅まで着いてきてくれた上に アイスまで奢ってくれた。 だぁれも、「ありがとう」なんか求めてなくて 最後まで俺を気遣ってくれてて…… 家に着くなり、情けなさで俺は泣いた。 その間も、バスケ部と過ごしてる間も 図書館から持ち出してしまったあの本は ずっと、俺の腕の中にいた。]* (63) 2020/09/27(Sun) 22:11:06 |
【人】 二年生 小林 友[そりゃあさ、誰も信じてくれないって。 図書館にいたら黒い影に襲われた、とか。 図書館から持ち出した本に、ダサい便箋が挟まっていて それにメッセージを書くと、ずっと俺が持ち出してても いつの間にか返信が書き込まれている、とか。 俺だって、他の誰かががそんなこと言ったって 多分、絶対信じないもん。] (111) 2020/09/28(Mon) 13:33:37 |
【人】 二年生 小林 友[最初にもらったメッセージは果たして 俺のポエムへの感想だったか、 それとも俺に倣って本の感想でも書いていたか。 どんなんでもいい。 だってそんなことより、誰かが、俺の言葉に 何かの意思を示してくれた。 正体はあの影かもしれないけど 正直、怪奇現象は俺に実害がなければオッケー。 特に殺すだの祟るだのの物騒ワードが出てこなければ 俺はまた便箋に返事を書くだろう。] (112) 2020/09/28(Mon) 13:33:50 |
【置】 二年生 小林 友 返事をくれてありがとう。 こんな走り書きに返事が来るなんて 思ってもみなかった! 君も、この本が好きなの? (L1) 2020/09/28(Mon) 13:34:41 公開: 2020/09/28(Mon) 13:35:00 |
【人】 二年生 小林 友[青いインクに声を乗せて 俺はこの便箋越しの相手と何を語るだろう。 俺がこの桐皇学院高等学校の二年生で この本が好きで読んでいたこと。 図書館へはよく放課後本を読みに来ること。 名前は……そうだ、ユウ、ということにしよう。 もしなんかお化けだったら、怖いし。 俺はペンを走らせながら ふと、自分の口角が上がっていることに気付くだろう。 物語の一頁に自分がいるみたいな不思議な感覚。] (113) 2020/09/28(Mon) 13:35:03 |
【秘】 二年生 小林 友 → 元チアリーダー 早乙女 菜月[便箋の向こう側に、誰かいるのだとしたら いったいどんな気持ちでペンを走らせているのだろう。 ……願わくば、俺と同じように このやり取りに胸を躍らせてくれていたらいい、と。]* (-84) 2020/09/28(Mon) 13:36:47 |
【秘】 元チアリーダー 早乙女 菜月 → 二年生 小林 友[コバルトブルーのペンに対して、私が選んだのはただのシャーペン。 消えるペンは持っていたけど、あれだとたくさんは書き直せないから。 だけど、何を書けばいいんだろう。紙に芯が刺さってしまったみたいに、動かない。 これがSNSの投稿だったら、返事は迷わない。最速で「イイネ!」を押して、何か一言添える。それこそ、「知性!」だけでも笑えるかもしれない。 誰かが話したら、決して邪魔にならないリアクションを添えて、次の話題につないでいく。 これまで私は、そういう繊細なバランスをとることで、アキナ達を初めとする様々な人たちと信頼関係を築いてきた気がする。 共感の表情、笑い飛ばす声、大げさなボディランゲージ。人間なんて案外単純なもので、気持ちよく喋らせることができれば、会話の中身なんか無くても気に入ってもらえる。 私は子供の時から、そういう間合いを取るのが得意だった。タイミング重視で言葉をペラペラにして、歪みがあれば調整して。 だけど、コバルトブルーには、勢いだけじゃない言葉を添えたかった。 正しい言葉だけを選び取ろうとして、何度も消しゴムをこすりつける。] (-92) 2020/09/28(Mon) 22:49:50 |
【秘】 元チアリーダー 早乙女 菜月 → 二年生 小林 友私ね、チアリーダー部だったの。 だけどもう辞めちゃった。 そしたらさ、チア部っておでこ全開じゃん? あんまりからかわれるから、前髪作っちゃった。 まだうまく使えなくて、真ん中でパカッて割れちゃうんだけどね。 辞めちゃった理由はね、 イベントは全部消えちゃうし 練習マジできついし 人が降ってくるし やっと後輩ができると思ったのに 私がいると迷惑になるし チア漬けすぎて、成績もちょっとやばかったし 家に全然いられないし (-93) 2020/09/28(Mon) 23:00:52 |
