人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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視点:人

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【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

朝が来る。
一度は正しき正義の刃として猛威を払った取締法という剣が失墜し、嫌疑の薄い者は徐々に釈放され始めた。
捕まったものはノッテファミリーや警察内外ばかりに限らず、まばらにそれ以外の姿もあり、
またある程度取り調べの終わった者たちほど、見送りもそこそこに送り出されていくような状態だった。
おそらくは街の様子も、マフィアも、警察も、緩やかに元に戻っていくのだろう。
ほんの少しの革命で何もかも全てが変わるほど、民衆の日常とは弱い者ではないらしい。

その人並みの中には、ある一人の男が含まれていた。場違いであろうその姿が。
罪を背負った長躯はその日、数日ぶりの太陽を見た。ひどく眩しい朝だった。
秋晴れは路面を艶やかに輝かせ、影を色濃く街を白く照らし出すかのように煌めいていた。
嫌疑をかけられた者の中には家族の迎えがあるものもあり、さまざまに人の行き交いがあった。
非日常と日常とが交差する。世界は引かれた線を曖昧に、混ざり合って当たり前を取り戻しつつあった。

ボーイスカウトのパレードが近くを通る。署から少し離れた通りの方で楽団が横切る。
この日は祝日のようにささやかに賑わっていて、平和の鳩が空に放たれるかのように美しい日だった。
男が空を見上げて、右手を空へとに翳す。
天気予報は、どうやら当たったようだった。

#BlackAndWhiteMovie
(0) 2023/09/26(Tue) 21:45:12

【人】 食虫花 フィオレ

同じ頃、近くのショッピングモールで記念セールが行われているらしい。
朝から景気よく花火も上がっていて、パレードも相まって人通りはいつもよりも少し多いくらい。

キャップを目深に被って、カジュアルなパーカー姿の女が人込みの中を歩いている。
ノーハンド通話でもしているのか、ぶつぶつと何かを呟きながら。
花火を眺める人達の間を縫っていく。

「―――」

長身の男が、視界に入る。
目を細める。口元のインカムに何事かを呟いて。

後ろから近付いていく。その匂いは、姿は、よく知っているものだったから。
殆ど至近距離。背中に近付いて、口を開く。

「―――Ciao.」

そんな声は喧騒にかき消される。
背中に突き付けた拳銃が、間違いなく右の胸に向けられて。


人差し指が、引き金を引いた。

消音器で抑えられた音は、花火にかき消えてしまうだろうか。
それでもそれは確かに、放たれたのだ。

#BlackAndWhiteMovie
(3) 2023/09/26(Tue) 21:53:37

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>3
──パン、と音がする。


ぱっと花びらが幾つか舞った。パレードの列から薔薇の花が散る。
傍で鳴った花火のせいで、もしくは遠くの合図のせいで、銃声は随分と目立たなくなった。
子どもたちの笑顔のはるか上を通って、凶弾は晴れの日の空気を切り裂いて、
それでも他の多くに見咎められるわけでもなく、顧みられることは少なかった。
貴方の別れの言葉は届かなかった。けれど、その"指"は確かに届いた。

着弾の衝撃で長身が二度ほどたたらを踏む。
右胸から遅れて血が流れて、かふと血の匂いの混ざったため息を吐いた。
後ろに一歩、二歩と退いて、ゆっくりと前を向いた。

貴方を見つける。男の瞳は貴方を見据えた。
忘れるはずもない。貴方のことだって、男は覚えていた。
子どもたちの笑顔の傍にいつづけた貴方の優しい表情を、男は忘れていやしなかった。

#BlackAndWhiteMovie
(5) 2023/09/26(Tue) 22:02:28

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>3
男は貴方を見て、眩しそうに目を細めて。
見送るように、笑ったのだ。

