人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

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【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>96 >>97

その男の顔を見上げて、満身創痍の男は笑った。
息だけで、けれどもそこにあるのは嘲弄とはまた違うものだった。
仕方ないものでも見るような、怪訝と皮肉の混じったそれだ。

「……はっ、はは」

「迎えの趣味が派手だな、アレッサンドロ・・・・・・・

#BlackAndWhiteMovie
(102) 2023/09/30(Sat) 23:28:17

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>101

満身創痍の男の前に、黒いスーツを翻した男が立っている。
壁の隙間から差し込む燦光が、ちかちかとその輪郭を彩って。
見やれば、その体のあちこちに乱雑にまかれた包帯や布の切れ端が赤く染まり、彼もまた無傷ではないことが分かるだろう。
そいつはあなたの表情に、に、と笑顔のように口元を歪めると。

「――気安く
 呼ぶン
 じゃッ
   ね えよ、
くそヴィト・・・・
ッ!!!!」

 
――横殴りに銃身を叩きつける。


#BlackAndWhiteMovie
(103) 2023/09/30(Sat) 23:35:27

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>103

頬骨に堅いフレームが擦り合わされる感覚があった。
既に大分張られて腫れた頬に、今までの痛みを再生するように神経が痛んだ。
軽く咳き込んで血塊を吐き出す。喘鳴は荒れたものの、悲鳴はあげなかった。
衝撃に流される前に向こうを向いて金属製の扉に叩きつけられた頭は、
まず視線を貴方へと向けて、それを追うように頭そのものが前を向く。

「他人行儀に呼ばれる方が、お前はよっぽど好みじゃないだろう」

立ち上がろうともしなければ、反撃の姿勢も見せない。
ただ、大混乱のさなかにある町工場の中の景色を背景に見上げて、
叩きつけられた言葉と態度を映画のスクリーンのように眺めているだけだ。
それで満足するのなら、それで構わないだろう。
けれどもそれで腹の虫が治まらないのなら、それはきっと不満だ、そうだろう。

「一方的に殴りつけて気が済むんだったらこのまま付き合ってやる。
 で? それでお前は構わないのか?」

#BlackAndWhiteMovie
(104) 2023/10/01(Sun) 0:02:08

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>105
上体さえ浮き上がらせられたなら、それに追従しないわけでもなかった。
何もかもに無気力であるのとは異なる、他から見て違いはわからずとも。
打撲程度の損耗はあるものの無事な方の腕で体を支えて立ち上がる。
片足は引きずり気味ではあるものの、体重を支えられないわけではない。

点々と血が尾を引く足跡を残しながら、助手席の方へと歩いていく。
時間が無いのは確かだ。そして目の前の相手を見れば、互いにそうなのも確かだった。
皮肉るような物言いはされど相手の提案を蹴って立ち止まったりするものではない。
そればっかりが事実であって、心中の内を饒舌に語ったりはしない。

「話くらいは聞いていけよ。何も聞きたくないわけじゃあないだろ。
 もしそれくらい呆れてるなら、お前は此処にわざわざ来ない」

決めつけるような物言いのどれだけが真を得ているのだろう。
長い月日の中で互いがどういう人間か霞んだか、或いは。
少なくとも、聞けと言うほど自分から話したりというのも、男はやはりしなかった。

「……お前の運転する車に乗るのは、そういや初めてだったかな」

#BlackAndWhiteMovie
(106) 2023/10/01(Sun) 0:26:40

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>106

怪我を慮る様子など一切なく、力任せに腕を引き起こす。
手招きも指図も、説明も気づかいも無い。
奇妙で不格好な、それは信頼ににた形。
ここ十年ばかりお互いの間に横たわっていたさまざまなしがらみや思惑、年月や歳月。

