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【人】 花浅葱 エルヴィーノゆっくり、上がる。 病院の階段を、一歩ずつ。 それはまるで天国へ続く道のようで、あの屋上への扉を開いたら、あなたが居そうで。 ルチアーノと別れ病室に戻された時は満身創痍だった。 絶対安静の人間が、受けるべき点滴を受けずに外に居たのだから、ナースも医者も皆が青い顔をしていたのは仕方のない話だ。 すぐにまた点滴に繋がれ、青白い顔に生気が戻ってくるのにまた数日を要したに違いない。 歩けるようになって、リハビリを始めた。 手先はなんとなく動くようになったけれど、肘を動かそうとすると痛みが響いて動かない。 砕かれた肩はミリも動かせる気がしない。 本当は、ベッドの上にいるのが一番楽だけど、今はすごく屋上に行きたかった。 金色に輝く太陽の下、広がる青い空を見たい。 だって。 寂しいんだ。 心に空いた穴はルチアが埋めてくれるけど、ずたずたになった心臓が今も血を流しているから。 #BelColletto ▼ (98) 2023/09/30(Sat) 23:13:14 |
【人】 花浅葱 エルヴィーノ「やっとついた」 白く輝く扉を開いて外に出れば、涼しい風が男の髪を柔らかく揺らした。 ゆっくり、一歩ずつ前に進んで、 柵に手をかけたらもうだめで、ずるずるとその場に膝を折って座り込む。 身体の辛さよりも、今は、心の震えが止まらないのが酷くつらい。 手の中にあるたった一つだけの贈り物を見つめて、 ……ぱた。 ぱたり。 静かに雨が頬を伝った。 「……忠犬は、主を待ち続けるものだろう?」 「な……んで、キミが先に、僕を置いていくの」 僕がもっと、あなたの手綱をしっかり握ってたならこんなことにはきっと、ならなかった。 僕がちゃんと、あなたがしている事を知っていたなら、あなたの頬を打ってでもそれを止めていた。 僕が撃たれてなんてなかったら、あなたを助けに行ったのに。 ――知らないことは、罪だ。 だからこれは、全部僕のせい 。#BelColletto ▼ (99) 2023/09/30(Sat) 23:14:13 |
【人】 今更、首輪を外されても エルヴィーノ「……レオ……」 あの日約束したその名を呼ぶ。 「レオ………ッ」 何度も、何度だって、その名を呼ぶ。 天国への道を閉ざす、格子の前で。 「約束、守って……る、だろ」 「なのになんで、応えてくれない……っ」 だけどそこに、あなたは居ないのだ。 今更、その首輪を外されても、僕はもう上手く歩けそうにない。 #BelColletto (100) 2023/09/30(Sat) 23:15:34 |