#BlackAndWhiteMovie
(6) 2023/09/26(Tue) 22:02:49

【人】 食虫花 フィオレ

>>5 >>6

「………」

拳銃を持った手は、震えている。
女は、人を撃ったことなんてなかった。
あなたのことを、信頼していた。本当に、信用していたのだ。

けれど、今は。
柔らかな笑顔を浮かべていた女の顔は憎悪の色に染まって、あなたを睨みつけている。

あなたの向ける笑顔に、ぎりと歯を噛んで。

何で、笑うのよ。
何で、何で、
あの子達を手にかけたあんたが、何で

#BlackAndWhiteMovie
(7) 2023/09/26(Tue) 22:11:22

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>7
パレードが横切っていく。色とりどりのリボンと花が道を過ぎていった。
道には美しい花の残滓と甘やかな香りだけが残されて、
そこにあった殺意と敵意の痕など多くの足音の後にかき消されてしまった。
貴方の手の内の刃の鋭さを、其れと見咎める者がどれほどいることだろう。

男は酔っ払いのようにふらりとした足取りで路地へと吸い込まれていく。
高い建物の間の小暗い道の、その間に長身が消える。
そこに追いかけるものがあったとして、男の姿を見つけることは出来ないだろう。

代わりに過ぎていくのは、車の走り出す音だけだった。
どこへ行ったかなど、誰が知っているようなことでもない。

#BlackAndWhiteMovie
(14) 2023/09/26(Tue) 22:24:41

【人】 corposant ロメオ

>>7 フィオレ

『ciao,fiore! 見たぜ〜』

ピピ、と耳元の電子音。続く男の声は貴女の協力者。
なんとも楽しそうな声は明らかな上機嫌。

『なんとも善き日、なんとも都合の良い日だ。
 良い花火が上がったな』

『あんたも良い顔してるけど大丈夫そ?』

#BlackAndWhiteMovie
(21) 2023/09/26(Tue) 22:37:02

【人】 食虫花 フィオレ

>>21 ロメオ

「……まだ生きてた」
「……けど、これ以上は…」

人ごみの中を追いかけるだけで目立ってしまう。
それに、胸を撃ち抜いたのだ。時間の問題だろう。

「……大丈夫では、ないかも」

思ったよりも、負担が大きい。
ふらりと人ごみの中を歩いていく。

眩暈がする。吐き気が込み上げてくる。
すっきりすると、思っていたのに。

「悪いけど、車…用意しておいてくれる?」

#BlackAndWhiteMovie
(23) 2023/09/26(Tue) 22:48:13

【人】 corposant ロメオ

>>23 フィオレ

『おう、撃ててんだろ。
 ならいい、あんたは種を埋め込んだ訳だ』

『車ならもう用意してる。マップ送るからそこに行きな。
 お疲れさん。あんたは経験をした。
 冷たい水用意して待ってんぜ〜』

通信の切れる音、その直後に貴方の端末に通知が入る。
そこにあったマップ情報に、これが用意した車があるのだろう。

「アーハハ。そらキツイわ」

別の路地の影、ポニーテールにキャップ姿。
自分も行くか、と歩き出した。

あなたが車に着くころには、
運転席に足を組んで座っている事だろう。

#BlackAndWhiteMovie
(27) 2023/09/26(Tue) 23:14:35

【人】 暗雲の陰に ニーノ


──天気予報は当たった。

晴天の元、数日ぶりに見た陽光は眩しい。
一応迎えが来るらしい、とは看守からの言伝。
家に戻った後のことを考えると些か気が重いような、そうでもないような。
とりあえずは待つしかないかと行き交う人々を眺めていた、時間。

見慣れた長身は視界の端に掠めればすぐに分かるもので、「ぁ」と声を発した。
自然足がそちらへと寄っていく、聞きたいことがあるんだ。
貴方の罪状は知っていて、それが到底許されないものだと理解していて、尚。
怒り、よりも悲しかった。されど罪を裁くのは己ではないから。

──夕暮れの公園、二人並んで食べたパン。
──声を上げて笑った表情、全てが落ち着いたらの先の話。

だから、手の届かぬ遠くに行ってしまう前に。
ヴィトーさん、いつもみたいに名を呼んで、その先を、


──パン。


距離は開いていた。まだ数メートル先。
それでも見えた。胸から。落ちる。血が。
……なんで?


背後に居るのは誰。目深に被ったキャップ。
でも見間違えるはずがない。横顔は。
……なんで?


