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【人】 女子大生 マユミ[ 抱きしめられれば、体は震え。 唇を寄せられれば、涙が滲んだ。 そんなに近づかれたら―――…… 見破られてしまう! ] (61) 2022/06/12(Sun) 19:26:04 |
【人】 女子大生 マユミ[ 何度もエデンにアップロードされた、 真結実の幸福体験を味わった。 本当に、本当に幸せで。 羨ましかった、 妬ましい程に。 ] (62) 2022/06/12(Sun) 19:26:45 |
【人】 女子大生 マユミ[ けれど実際同じ幸せを現実で喰んでみれば、 同じものであることを疑ってしまう程、 味わいが異なる。 だって、現実で幸せを享受するには、 その幸せを掴み取れるだけの"価値"がなくてはいけない。 イケメンの彼氏に見合う、イイ女でなければいけない。 皆に慕われるほどの、徳がなければいけない。 それを持たない人間が手にすれば、 分不相応な幸福は 薬 から毒 に変わる。見限られ失う怖さだけが、舌に残った。 ] (63) 2022/06/12(Sun) 19:28:05 |
【人】 女子大生 マユミ[ 私は一度も幸福体験を、 エデンにアップロードしたことがない。 真結実は生きていた頃、定期的に投稿していたのに。 それは、"今の真結実"が幸せでない何よりの証拠。 ] (64) 2022/06/12(Sun) 19:28:43 |
【人】 女子大生 マユミ[ 毒 を食らわば皿まで。You might as well be hung for a sheep as for a lamb. ] (66) 2022/06/12(Sun) 19:29:50 |
【人】 女子大生 マユミ[ 現実と仮想の境目が曖昧になるほど、私は過食を続けた。 幸せになる事って、 実はそんなに難しい事ではないのでは? ただ耳から流れ込む多幸感の海に、耽溺するだけでいい。 現実で幸せを掴もうとするより、 ずっとずっと確実で効率がいい。 私にだって、簡単に出来てしまうじゃない! ] (67) 2022/06/12(Sun) 19:30:39 |
【人】 女子大生 マユミ[ 寝食を忘れて、ただただ耳だけを傾けた。 邪魔をされるしうるさいから、 スマホの通知機能をオフにした。 もう私には不都合は見えない。 ] (68) 2022/06/12(Sun) 19:31:12 |
【人】 女子大生 マユミ[ とは言え、今の私は実家で生活している身。 家族が当然その異変に気付いた。 ろくに食事もしなければ、自室から出てくることも 少なくなった娘からスマホを取り上げて、 「兎に角、病院に行きなさい!」と母が一喝。 口答えするのも億劫で、適当な服に着替えた。 意識はしていなかったけど、 真結実なら絶対に選ばない暗い色の服ばかり。 本当はメイクも面倒だったのだけれど、 流石にすっぴんでの外出は躊躇われた。 ファンデーションにフェイスパウダーを重ね、 雑にチークをはたいて色付きのリップを塗った。 目の下のクマもコンシーラーなど使う事無く放置。 先生に貰ったペアチケット、そのままだったな……。 そう思って、チケットをバッグの中に忍ばせた。 私は使わないから、返した方がいいかもしれない。 ] (69) 2022/06/12(Sun) 19:32:12 |
【人】 女子大生 マユミ[ 受付では、一瞬びっくりされたようだった。 それが、死んだ姉の様だったからなのか、 生き残った妹らしくなかったからなのかは分からない。 診察を待つ間、 ついバッグの中にスマホを探してしまうけれど、 スマホは取り上げられたままだった。 ……落ち着かない。 玩具を取り上げられた子供のように、母を疎んだ。 やがて名前が呼ばれれば、診察室へ。 ] ―――――……。 [ 濁ったように虚ろな瞳が捉えた相手に、 かける言葉を今の私は持たなかった。 ]** (70) 2022/06/12(Sun) 19:33:07 |
【独】 会社員 ツグアキ/* 体調を崩しておりましてですね ご挨拶すらしておらず大変にご無礼を致しております この度は村建て様とペアを組んでいただけてほんとに幸せです ありがとうございます! あのねほんとに直近のカナちゃんが天才 (-19) 2022/06/12(Sun) 22:00:48 |
【人】 医者 サキ[ 今日も変わりなく、時間が過ぎていた。 お大事に 、と何万と言ってきたフレーズをまた1つ積み重ねる、日常。 そんな日常に薄くヒビが入ったのは、 次のカルテを持ってきた看護師が どうにも落ち着かない様子を見せたその時だった。 ] (71) 2022/06/12(Sun) 23:08:07 |
【人】 医者 サキそうしたら次の方を───… 何かありました? [ 尋ねれば、 「船越さんの娘さんなんですけど…」 と歯切れ悪くカルテを渡される。 船越真結実。ここ半年見てきた名だ。 半年前、久しぶりに持ってきた時だって こんなに驚いた様子はなかったのに。 …驚いているのは、それだけの何かがあったのか? 考えを纏めるのが精一杯、深く尋ねている暇はなく。 呼んできますと言って看護師は待合室へ出ていった。 少しして、入ってきた彼女の姿を見て。 俺は思わず、持っていたペンを床へと落とした。 ] (72) 2022/06/12(Sun) 23:09:49 |
