【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 標本室。色とりどりの虫、動物の剥製、あらゆる生命を人間のエゴで綺麗な見目のまま保存している部屋の中を、突き進む人影が二人分。 「入り口までは来ていたんですけど、その時は巡回中の職員と鉢合わせそうになっちゃって。だから調べられずにいたんですよー。こちらとしても助かりました」 ありがとうございます、と目を細める。 ホルマリン漬けの不自由な生き物を尻目に青年は自由気ままに歩き回り、目的を果たすべく忙しそうに視線を泳がせた。 「やっぱり怪しいのは戸棚とかでしょうか。俺は向こうの棚を調べてきますね」 少し離れた場所を指差した。 ここまで、全くもって調子が変わらない。 何に対しても好奇心旺盛であるし、あなたに対しても人懐こい。怯えた様子はなく、そしてそれは敵対する者である職員と鉢合わせても変化がなかったと思ってもいいだろう。 貴方には、この青年がどのように映っているだろうか。 変わるとしたら、それは見たいものが見れなくなった時だ。 (-28) 2022/06/04(Sat) 4:43:12 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 篝屋 「はい!叶さん、とても良い人ですね! 臆病ではありますが、それでも前に進むために……目的を果たすために頑張って探索などしていますもん! 篝屋さんは叶さんのどういうところが好きですか?」 ワクワクのドキドキ。そわそわしながら尋ねてみる。 「え?いや、うーん。俺の力は人の位置を知り、音を聞くことは可能ですけど……こうして人と話すのは出来なかったんですよね。 光かぁ〜。真っ暗だし、正直これ足を動かしている感覚とかもまるきり無いんですけど……ちょっと頑張ってみますね!」 「いいですね!せっかくの機会ですもん、お話しましょう!俺篝屋さんのこと聞きたいです! 好きな食べ物と趣味と将来の夢はなんですか?」 例えに出したものをそっくりそのまま出してきた。安直? (-29) 2022/06/04(Sat) 4:49:06 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 棚の引き出しを漁る。 一段目。ラベルの余りの山や、ペンが散乱している。 二段目。手に納まるサイズの小さな空き瓶だとか、プラスチック板。その奥に何かの小さな鍵。 「……鍵?」 手に取ってまじまじと見つめる。何処のものだろう。形状からある程度推測しようと思考を巡らせて…… 巡らせていたから、すぐそばで膨れ上がった異質な気配に気付くのに一歩遅れてしまった。 ▽ (-33) 2022/06/04(Sat) 11:48:34 |
【独】 民俗学 ユウキ「──ぇ」 異常な気配に驚いて、口から意味を成さない言葉を溢したのとほぼ同時。 青年の方を振り向いた拍子に、何か眩しいものが煌めいたかと思えば。 どん、と勢いよく何かがぶつかってきた衝撃。 ぶつん、と。服の、肉の、あらゆる繊維がちぎれた感覚がした。 何が起きたか理解するよりも早く、続けざまに体を掴まれ押し広げられる。 「ひッ、ぎ……、ぁああ゛ぁッ!ぁ、あ、あ゛」 鋭い痛み。焼けるような熱さ。肉体が知らせる異常事態に、反射的に喉から悲鳴が絞り出される。 痛い痛い痛い痛い痛い。 ただそれだけしか頭になくて。それ以外考えられなくて。 強烈な信号に焼かれた思考がまともに働くには、幾ばくかの時間を要した。 ▽ (-34) 2022/06/04(Sat) 11:49:42 |
