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【人】 口に金貨を ルチアーノからん、と靴の先で何かを蹴った軽い音がする。 繊細なグラスに罅が入ったそれは、何の変哲もない眼鏡であった。 裏路地をただいつものように歩いていた男は首を傾げつつも、 それを上着のポケットに入れてそのまま先へと歩んでいった。 「……、何かいるなあ」 漂ってくるのは慣れない鉄の香りだった。 鼻が利く犬でなくとも想像できてしまう程の量が流れていることがわかる。 すえた匂いはしない、まだ時間があまり経っていないのだろうか。 さらに足を向ける。 ここは自分のシマの傍だから、治安は正しく守っていかねばならないと。 #AbbaiareAllaLuna (92) toumi_ 2023/09/30(Sat) 7:53:53 |
【独】 口に金貨を ルチアーノ「ああ」 目に入った赤。ついでに白と黒。最近よく縁がある配色だ。 この眼鏡もその男の持ち物であったな、と漸く思い当たった。 男の持ち物など覚えて居られなかったから、少しすっきりしたような気持ちになる。 「そうか、お前さんかあ。イレネオ・デ・マリア」 それは酷く冷静で、まるで笑みを携えるような穏やかな声で。 暫く他人事のようにその死体を見つめていれば片手で携帯を取り出し連絡をする。 『……ラウルだな? ゴミが落ちてるんで片づけに来てくれ。 ああ、絶対誰にも見つからん場所に片づけろ』 その言葉に、同情も憐憫も慈しみの欠片もありはしない。 誰かの縁も絆も配慮する心も用意などはしていなかった。 #AbbaiareAllaLuna (-284) toumi_ 2023/09/30(Sat) 7:55:40 |
【独】 口に金貨を ルチアーノ「さて、……酷い有様だ、右手はぐっちゃぐちゃだな。 誰がやったんだ? 直ぐには思いつかんな、恨みが多すぎる。 大方上が殺し屋でも雇ったか。 まあなんとも、絶対に死ぬようなことばかりしかされないで。 顔見ておくか……あ、駄目だこりゃ」 黒いずた袋にその遺体を入れるまで、男はもうしばらく辺りを見回った。 見つけたのは比較的綺麗なままで切り落とされ転がされた、左の手首だ。 持っていけるのはそれぐらいであった、しかし、さて。 「……んー。これを土産に持っていくのは趣味が悪いか」 そうしてやってきた男の部下により遺体は瞬く間に片付けられ。 争いの形跡は最小限に隠滅させられ、残ったのは黒く染みついた血の跡だけ。 結局、小さなずた袋も一つ用意された。 #AbbaiareAllaLuna (-285) toumi_ 2023/09/30(Sat) 7:59:45 |
【人】 口に金貨を ルチアーノ路地裏の前に用意された二台の車のうち、大きな黒いずた袋を乗せた車が男を乗せずに何処かへと向かっていく。 「うちの犬も仕事が早くなったなあ。 猫が関わらなければ本当にいい仕事をする。あ。 ……今日は猫にすれ違わんかったな、エキスパート失格か? まあいい」 車が向かう目的地は知っている、だが自分がそこまでついて行ってやる気もなかった。 そこまで自分達は仲もよくなければ情もない。 俺の方で悪かったな、クソガキ。だが別れの挨拶ぐらいは送ってやろう。 「Notte notte e sogni belli, それでは御機嫌よう」 #AbbaiareAllaLuna (93) toumi_ 2023/09/30(Sat) 8:05:00 |
【置】 口に金貨を ルチアーノ路地裏を縄張りのように歩くどら猫は、常に不幸の傍に、何かを奪って去っていく。 どら猫は気にしない、悪意に手を染めることも。善が尊ばれないことも。 そこには常に理由があり、誰かの利益の為に何かが淘汰され続けている。 世界は独りに優しくなく、価値がわからぬものに救いなど手に入らない。 そんな現実をただ見て歩き、通り過ぎてゆくだけの人生。 仕組みさえわかってしまえばそこまで悪い物じゃあない。 今日も男はその道を歩く、止めてしまえばそれこそ生きることをやめてしまうのと同じだから。 #AbbaiareAllaLuna (L2) toumi_ 2023/09/30(Sat) 8:06:24 公開: 2023/09/30(Sat) 8:10:00 |
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