そういったどうでもいい・・・・・・もの全て、
ばたんと乱暴に閉じられる扉の音にかき消えていくようだった。

「……カー・ラジオ代わりに流してやるから、勝手に話せよ」

分泌される脳内物質のせいか、
それとも流れ出す血のせいか。
なにもかもを走り切った直後のような、気怠さと自由の境目のような空気。
──この十年ばかしあった微妙な距離感の代わりに、そういったものがぶちまけられたような感覚。

それを形容する名前を、ふたりは持たなかった。
あるいは、必要としなかった。


「たりめーだろ。
 カポの車に乗る警部がいるかよ」

がたがたと煙と異音をあげながら、フィアットのタイヤが滑り出す。

行先は、港。
ゆっくりと沈みゆく太陽を追いかけるようにして、ひびの入ったフロントガラスが瞬いた。

#BlackAndWhiteMovie
(107) 2023/10/01(Sun) 0:35:59

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>107

その日の空は晴れていた。
緞帳を割るように光は破砕された開口部を割って差し込む。
パレードが幕を開けた頃に比べれば随分と光は色を帯びていて、
道向こうの目的地であるように主張する夕の色がやけに視界に眩しかった。
僅かな隙間を縫って吹き抜ける風が傷をひりひりと傷ませる。

「お前をパトロールカーに乗せてやることはしょっちゅうだったけれどな。
 性懲りも無い暴れ方ばかりするもんだから、ガソリン代を請求してやりたかったくらいだ」

まだお互いが若く未熟で、ちょうど今の夕焼けのように昼と夜の交わりとの関わり合いを、
どんなふうに図るべきなのか探るようにしていた頃の話だ。
今、或いはこうなる直前よりもずっと上手く切り抜ける方法なんざ知らなくて、
どちらも自分の上、社会だとかそういうものに叱られため息を吐かれていた、
あの頃の夕日が一番眩しかった。

「お前は引き継ぎは終えてきたのか。どうせろくに話もしてないんだろう。
 口を開かないことばかり得意になっちまったもんだな」

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(108) 2023/10/01(Sun) 0:59:55

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>108

潮風はまだ遠く、けれど海から吹き上がる風は真っ直ぐに削いでいくようだ。
こんなときにこそ使うべき黒眼鏡を助手席にかちゃりと放り捨てて、
ハンドルを苛立たし気に指先が叩く。
とん、とんというリズムは、鼓動とも路面の震動とも入り混じらない不協和音。
なのにその音が妙に耳に響いて、それ以外がどこか遠くに聞こえてくる。

「今ならぜって〜被害届出してるからな、あんなの。クソ暴力警官。
 あの時懲戒喰らわせておくべきだった」

今にして思えば、あの時分が一番互いを信頼・・していたとさえ思う。
何も伝えず、何も理解せず、
それなのに同じ場所にいた。
その時のように交わされる言葉は、
傷跡に疼く熱に溶けていくよう。
──理解とは程遠く、けれど齟齬がなかった。
スラムか、暴力か、あるいは痛みか。
何某かの塔の正体が何だったのかはいまだに分らないが、
少なくとも、同じ言語が通じていた。

「…そっち、あの状況でしてきたのか? 嘘だろ。
 俺ぁなんもしてねえよ。あいつらならどうにかするさ」

車は海辺へと続く道路を曲がり、赤い照明が明滅する港湾設備へと進んでいく。
その光をフロントガラスに映しながら、
なんだか嬉しそうに笑う。
──相変わらずの放任主義だ。信頼する相手のことは、あとは大丈夫だと無条件に、どこまでも放り出す。

#BlackAndWhiteMovie
(109) 2023/10/01(Sun) 1:10:39

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>109

ゆっくりとカーブを曲がり、建物の間から遠くに海が見える。夕暮れの色に照らされた美しい海。
いつもだったらそれを楽しむ余裕があったかもしれないし、
その向こうにあるのだろう本土の岸辺を想像することもあるのかもしれない。
街の景色が遠ざかっていき、見えるものの色数ばかりが少なくなっていく。
そう遠くもないうちに、この車は港へと着くのだろう。