【独】 民俗学 ユウキ「は、はぁッ、なん、なん……で……ぇ……? かなっ、叶さん……?なんで?どうし、てぇ……?」 浅い呼吸を繰り返しながら、漸く意味を成す音を紡ぐ。 普段であれば、貴方のその力に。貴方の進化に頬を朱に染めて喜ぶところだった。 けれど突然齎された痛みと熱が頭の中をかき混ぜて。 痛みを止めようとまともに働かない頭は無機質に覆われた貴方の手をどかそうと考えて、不躾に触れようと腕を持ち上げる。 そのまま、ただ、自然と浮かぶ涙を湛えたまま子供のように拙い口調で何度も理由を求めた。 (-35) 2022/06/04(Sat) 11:52:56 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 裂かれた皮膚を中心に体がじくじくと不快な熱を帯び始めている。申し訳程度の鈍いような痺れが後を追いかけるようにやって来ているのは、アドレナリンが体を侵し始めているからだろうか。 それでも透明な牙が肉の奥を更に突き進めば誤魔化しきれない痛みが青年を駆り立て、絶叫を上げさせる。 「い゛っ……、ぎ、ぁ、ゔあぁあ……ッ!」 たたらを踏み、たまらず背中から床に倒れ込む。受け身もまともに取れないまま地面とぶつかったのだから相応に衝撃が背中を襲うが、今もなお噛みつき続ける凶刃の痛みに比べたら可愛く思えてくる。 ▽ (-46) 2022/06/04(Sat) 19:26:28 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 逃れたい一心で身を捩りながら、けれど明確な殺意は肉体に噛みついたまま。 目の前で吠えるように弁明する貴方の話を必死に拾い上げる。 頭の中でどくどくと血液が巡る音がやけに煩いし、浅い呼吸もやけに響く。ぎち、と肉を食い破り神経を傷つけているだろう刃は耐え難いほどの苦痛を文字通り刻んでくるけれど、それでも必死で散らばろうとする音の羅列を、言葉の意味を捉えていく。 そうじゃなければ何の為に大人しくしているんだ。 「……は、はっ、そっ……か。なるほ、ど。 こわい、んですね。安全が、欲しいんですね」 「だからあの職員を殺し、そして僕も殺すんですね」 「必要だから」 「平気で」 事実を確認するように告げる。 青年は職員を襲った時、予定では昏倒させるつもりだった。報復の可能性があったにせよ、殺すつもりなんて初めからなかった。 そして今に至るまで、貴方に対して殺意など微塵も抱いていない。……こうして攻撃されても、尚。 ──箍が外れ、実際に人を手にかけてしまったのは、取り返しのつかないことをしているのは、 いったい誰なのか。 ▽ (-47) 2022/06/04(Sat) 19:27:24 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 息をするたびに体が揺れて、その都度肉がガラスに食い込むような気がして。呼吸を行うごとに痛みが増したような気がするけれど。 「は、っはは。ふふ、ふふふふ、ふふふふふ……」 脂汗を滲ませながらも、青年は口元を笑みの形に歪めた。 貴方の安寧を乱す要因であろう、わらいごえをこぼした。 「そ、りゃあ……勿論、苦しいし、怯えもします、よ。生命の危機に、本能が発する信号に……そこから湧き上がる感情に、抗うことは難しい、です……」 それでも青年は、わらう。 「だから今、も。死にたくないって、体はさけんで、います……血がどくどく、って……流れるところは……熱い、のに。体の奥が、だんだん、さむくて、震えそうで……歯の根が、合わなくなりそうなんです、よ」 「でも、でも……ね、叶、さん」 ▽ (-48) 2022/06/04(Sat) 19:28:17 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 「本能に抗ってでも、俺は、 貴方に殺されても、いいって、思っているんです」 「それ……が、貴方に必要なこと、なら。 貴方が、前に、すすめる……なら。 人が、進化を、止めずにいられる……なら。 俺は、喜んで……礎に、なります、よ」 貴方に必要なものなら、 貴方が停滞しないなら、 貴方が進化を続けるのなら、 例えそれが悪や罪だと断じられる所業でも。 褒めて、肯定するのだ。 だって、人間ってそういう生き物じゃないですか。昔から。 己の為なら、未来の為なら、どれだけ惨たらしいことだって出来る生き物じゃないですか。 貴方の手の汚れなど、今まで人の歴史が積み上げてきた罪禍と比べたら。 かわいいものですよ。 (-49) 2022/06/04(Sat) 19:28:58 |