#BlackAndWhiteMovie
(29) 2023/09/26(Tue) 23:26:22

【人】 暗雲の陰に ニーノ



「………………なん、で」


止まる足。
立ち尽くす間に二つの人影は遠ざかっていく。

パレードが横切っていく。
全ては足音の元に掻き消されてなかったことみたいに。

心臓がうるさい。
熱は下がったはずなのに頭がぐらついた。


なんで。



──それしか言わないな、って、誰かが言った声が蘇る。
でも、なあ、だって。

それしか言えないだろ、こんなの。


#BlackAndWhiteMovie
(30) 2023/09/26(Tue) 23:27:20

【人】 食虫花 フィオレ

>>27 ロメオ

ふらり、キャップで顔の隠れた女が車までたどり着く。
助手席……を通り過ぎ、後部座席に転がり込む。
そのまま丸まって、しばらく動かないだろう。

「………」

お水、と小さく呟いて。運転席の方に手を伸ばしている。

#BlackAndWhiteMovie
(31) 2023/09/26(Tue) 23:29:42

【人】 corposant ロメオ

>>31 フィオレ

「おかえり〜。休みな〜」

人通りも少なく建物の影、表の賑わいは少し遠い。
ひっそりと停車している黒い乗用車は新しいものだった。
後部座席にはこれまた新品の白いクッションが置いてあるから、使うのだって自由だろう。

「慣れない事をするのは疲れるよな。色々」

はい、とペットボトルを渡す。

「で」
「どうだった?」

#BlackAndWhiteMovie
(32) 2023/09/26(Tue) 23:59:40

【人】 路地の花 フィオレ

>>32 ロメオ

置かれていたクッションに遠慮なく顔を埋めている。
キャップがはずれて、あなたと同じようにポニーテールにした髪があらわになった。

「……こんなもんか、って思っちゃった」

ペットボトルを受け取り、ふたを開けて。横になったまま口を付ける。
目を伏せてぽつりとつぶやいた。

「思ったより、ずっと……すっきりしない」
「あいつが、笑ったから…?」

脳裏に焼き付いて離れない。
あんな顔が出来るなら、どうしてあんなことをしたのか。
わからなくて、気持ちが悪いままだ。

#BlackAndWhiteMovie
(33) 2023/09/27(Wed) 0:35:41

【人】 新芽 テオドロ

ギプスと包帯にまみれた手指を引き摺るように。
それでも曲がることのない背筋が、
漫然と人混みをかき分けて歩いていた。

迎えに来るような人間に覚えはない。
人々の顔を一切見遣ることはなく、ただ足を進めていく。
当てもない、というのは少々正確ではなく。

心配をかけさせないために、この顔なんかを見たい奴らのために、暫し寄り道でもしてそれからどこに行くかを決めるつもりだった。順序が逆な気がするがまあいい。

そこまでなら、まあよかった。



───パン、


その音に、警鐘であるはずの声に、つい顔を向けてしまった。

何の冗談だと思う。否、それが冗談でないということは、
きっと人一倍知っていることだった。誰よりも、なんてのは恐れ多くて思ったりできなかったが。
故にホワイダニットを一瞬で理解する。凄腕の探偵でさえここまで早く答えを出せることもそうそうないだろう。

「…………」

ただ、自分は警察だ。

だから、知らないことにした・・・・・・・・・・
見なかったことにした、聞かなかったことにした。
全部は痛む身体と喧騒の中に紛れてしまったことにした。
#BlackAndWhiteMovie
(35) 2023/09/27(Wed) 6:18:35

【人】 口に金貨を ルチアーノ

>>30 ニーノ

暗い知らせと取締法が収束しかけ明るい賑わいを見せる頃。
空は晴れ渡り、火花が空に咲き――
まだ知人達が数人拘留されている時間、外に用があった男は出歩いていた。

そうしてふ、と一台の車が目に入る。
その車の運転手など見えない、ナンバーに覚えもない。
それでも、都合の良い『あいつ』の車だと気付いた瞬間、
ルチアーノはパレードの通りに向かって走っていた。


パン。

音がやけに大きく聞こえた気がした。
どんな状況であるか男は確認できないまま辺りを見渡す、そして漸く見つけた知り合いは。
賑やかな喧騒の前に立ち尽くす、彼らが大事にする小さな弟分だった。