「俺の部下に引き継ぎなんざ必要ないさ。普段からなんでも教えてやっている。
 お前と違って上に立つものも一人きりてなわけじゃない……うまくやるだろうさ」

果たして当人らにとって適切な引き継ぎがあったかなんて想像はしない。
少なくとも今から間に合わせることなんてのはお互いに出来やしないのだから、
彼らの身になって考えるなんてことに意味があるわけではない。

痛んでいない右腕を動かす。ポケットから抜き取られたのは一本の葉巻だ。
湿気の管理もされていなければ剥き身のままほっとかれてラッパーに皺が寄っている。
あの日、餞別として貴方から強奪したものだ。
それが見えるように片手で掲げてから口に咥える。

「……火貸してくれ。シガーライターくらいあるだろ、この車」

#BlackAndWhiteMovie
(110) 2023/10/01(Sun) 1:29:23

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>110

がたがたと歪んだフレームの隙間から、さんざめく潮騒が聞こえてくる。
フロントガラスから回り込むように、
海面が反射する橙の光が覆っていく。
ぐるりとハンドルを回して、半開きのゲートをくぐる。
するすると滑り落ちるように向かう先は、港湾施設に併設された倉庫群だ。

「俺の部下にも引き継ぎなんて必要ねぇけど!?
 俺のやってた仕事なんざ、あることをあるようにしただけだ。
 もっとうまくやるまであるね」

張り合っているのかなんなのか、それとも誇らしく主張しているのだろうか。
確かなものなど何一つなく、空々しくすらあるがなり声が車内に響く。
葉巻の先端を視界の端にだけとらえながら、

「セルフサービスだ。
 お前の人生に俺からくれてやるものなんて一つもねえ」

アクセルをがん、と蹴りつけるように踏む音。
速度を増した車は、舗装された斜面を跳ねるように降りて、
ある倉庫の陰へと向かう。
──そこは、カポ・レジーム"黒眼鏡"が管理する倉庫群。
治安組織もファミリーの監視も、少なくとも普段はほとんど及ばない
この街の空白地帯。

#BlackAndWhiteMovie
(111) 2023/10/01(Sun) 1:38:23

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>111

「っ、はははは。
 物知らずが店一つ任されるくらいだ、それくらい教えられてりゃ問題ないだろうよ」

空笑いが返る。くるくると葉巻を回してポケットへとしまいこんだ。
張り合って上げる大げさな声も、突き放すような物言いも、やけに満足そうに耳を傾ける。
背中の向こう、振り返らなければわからない街の様子などわからない。
残された彼らがどうしているかなど知る術もなく、知らせる者もいない。
それでよかった。

スピードを上げる車とは裏腹に、悠揚と構えて眼の前を見ていた。
話す相手に目を向けるのでもなく、ただ紫色を帯びていくオレンジを見ていた。
たかだかの干渉に集約してしまうには、男のほうは、今にすっかり満足していた。

車が停まれば扉を開けて助手席から外へ逃れ出る。
景色を見に来た、だなんて。そんなことは欠片も思っちゃいない。
それでも求めるものを提示されるまでは、開け放った扉に手を掛けて、
沈みゆく夕日が海を照らしているのばかりを見ていた。

体重を他に預けて構える、その片目は失われていた。
全身打撲の状態であちこちに殴打の痕があり、片足は半ば引きずっていた。
外套の内側からは血が流れ出す。左肩は粉砕され、脇腹はじんわりと血を吹いていた。
一番顕著であるのは右胸の傷で、すっかり黒くなった血の跡を染めるように新たな血が流れる。
今は空にされた助手席のシートが、凄惨さを物語っていた。