【独】 民俗学 ユウキ>> 秘話 篝屋 「小動物〜〜〜わかる〜〜〜。 あれですよね、全然懐いてくれないタイプのネズミ!」 貶してる?(褒めています) 「そうですね、環境は似ているんですけど……いったいどうしてだろう……? まあ何はともあれ、篝屋さんがこうして話しかけてきてくれて嬉しかったです!」 なんだか幻覚で犬の耳と尻尾が見えてきそうな、無邪気な声。 「へ〜。なんていうか、見た目に反してバリバリ理系インテリ系って感じですね!体育会系だと思ってました!製薬会社ってことはダート製薬に勤める未来もありえたんですかね? 俺の番ですか!俺はですね〜 好きな食べ物は栄養補助食品のチョコレート味! 趣味は人間観察で、あとはフィールドワークとかも楽しくて好きですよ! 将来の夢は〜人間の進化を目の当たりにすることです!以上です!よろしくお願いしまーす!」 合コンかな? (-61) 2022/06/04(Sat) 21:42:55 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 「そう、ですね……知りません。叶さんのこと、は……知らないこと、ばかり……です。 ここに来て、俺が見てきた分の貴方なら、知りましたとも」 恐ろしいものに怯えていて。 それから逃げることに必死で。 安全の為ならば、人を害する一線を踏み越える……或いは踏み外してしまう。 引き抜かれたガラスを見た。 ぬらりと光るそれをぼんやりと見つめながら、破れ裂かれた空洞から自分の体を巡っていた血がとめどなく溢れ流れていく感覚を味わっていた。 まっさらな白衣が穢されていく。 「同じ?違う? 何、も、同じだ、なんて……一言も言っていませんよ。貴方が、俺と同じなら……こん、な、手間を惜しまず命を削ってまで協力や許容なんて、するはずがない」 煌めく透明を見上げた。けれどそれはすぐに興味をなくし、青年の視線は貴方の顔へ。 「……でも、ふふ、おか、し、いな……。 平気じゃない?……ふ、ふふ。ご冗談を。 どれだけ嫌でも、怖くても、」 「人を殺すことは躊躇わないじゃないですか」 特に自分を殺すことなんて。 はじめから殺すために、呼び出したのだろう? 線を踏み越えることは容易く行っているじゃないか。 沢山沢山、免罪符を並べて積み上げて。 それらを踏み台にして、躊躇なく。 (-72) 2022/06/04(Sat) 23:55:34 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 「ッ、あ゛ぁあぁああっ!!!」 中身の詰まった腹部に突き立てられる。 笑い声は霧散して、掠れた絶叫と共に青年の体が弓なりにしなった。 中を掻き分け蹂躙されれば、かろうじて手放さずにいた冷静さも呆気なく崩れ見る影もなく壊れていく。 「あ゛、ぐッ……ぁ、ぎっ……かな、叶、さ……!」 奥へ奥へと爪がねじ込まれるほど体は逃げ出そうと痙攣を繰り返し、細く長い手足はもがくようにばたついた。 衣摺れの音と自分の悲鳴の合間から聞こえる叶の糾弾はどこか遠くで放たれているように聞こえてならない。 ──どうせお前がここで死ぬことに意味なんか無い。 それだけは、聞こえた。 「かッ……ぃ゛、さん……、ぇ、そ……れ、……そ、れ……な、ら…………」 貴方はどうして意味の無い行為を必死にやろうとしている? 言葉を紡ごうとして、けれどそれはひっきりなしに上がる悲鳴に塗りつぶされて消えてしまった。 確かに結木の話はあまりに自分勝手、ただの自己満足だ。貴方が青年の死に意味を見出さないのなら、貴方にとっては何の価値もない。 けれど、貴方にとっても本当に何の意味もないのなら。殺す必要すらも無かったはずだ。 ▽ (-73) 2022/06/04(Sat) 23:56:11 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 「あ゛、あ゛ぎっ、ぃ、痛」 にちゃにちゃと水音が聞こえる。 時折ぶちりと何かが千切れた気がした。内臓の何かがもう使い物にならなくなったのだろう。 「血が、とま、ら……な……」 ごり、と硬い感触が己の中で響いた。 骨が響いて、体が陸に打ち上げられた魚のように無意味に跳ねる。 「かな、……ぃ゛、さ……っ……ぁ゛、あ、あっあっ」 こわれていく。 あたまも、からだも。 つきこまれて、かきまわされて。 ………… ……………… ▽ (-74) 2022/06/04(Sat) 23:57:14 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 どれくらい経っただろう。 「……、…………ぁ、…………」 もはや息もしているか怪しいほど反応が小さくなった頃。 貴方を捉えているのかいないのか、涙や汗でどろどろになった青年の瞳が時折ぶれるように揺れながら貴方を見上げている……ように見える。 「…………か…………、ぃ、さ…………」 いったいどこにそんな力があったというのだろう。 右手が、すっかり血の気を失った指が、縋るように貴方の左手に伸ばされた。其方はガラスを纏っているだろうか。 「……………………」 唇が震えている。 "ごめんなさい"?"かないさん"? 果たしてそれは本当に言葉を紡ぐための動きだろうか。音になっていないなら、それは誰にも分かりやしない。 (-75) 2022/06/04(Sat) 23:57:57 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 「…………、……ぅ……」 微かに、ほんの微かに口角が上がった。 答えが返ってこなければそれは側から見ればただの決めつけに見えるだろう。 けれど。 貴方が見ても見ていなくても、青年は確かに答えを返した。 ご明察。 俺が好きなのは、俺が惹かれるのは、進化を続ける人類であって、けれど本質は変わらぬ愚かな種であって。 個人の細かな差異など問題では無いんだ。 音が喉から出ずとも、笑うようにまだ少しだけ熱を含む息を少しだけ吐き出した。 きっと、いや、確実に分からない。 貴方という、ただ平穏な夢を見続けていれば真に狂人にならずに済んだ哀れな人間のことを。 貴方がどうしても逃れたい、耐え難き恐怖のことを。 それもまたある種の興味を惹かれる観察対象の特徴としか見られないのだから。 ▽ (-90) 2022/06/05(Sun) 3:29:52 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 "貴方である必要は無い"。 霞む意識の中で確かに拾った。 「……、……、ふ……」 笑い声にも似た吐息が溢れた。 自分個人に特別な意味を持って欲しい訳ではないのだから、無問題だ。 あまり価値が無いままもう観察する時間が失われるというのは非常に残念だが。 進化は日々の積み重ね。 自分を障害の一つとして、欠片でも何かの糧になって。 貴方が変化してくれればいい。 ……だから。 ▽ (-92) 2022/06/05(Sun) 3:30:44 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 「……じゃ、ぁ」 いったい、どこにそんな力が残っていたというのだろう。 己のすぐそばにあった、無防備な左手を。 あらん限りの力を持って掴み、たった今貴方が壊し尽くしてぐちゃぐちゃになった腹部の中へと引き摺り込もうとする。 「おれだからやることを、しま、す」 言葉を吐いた拍子にごぽりと口から赤が流れた。 それでも、貴方の目の前に在るきょうふはわらっている。 今の貴方は錯乱こそしているものの、怪我をしているわけじゃない。 けれど、もう虫の息であった人間とは思えない力で左手を掴もうとしている。 振り払えこそするが、それなりに力を込めなければならないだろう。 (-93) 2022/06/05(Sun) 3:31:38 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 篝屋 「とんでもない!喜びこそすれ、気を悪くするなんてあり得ませんよ。 勉強が出来るって良いですね、物事を色んな観点から見ることができて新たな発見ができる可能性が広がりますから。 それは大変ですね〜。どうして薬の研究が好きになったんでしょう?」 「そりゃあこんな緊急事態に巻き込まれたらびっくりもしちゃいますね。 他の人は怖いとか感じていますが、篝屋さんはどう思いますか?この人体実験とか、おぞましい生物について。 俺の言う『人の進化』はですね〜種類問いません。それこそ、篝屋さんの言う腕が3本になるでも頭にチップ入れられるようになるでも構いません。 技術、文明、能力……どのような方向性であれ、新しい何かをものにすることを指します」 (-99) 2022/06/05(Sun) 5:15:03 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 結木理流は狂人だ。 倫理道徳を知識として獲得し、内容を理解しておきながら己の願いの為であれば一線を越えることも躊躇わない。 それでも今に至るまで人の敷いた法に触れず、人間社会に溶け込めていたのは彼の抱える歪みを発露するほどの出来事が無かったから。 正気のまま狂気を抱き続けた。 結局のところ叶西路も結木理流も、この状況が起爆剤となり人の道を踏み外してしまった運の悪い人間だったのかもしれない。 ▽ (-122) 2022/06/05(Sun) 19:44:38 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 叶 異なる歪み。異なる狂気。 恐らくいくら話し合ったところで二人の意思、価値観が交わることなどない。 理解できることなど、到底無い。 「ふ、ふふ。ふ、えへへ。ぁは」 「あははははは!」 結木理流は正常だ。 結木理流は異常だ。 だから、正常に異常に、 貴方に、人間に、欲しいものを要求し続ける。 ▽ (-123) 2022/06/05(Sun) 19:45:25 |
【独】 民俗学 ユウキ「ぁ゛はっ、えへ、あはははは!」 笑うたびに赤が床を、衣服を、空気を汚した。 二人分の手は招かれるように抵抗なく未だ温かな腹部に沈んでいって、そのぬめりと熱で肌を覆われていく。 青年の形をした狂気が笑って揺れて、跳ねるたびに、呼応するように肉の中も蠢いた。 時折、指先は硬い何かを引っ掻いた。骨だろうか。ぶよぶよとしたものの中に爪が沈む。何処の臓器だろう。 「かんじてください!おぼえてください! おれのねつを、おれ のいのちを! もうあなたがわすれないようにっ、 もうあなたがにげられないように! もうあなたがまえにしかすすめないように!」 脳に、記憶に、細胞に。 刻み込むように絶叫する。 もうずたずたになった己の肉や臓器、神経が上げる断末魔すら脳に届かなくなっていた。 「あゆみをとめるなんてゆるさない! そうしてあなたは、ひとはへんかし、しんかする! おれはっ、それがみたい!みたいんですよ、おろかでいとしいひとのかのうせい── を 」▽ (-125) 2022/06/05(Sun) 19:47:12 |
【独】 民俗学 ユウキバン! ガラスが弾け飛ぶ。 貴方を捕まえてわらうきょうふが、避けられる道理もなく。 ぶち撒けられる全てを浴びた。 破片も、恐怖も、嫌悪も、何もかも。 「──ぁ」 同じくつられるように弾け、崩壊したように。 青年は呆気なく言葉を失い、貴方の手を掴んでいた手はずるりと地へ落ちた。 いとも容易く事切れて、先程までの狂気は夢だったのではないかと思うほどの静寂が訪れる。 けれど貴方の手を汚す血のぬめりが、空間に満ちるいきものの臭いが、辺りに散らばるガラスの破片が、これは夢でないという事実を貴方に叩きつける。 逃れられない現実が、貴方をずっと包み込んでいた。 (-126) 2022/06/05(Sun) 19:47:40 |