「ニーノ!」

その呆然としている姿に声をかける、貴方はこの嫌な予感の当事者であったのか。
それとも、ただの、目撃者であったのか。

#BlackAndWhiteMovie
(37) 2023/09/27(Wed) 18:18:59

【人】 corposant ロメオ

>>33 フィオレ

「そんなもんだよ。殺しって晴れ晴れしたもんじゃない」

横に積んだ小さなクーラーバックから紙パックのジュースを取り出し、ストローを差す。
端末で部下に次の指示を出しつつ片手間に飲むための物だ。
オレンジの爽やかな酸味はこの場に不釣り合いだった。

「……マジ? 笑ったの? なんで?」
「そらすっきりしねえわ。最後まで嫌だねえ……」

こっちは復讐に来たってのになあ。
珊瑚色の爪がこめかみをカリカリと掻く。

「でもあんたは撃ったよ。それで何か変わればいい」

#BlackAndWhiteMovie
(38) 2023/09/27(Wed) 18:36:09

【人】 暗雲の陰に ニーノ

>>37 ルチアーノ

呼ばれる声で白昼夢から醒めるように。
ハッと貴方へ向けられた顔は憔悴しきったように酷く青褪めていた。

「ルチアーノ、さん」


それでも目の前の人が誰かは分かる、理解できる。
鉄格子越しではない再会に伝えたいことは他にもあったはずだ。
けれどどうしたって今、震えた唇が紡ぐのは。

「…………ねえさんが、ヴィトーさんを、撃った」


先の現実をなぞらえる言葉だった。
そうしてはっきりと形にしてようやく喉奥まで飲み込めた気がして、くしゃりと顔が歪む。
泣きたくはなかったのに涙が溢れてしまいそうで。

「……撃った、んだ」


なんではもう声にしなかった。
理由なんてわかっているから。
でも、わかっても、……わかっただけ、だった。

「…………ふたりとも、だいすきなのに…………」


#BlackAndWhiteMovie
(49) 2023/09/27(Wed) 23:14:33

【人】 路地の花 フィオレ

>>38 ロメオ

「……」

そうなのかもね、なんて言葉を口にしようとして。
結局は開いた口からは何も発さずに、クッションに頬を埋めている。
いやな気持ち悪さだけが、ぐるぐると頭の中を回っていた。

「分かんないわよ……」
「……もしかしたら、……ううん、」

何でもない、とやはり言葉を飲み込んだ。
私が間違えているのかも。とか。本当は、もっと確かめるべきことがあったのじゃないかとか。
全部、全部。今更だ。

「これで、子供たちの未来が救われればいい…」
「もう、誰もいなくならなければいい」

ロメオ、とあなたの名前を呼んで。
後部座席で両手を広げている。寂しい時の、合図だった。

#BlackAndWhiteMovie
(50) 2023/09/28(Thu) 2:27:52

【人】 corposant ロメオ

>>50 フィオレ

ちらとバックミラー越しに目を合わせた。
滅入った顔にかつての焔火の面影はない。
片眉を上げる。どうしたものか。

「フィーオレ……引き金は引かれたんだ」
「ケジメ付けに来たんだろ。
 あんまり落ち込んでちゃ撃った相手に失礼だぞ」

呼ばれた名前に振り返り、ああ、と意図に気付いて。
ドアを開けて後部座席に回れば、
「ほい」と優しく抱き締めようとした。

「泣きたきゃ泣きな〜」
「落ち着くまでこーしてていいから」

ぽんぽん、と背を穏やかに叩いては擦って、
安心させるために、いつもよりも落ち着いた声のトーンで。
自分が焚き付けたものだから、ちとばつが悪いのだ。


#BlackAndWhiteMovie
(51) 2023/09/28(Thu) 10:31:31

【人】 口に金貨を ルチアーノ

>>49 ニーノ

「ヴィトー、……そうか。あいつが」

本当に、嫌な予感が当たってしまった。
だけど今ここに死体はない、周りが騒いでいる様子もない。
つまり彼はまだ生きていて、彼女は殺し損ねたか何かを仕込んだか。

少なくとも――その引き金を引いたのは確かなのだろう。

「……すまんなあ、ニーノ。止められんかった」

また男はあなたに謝った。
悪くもないのに、ただ謝った方が楽になれる気がして。
それは起こるのがわかっていたかのような表情で、諦めたような、それでも物悲しそうなものであった。

