【人】 花屋の主 メルーシュ>>0:61【回想】 [ ごめんくださいましー。 そう声をかけたのは、二人連れの女性たちだった。 一見して上流階級と思われる上品な装い。 声をかけた女性のワンピースのその艶やかな色合と生地のしなやかさ、花々が賞賛の吐息をつくのが聞こえた。 店内を見ても?という言葉に、メルーシュが諾と答えると、その女性はゆっくりと店の花たちを見まわした。 あなたお店の方? 此処のお花達とても幸せそうなのね! その瞳は女性が心からそう思ってくださっていることを、これでもか!というほど映し出している。 メルーシュは微笑んで控えめに頷くと、女性に丁寧にお礼をいった。 (35) 2020/09/21(Mon) 9:37:56 |
【人】 花屋の主 メルーシュ[最初は、店にやってくる人のことを注意深く見ている花たちだったが、女性たちの様子にすっかり心を許し、様々に言葉を交わし始める。 彼らは自分たちを心から求め、愛してくれる人のもとへ行くことを願っているからだ。 ふと、白いマーガレットが小さくメロディを紡ぎだした。 そう、それは歌としかいいようのないもの。 空気をふるわせ、空にとけていくもの。 まるでその声が聞こえているかのように、女性はそのきらきらと輝く瞳でその白い花を見つめていた。] (36) 2020/09/21(Mon) 9:39:23 |
【人】 花屋の主 メルーシュ[だから女性の「なにか花束を」という注文に、驚きこそすれ、否やを言うはずもなかった。 なぜなら店中の花たちが、この女性にもっと愛でてもらいたいと、メルーシュに語り掛けてくるのだから。 メルーシュは女性の希望をもとに、花たちへ相談する。 どんな花束がいいだろう。 きっと祝いたいその方が好きな色なのだろう、橙と黄色。久しぶりに妹と会い、その誕生日を祝いたいという女性。 ふたりともに喜んでもらえる花束を。 メルーシュは、他の人には聞こえない声で、花たちと言葉を交わしながら花束を仕立てていく。 橙と黄色のカレンデュラを中心に、それをしっとりとまとめるよう、春のあたたかさを秘めたグリーンと白の花を添えた。 上質なリボンとレースで包み、すっきりとしたシルエットの花束へ。 少しでも女性の思い描いた花束に近づけるよう願いながら。] 「お待たせしました、こちらでいかがでしょうか?」* (37) 2020/09/21(Mon) 9:41:18 |
花屋の主 メルーシュは、メモを貼った。 (a9) 2020/09/21(Mon) 9:44:51 |
【人】 花屋の主 メルーシュ店先を華やかに彩ると>>24、メルーシュは花束を仕立てる用意をはじめた。 コンペの行われるこの期間は、特に花束を求める人が多く訪れる。 時折はかつて祖母がそうしていたように、会場となる宮廷付近まで花を売りにいくこともあるが、それもまた店の様子次第だろう。 店は少し宮廷からは離れているが、それでも風に乗って出演者たちの奏でる音楽が微かに届いてくる。 メルーシュは、その音楽にあわせて軽やかに歌う花や緑たちと言葉を交わしながら、小ぶりな花束を仕立てていた。 丈の長い仕事着は体の線が見えずらい。 女性というにはいささか体の丸みに欠け、男性というには華奢なため、女性男性どちらとも思われることがあるが、どちらかというと女性と思われることが多い。 またどこか人慣れしておらず、客に対しても言葉少なな態度のメルーシュは、人によっては不愉快に思うこともあるはずだが、幸いにして多くの人にとって、先代の跡を継いだ口下手でちょっと風変わりな女主人、という認識であるようだった。 (58) 2020/09/21(Mon) 16:08:08 |
【人】 花屋の主 メルーシュそこへ>>37 失礼、メルーシュ嬢。 花束を一つ、頂けますか? と、時折贈り物の花束を求めに来てくれる男性からこう声をかけられたとき、ぎこちないながらも親しみを込めた笑顔で迎えたメルーシュの姿は、もしかしたら「嬢」と呼ばれたことへの、はにかみに見えたかもしれない。 ヨシュア様、承知しました。 今日はどちらへ行かれるのですか? 彼が花を贈る相手はよくわかっていたので、けっして世間話ではなく、これから屋敷に戻るまでの時間によって、花束の仕立てをかえるためのものであった。 だが人によっては不躾な質問であることを、メルーシュは気づいていないようだった。 果たして彼はどのように思ったのだろうか。]* (59) 2020/09/21(Mon) 16:10:10 |
【人】 花屋の主 メルーシュ[コンペの賑わいの中、小ぶりな花束を入れた籠を抱えて、メルーシュはまるで散歩でもするように宮廷の近くにある通りを歩いていた。 時折、花を求める客の声も聞き逃すことがあるのは、それぞれに趣向を凝らした花束の花たちが、聞こえてくる音楽に合わせて、それはそれは幸せそうに歌を歌っているから。 しんと静まり返った聴衆の気配の中、その声が、旋律が、風に溶けていくように響いた少女の歌声。 そしてそのあとの、ひときわ大きなざわめき。 庭園の外にいても聞こえた。 それは紛れもなく、自分の内なる声と響きあう音楽だった。 メルーシュはただただしあわせだった。] (うん、わたしはやっぱりこの国が好き) (291) 2020/09/23(Wed) 22:09:30 |
【人】 花屋の主 メルーシュ[コンペに参加することまではできなくても、通りや街角の様々な場所で、歌や楽器の奏でる音楽が聞こえている。 メルーシュは、咲き乱れる花の間をひらひらと舞う蝶のような軽やかさで、宮廷の出口付近の通りを歩いていた。 丈の長いくすんだ色合いの作業着は、音楽祭にふさわしい華やかな街並みの中ではすこし地味にみえるかもしれない。だけど腕に抱えた籠いっぱいの彩とりどりの花は、もしかしたら宮廷から出てくる出演者の人々の目にとまることもあったかもしれない。]* (295) 2020/09/23(Wed) 22:24:36 |
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