【独】 二年生 小林 友/* 同村回数より、リアルでご飯行った回数の方が多いという仲だけど、ご本人の話してるうちにぐわぁぁあーーっと情動が巡っていく感じ、多分言語化すると菜月ちゃんのこの青い匂いのする忙しなさになるんじゃないかなって。 忙しない、って悪い意味じゃなく。 私はそこ端折る傾向にあるので率直にすごいと思うの。 (-103) 2020/09/29(Tue) 0:45:07 |
【独】 二年生 小林 友/* うーんこういう灰を普段残さない悪癖が邪魔をする。 上手く言えてるか分からないけど、風景も、情動も、すごく写実的。キャラクターの目を通した世界が4Dで見れる。振動、音、匂い、水気、全部わかる。 (-104) 2020/09/29(Tue) 0:47:52 |
【人】 二年生 小林 友「いいとも、なんでもかまわない。 神様のお授けなった子供だから、 大事にして育てよう。 きっと大きくなったら、りこうな、 いい子になるに違いない」 ─────『赤いろうそくと人魚』 小川 未明 (136) 2020/09/29(Tue) 0:54:45 |
【人】 二年生 小林 友[バスケ部の面々にアイスを奢られ帰ったあの日。 家に帰るなり、出迎えた母さんは ぎょっとした顔で俺を見た。] 「やっだアンタ!目が真っ赤! なに、どしたの。」 [小太りの腹に押されてぱつぱつになった エプロンで手をふきふき、 俺の顔を覗き込もうとするものだから 俺はいやいやと首を振って逃げた。] おふくろには関係ないだろ! ……別に、なんもないったら。 [いや本当は今日は人生で一二を争う トンデモ現象に遭遇したのだけれど。 それを母さんに言ったところで 信じて貰えないだろうし……それに 心配症の母さんは多分、もっと別なことに 気をもんでいるに違いないのだ。 ほら、部屋に行こうとする俺の前を塞ぐように 視線をさ迷わせながら、忙しなく手を揉み合わせ] (137) 2020/09/29(Tue) 0:55:16 |
【人】 二年生 小林 友「…………本当に、何も無いの?」 [この、目。 慈しみ溢れるこの目を向けられると 俺はもう、何も言えなくなる。 昔っから、そう。 彼女は、自分の息子がいじめられてやしないか それを健気に心の内に留めてやしないか 心配で心配で仕方ないのだ。 安心して、母さん。 あんたの息子はいじめられてない。 今日も陽気で心優しい連中に囲まれて ソーダアイスを食ってきたところ。 あんたの息子がこんなんなのは、 いじめのせいとかじゃ、全然なくて ただ、あんたの息子がダメなだけ。] (138) 2020/09/29(Tue) 0:55:46 |
【人】 二年生 小林 友[それを、ぶちまけられたらどれだけいいか。 結局、その日も俺は沈黙を選択して 母さんを半ば突き飛ばすように自室に籠って ─────ふと、図書館から持ち出した あの本のことを思い返すんだ。] ……やっべ、手続きなんもしてね…… ………………あー、まいっか。 [どうせ日陰に生きるもの。 ここに「図書館からの無断持ち出し」の前科が 加わったところで、一体なんだというのか。 本を捲って、あのクソダs……いや、 キッチュな便箋を探すと、 それは変わらず本の間にいた、が。] (139) 2020/09/29(Tue) 0:56:17 |
【人】 二年生 小林 友[だから、返事を書いたんだ。 顔を見れば声も出ないくせに、 人かどうかも分からない相手になら こんなに嬉々として筆が取れるのかって 自分でも意外なくらい。] (141) 2020/09/29(Tue) 0:57:12 |
【置】 二年生 小林 友 へえ、タメじゃん! 図書館はいつも俺一人だったけど…… この本、他に誰も読まないと思ってた。 所謂、ハピエンものじゃないし。 俺も、絵があるのも好き。 けど、この本は写実的っていうか…… 読んでるうちに頭の中に風景が浮かぶんだ。 そう、初めてなんだ。 じゃあ……………… (L6) 2020/09/29(Tue) 0:58:13 公開: 2020/09/29(Tue) 1:00:00 |
【秘】 二年生 小林 友 → 元チアリーダー 早乙女 菜月たくさん、知って欲しい。 ひとつひとつの物語はすごく小さくて 些細なものかもしれないけれど。 そうしてこの本を読み終えた時に 「好き」って思って貰えたら、嬉しいな。 (-106) 2020/09/29(Tue) 0:58:42 |
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