「旦那のことは諦めるんだなあ。
 あの音で撃たれて騒ぎがないってことは
 もう何処かに逃げてるか、誰かに匿われてる。
 行き場所は分からんが、……俺たちが探すから心配するなあ。
 無事なら病院に直ぐ運ばれるだろうよ」

「それよりもなあ、ニーノ。今お前は誰に何を言ってやりたい。
 ちゃんと決めんとならんだろ、俺はそれの手助けをしてやる」

「また一人で泣いてお家に引きこもるつもりか?」

#BlackAndWhiteMovie
(52) 2023/09/28(Thu) 11:06:12

【人】 暗雲の陰に ニーノ

>>52 ルチアーノ

なぜ貴方が謝るのか分からなかった。
以前のようにその理由を問い質す余裕はなかったけれど。
それでも語り掛けてくれる言葉を拾い上げていれば頭の芯が徐々に冷えていく。

誰に、何を。
言葉にせず胸で繰り返した直後、最後の一言にははっと目を瞠り。

「…………ううん」


幾らか落ち着きを取り戻した表情で、首を横に振った。
目を塞がないと決めた、己を責めて泣くこともまた。
此処はもう何もできない牢の内ではないだろう。

……誰に、何を。

もう一度、繰り返したところで解は不明瞭だ。
だが、そうなってしまう理由だけは明らかだったから。

[1/2]

#BlackAndWhiteMovie
(53) 2023/09/28(Thu) 18:09:30

【人】 暗雲の陰に ニーノ

>>52 ルチアーノ

「ごめんなさい、情けないところ見せて……」

「……あはは、ルチアーノさんさ。
 面倒見いいね、ほんとに。
 あの、手助け……というか、また、甘えていい?」
 
「いま、ひとつだけ」

少し遠くで見慣れたひとが自分を探す姿が見えた。
家からの迎えで、ならどうしても帰らなくてはいけなかった。
その先でないと、どれほど貴方の手を借りたところで解は得られないと分かっている。

だから今は、ただ貴方を見上げて乞う。
強く在りたいと願う。
されど気を抜けば目を塞いでしまいそうになる。
その弱さを見抜いてくれた、貴方にだからこそ。

「───"大丈夫だ"、って言って」

「……今のオレ、全然そんな風に見えなくても。
 それだけ、……言ってほしいんだ」

「おまじない、欲しくて」
「……だめかなあ」


[2/2]

#BlackAndWhiteMovie
(54) 2023/09/28(Thu) 18:11:27

【人】 路地の花 フィオレ

>>51 ロメオ

「泣かない、泣くわけないわ」
「……ありがとう、ロメオ」

一人だったら、きっとどうにもできなかった。
感情のやり場も、それを発散することも。

大丈夫、これは前を向くための儀式だ。
共犯者と言ってもいい関係のあなたと、背負ったものを分け合うような気持ちで。
これからも、私は間違っていなかったんだと思えるように。

「あなたがいてくれて、よかった」

胸を借りて、優しい声でそうつぶやくのだ。

#BlackAndWhiteMovie
(55) 2023/09/28(Thu) 20:24:32

【人】 corposant ロメオ

>>55 フィオレ

「そ? ならいいや。
 美人が泣くのは絵になるが心が痛む……」

またぽろぽろ泣き始めてしまうのかと思いきや、
どうやらそうではないらしかった。
ちゃんとマフィアらしいトコあるな、と再認識をする。
内心ほっとしたと同時に、──
全てに報いあれ
と願った。
この因果の先がどうなっていくのか、きっと自分の目にはすべて映るわけじゃあ無いんだろうけれど。

「いくらでもいるさ。なんでもするって言ったろ」

そういう約束なのだし、そういう役目だ。
頭に軽いキスを落として、また背中を擦る。

「落ち着いたら帰るか? 今他の皆はどうなってんだろ」

#BlackAndWhiteMovie
(56) 2023/09/28(Thu) 20:44:47

【人】 口に金貨を ルチアーノ

>>54 ニーノ

「お節介なところが誰かに似た。
 なんだ甘えたいのか、どうした?」

視線を一瞬だけ他所にやって、また顔を見返した。
やはり大人だといっても心配されるような家に居るのだろう。
羨ましいような、そんな自分も想像もつかないというべきか。