【独】 民俗学 ユウキ>>秘話 篝屋 「うわぁ〜凄い。さらっと言っていますけど、かなりとんでもないですね〜! でも俺そう言う向上心ある人大好きですよ!想像を絶する難しさだと思いますが、実現したらそれって間違いなく大きな進化ですもん!」 誰にでも効く薬ときた。その意味の途方もない重さを想像し、ひええと驚きを隠さない声をこぼした。 「わ〜!一緒です!怖いと言うより、気になるんですよね俺!何故このようなことになっているのか! はえ〜そうなんですね。 外国って結構アグレッシブなんですね〜。日本が奥手なだけでしょうか? 何はともあれ、篝屋さんが協力的なのは嬉しいです!早く合流して調査したいんですけどー……本当に俺、ここどうやったら抜け出せるんでしょう……?」 困ったような様子だった。体があるのかすらも分からない状態だったが、もし感覚があったなら首をこてんと傾げていたことだろう。 (-177) 2022/06/06(Mon) 4:00:36 |
ユウキは、メモを貼った。 (c5) 2022/06/06(Mon) 4:03:44 |
ユウキは、メモを貼った。 (c6) 2022/06/06(Mon) 4:04:03 |
ユウキは、メモを貼った。 (c7) 2022/06/06(Mon) 4:04:33 |
ユウキは、メモを貼った。 (c8) 2022/06/06(Mon) 4:05:13 |
【墓】 妄執 ユウキとある誰かの声がして、真っ暗闇をもがくように進んで。 この終わりでは足りないと、叫んで気付けば視界が開けた。 「──。おれ、は。確か……」 それまで自分は何していたかと、ぼやけた頭のまま記憶を振り返ったが最後。 悲鳴と、笑い声と、断末魔。 絶え間なく続く痛み。逃れられない苦しみ。 誰かと会話をした時には思い出せなかった死際の時間が、押し潰さんばかりに迫ってくる。 「──。ぅ゛、え゛ッ……」 体を折り曲げ血の海に膝をつく。激しい咳を一つ。その拍子に体のどこかからびしゃりと赤い液体と柔らかな何かの肉片が地に落ちた。 事切れるまでに受けたものが未だ体の中にあるようで。頭と胴の内側がぐるぐるする。視界がちかちかと明滅して、自分と同じ色の笑い声が耳の奥で鳴り続ける。 「……、ふ、ぅ……あぁ……こぼれちゃう……」 腹部に手を当てながら、緩慢な動作で歩を進める。 「見な……きゃ、聞かなきゃ。 見たいことが、聞きたいことが、あっ……たんだ。 ……でも、なんだっけ、なにを、見て、聞くんだっけ」 探さなきゃ。探さなきゃ。 ──目を瞑る。声を聞く。息遣いを探す。 おかしいな、でも何を探すんだったかな。 おかしいな、誰を探すんだったかな。 (+12) 2022/06/06(Mon) 5:07:34 |
妄執 ユウキは、メモを貼った。 (c9) 2022/06/06(Mon) 5:16:45 |
【墓】 妄執 ユウキ「……誰の、声だっけ、これは」 元々、視覚には作用しない力だった。 今となってはあまりに不安定で、或いは壊れた頭で判断できなくなっていて、拾った声が誰のものかも判別がついていない。 力を使うのを止めて瞼を持ち上げた瞬間、ぐんにゃりと視界が歪んで体が傾いた。 この肉体は、ずっと刻まれた死の痛みに震え続けている。 「みなきゃ、きかなきゃ、いかなくちゃ」 死んだはずの頭の中にあるのは一つの意思。純化したそれしか残っていない。 「……ふ、ふふ。えへへ、ぁは、夢なのかな、でも、夢みたいじゃない?でも、夢であってほしくないなあ」 それは延長線上の狂気。既に迎えた終わりを踏み躙る執念。 凄惨な傷跡が残る脳と肉体を、意思ひとつで引き摺り回してそれは進んでいく。 廊下の奥へと、消えて行く。 子供のような笑い声が響いていた。 (+13) 2022/06/06(Mon) 5:36:56 |
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