【人】 医者 サキ ……っ ッ、! [ 形だけはこちらを向いているのに、 まるで掴めない遠くの何かを 見ているような、 虚 ろいの瞳。 しばらく、言葉が出なかった。 言葉になり損ねたものが なんで、 喉奥でつっかかって、押し返されて、 胃の腑に帰っていく。 どうして、 カラカラと、落ちたペンの回転する音が 虚しく時の進みを知らせていた。 ───俺はその瞳を、知っている。 同じだ。 …10年以上前、嫌という程見せつけられたそれと。 ] (73) 2022/06/12(Sun) 23:11:37 |
【人】 医者 サキ…とりあえず、こっちおいで。 座りな、…ね。 [ ただ手招きすればいい距離だというのに どことなく落ち着かなくて、立ち上がって。 この歳の子に話すには随分と幼い言葉を向けた。 歩く様子が無ければ近づいて誘導したけれど、 とにかく椅子につくまでは その様子をじわりと滲む目で見守って。 ] (74) 2022/06/12(Sun) 23:12:54 |
【人】 医者 サキ[ ───色濃い隈、…食欲不振か。 化粧で顔色は多少誤魔化せても、 若干痩けた顔の形までは隠しきれていない。 ……でも、内科の仕事じゃ、ないだろうな。 もし、この子の病気がOS*なら。 精神科…心療内科の仕事だ。 手が震える。声も。 俺の管轄じゃないと分かっているのに、 身近な人間であるという情が。 助けられるんじゃないかと、淡い希望が。 …見捨てられない。 ] (75) 2022/06/12(Sun) 23:15:10 |
【人】 医者 サキ……色々と聞きたいことはある、けど。 先に1つ、聞かせてほしいんだ 君は、……… "船越真結実"で、間違いないか? [ じ、と虚ろな瞳に焦点を合わせ、 あくまで、柔らかく。 震えている以外は、優しい声で、尋ねる。 これからの何もかもを、 分けてしまうのはきっとここだ。 ]** (76) 2022/06/12(Sun) 23:16:14 |
医者 サキは、メモを貼った。 (a2) 2022/06/12(Sun) 23:18:04 |
【人】 会社員 ツグアキ[ もう、今更どうでもいいのだけれど。 どうせ研究するなら、対象を 脳にすればよかったとだけはつくづく思う。 忘れたいことを綺麗さっぱり消し去るような 奇跡の仕組みがあれば 脳に血糊の手型がべっとり張り付いて 離れないこの靄に 覆われることもなかっただろうに。 ] (77) 2022/06/13(Mon) 13:46:12 |
【人】 会社員 ツグアキ[ 結論から言えば俺の論文の出来は かなりよろしく、ぱっとしない後継の 箔付にぴったりだと見染められたと いうだけの話。 今思い出しても笑いが止まらない。 それは取引、などという対等なものではなく 強要、恫喝、脅迫を、 礼儀正しい体裁と言葉で包みかくした 結論ありきの交渉だった。 なんのことはない。 俺は多額の金と引き換えに 未来とプライドを売り渡した、 売り渡さざるを得なかった、だけの話。 ] (78) 2022/06/13(Mon) 13:46:56 |
【人】 会社員 ツグアキ─── 光の丘診療所 [ 病院の名前は知識としては知っている。 Override Syndromeという病状も知ってはいる。 だからこそ俺が今この病院の待合室に 座っていることだけがひどい違和感。 落ち着かない気持ちを無理矢理 落ち着かせるように柔らかな椅子に背を預け 持ってきた本を開く。 変わらぬ穏やかな表情のまま 口角の位置はゆるやかに弧を描いている。 ただ、ページを捲る指先は小刻みに震える。 ] (80) 2022/06/13(Mon) 13:51:45 |
【人】 会社員 ツグアキ蟾蜍。 それが、自分だ。 世間がゆるすも、ゆるさぬもない。 葬むるも、葬むらぬもない。 自分は、犬よりも猫よりも劣等な動物なのだ。 蟾蜍。 のそのそ動いているだけだ。 (81) 2022/06/13(Mon) 13:52:38 |
【念】 会社員 ツグアキ[ 開いた扉に向かう。 背筋は伸ばして、整えた穏やかな笑みで、 真っ直ぐに足を運んでいるつもりだけれど 診察室までの数歩がやや遠い。 床がぐにゃりと歪んでいるような錯覚に 二、三度足を止めながら、 迎え入れてくれる医師の前に立つ。 ] こんにちは。 [ あくまでにこやかに、声音も穏やかに 軽く頭を下げれば、医師の顔を見られただろうか。 ぼんやりと靄がかかる頭の中、 ちかちかと何かが瞬くのがわかる。 ] (!2) 2022/06/13(Mon) 13:55:57 |
【念】 会社員 ツグアキこんにちは。 こん、………… [ 医師の顔を訝しげに、虚に見つめながら 挨拶を繰り返す。 無意識に手が、イヤホンを探していた。 ]** (!4) 2022/06/13(Mon) 13:58:20 |
女子大生 マユミは、メモを貼った。 (a3) 2022/06/13(Mon) 18:37:13 |
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