「なんだそんなことか。
 お安い御用だ、その言葉のチョイスの是非は置いといてな。
 いったい誰に貰った教わったのやら」

「重要なのは言葉の意味じゃない、おまじないであることだ」

そう言いながら、貴方の頬に手を当て、こつんと額を合わせる。


「ニーノ、お前は"大丈夫だ"」


余計なことは添えずに男の目は正面から貴方を見つめている。
根拠もない言葉がどんな意味を持って貴方の中に生きるのか。
きっと多くに生かせる人間であると男は信じていた。
それだけに頼り切らないで歩いてくれると祈っていた。
だから、これだけでいい。

#BlackAndWhiteMovie
(61) 2023/09/29(Fri) 1:23:25

【人】 暗雲の陰に ニーノ

>>61 ルチアーノ

その距離は普段なら恐れを抱くものであったのに。
声を望んだ今はどんなものより安堵を渡してくれた。
たったそれだけでよかった、一人で呟くよりもずっと。

見つめる真っ直ぐな眼差しが差し出してくれるのは、勇気と信頼。
それがいつかの夜と重なって喉奥が詰まる心地がして。

「……うん」

貴方の手に指先を重ねて、返す。


「オレは、"大丈夫"」


そうしてようやく、揺らめいていた水面が静寂を得た。

おまじないが無くても立てる強さが在れば本当はよかった。
だけど今はそれは叶わないから、あなたの手を借りさせて。
それでもいつかの先には自分がだれかに、それを与えられる人になれるように。


[1/2]

#BlackAndWhiteMovie
(64) 2023/09/29(Fri) 9:28:31

【人】 暗雲の陰に ニーノ

>>61 >>64 ルチアーノ

続いた沈黙は二呼吸分。
直に貴方の指先を離した男は、一歩後退ってやっと笑えた。

「……へへ。
 ありがとう、ルチアーノさん」
「すっごく助かった、どうにかなっちゃいそうだったから。
 オレさ、ちゃんと答えを見つけて……言いたいことを伝えられるようになるから」

姿に気づいてこちらに駆け寄ってくるのは年嵩の女性だ。
"坊ちゃん"と呼ぶ声にひらりと左手を振って、最後に貴方へと向き直る。

「──おまじない、大事にする!」
「今度はもっと落ち着いたところで話そうね。
 ……ヴィトーさんのこと、よろしくおねがいします」

もう一度だけ『ありがとう』を繰り返せば、じゃあとそのまま女性の元へと歩いて行く。
親し気に彼女へと声を掛けた男の姿は道脇に止められていた車の助手席の中へと消えて、車体もまた遠ざかっていくことだろう。

すれば今度こそ残るのは人々の賑やかな声と、時折宙を舞う鮮やかなリボンと花だけ。
其処に在った凶行など誰も知らないまま、晴天の元を白い鳩が一羽横切って行った。

[2/2]

#BlackAndWhiteMovie
(65) 2023/09/29(Fri) 9:30:31

【人】 路地の花 フィオレ

>>56 ロメオ

「涙は安売りしてやらないんだから」

少しの間そうしていれば、調子も戻ってきたのか軽口も飛び出して。
あなたの胸から顔を離せば、笑みを浮かべるくらいの余裕もあるようだった。

「やってやったんだから。私」


「ね、何でもしてくれるなら」
「何か美味しいものでも買って帰りましょ、あの部屋でお疲れ様会したいわ」

みんなも早く落ち着いたらいいんだけどね。
解放されたばかりであれば、なかなかそうもいかないだろうけれど。

#BlackAndWhiteMovie
(77) 2023/09/29(Fri) 14:13:14

【人】 corposant ロメオ

>>77 フィオレ

「……ハハ。それでいい。女の涙は宝石と同じだからな」

下を向けば貴女と自然に目が合う。
口の端を吊り上げて、悪戯小僧みたいな笑い方をした。

Ottimo lavoroよくできました!」


「美味しいもの? いーよ、何買う?
 つかなんでも買うか……せっかくなんだし奢ってやるよ」

運転席に戻れば、そろそろずらかるかとエンジンボタンを押す。端末には見張りの部下達の『問題無し』との報告が入っていた。そちらにも『お疲れさん』と返して、後部座席を振り返る。

「じゃあ行きますかぁ。問題無い?」

#BlackAndWhiteMovie
(78) 2023/09/29(Fri) 18:46:00