#BlackAndWhiteMovie
(112) 2023/10/01(Sun) 2:16:30

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>112
「ぬかせ。お前よりよっぽどいい上司してたわ」

本気の舌打ちをぶちまけながら、バックミラーをぐいと捻る。
根本から明後日の方向を向いた鏡は、もう背後の街並みを映し出したりはしない。
視界に広がるのは風の割には穏やかに揺れる海面と、
それを無機質な倉庫の陰が無機質に、参差として遮っていた。

助手席が開くの音に覆いかぶさるように、
蹴り開けるような勢いで扉が開く。
ところどころ穴の開いたスーツの裾がばたばたと、
忙しなく海風を孕んで揺れていた。

「一服する間くらいは待ってやるよ」

ばん、と力任せに叩きつけられたドアは、しっかりとは閉まらずに中途半端にずれ・・た。
車越しににらみつけるアレッサンドロの片目もまた、押し当てられた布切れを赤黒く滲ませている。
銃弾が掠めたのか、あるいは貫通したのか肩や腿にはごわごわと乾いた血液の痕が張り付いていて、特に左腕の動きが鈍い。
それでも、

「おめえが何やったか、よく見てなかったンだけどよ」

フィアットの天板に、ごとん、と肘を乗せて。

「んなもん、どうでもいいから。」
「これからぶっ殺すくれえ殴るから、死んでも文句言うなよ」

  ――笑った何もかもどうでもいいくらいに

#BlackAndWhiteMovie
(113) 2023/10/01(Sun) 2:30:45

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>113

懐からナイフの一本を取り出す。手入れはされているが汚れているそれは、
おそらく手癖も悪く先の町工場内部から拾ってきたものなんだろう。
ひしゃげた葉巻を乱暴にカットすると、煙草のボタンを押して起動させる。
幸いシガーソケットに歪みは無かった。ライターを取り出して赤熱面に押し当てるも、
直火でないから火がついて炙られるまでにはさんざ苦労をした。

「……初めはお前は随分大人びちまったから、裏切られたと知ったら切り捨てて、
 あとはそれきり、自分の部下かなにかにでも始末を任せるものかと思っていたよ」

保管状況も火付けも何もかも悪い葉巻は、パルタガスの良さを台無しにしている。
しばし車に体重を預けながら、夕日が沈んでいくのを見ていた。
こんなところまで追ってくるのがいたとして、アジトやあちこちが散々な今、
痕跡を追ってやってくるとしたって日が昇ってからだろう――唯唯彼を追うふたりは別として。

「何かに付けて突っかかってくるようなガキの時分じゃなきゃ、
 自分の手でケリつけようなんざしないだろうと思っていた」

「けれど、お前は追ってきた」

喉の奥から喘鳴混じりの笑い声を吐く。
車を挟んで並ぶ男の顔を見て、目を細めて笑っていた。
遠いものになってしまった景色を眺めるような、懐かしむような目。
ころりと首を傾げて、可笑しそうに、いつかのように頬を緩める。

自分を殺す凶器を選べるなら、お前がいいとずっと思っていたよ


#BlackAndWhiteMovie
(114) 2023/10/01(Sun) 9:11:51

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>114

「そりゃこっちの台詞だ、あんたが大人になっちまう・・・・・・・・日が来るとは思っちゃいなかった」

車に体重を預けながら、悪餓鬼のような笑みを浮かべる。
怒りと苛立ち、嘲りと――仲間意識。
そういったものがないまぜになって、ぐつぐつと、
耐えがたいはずの悪臭を放ち煮えたぎるような凶相。
なのにそれは、どこまでいっても笑みと表現されるものだ。

「──俺だってガキじゃあいられねえ。ただ、どーでもよくなる時だってある」

はるか遠くを過ぎゆくプレジャーボートのエンジン音が、波を伝い足元にまで響いてくる。
そうして、あなたの漏らした言葉には、一瞬きょとん、と目を丸くして。

「──ハ」

気色悪いこといってんじゃねえよ同じこと思ってんじゃねえよ

ははは、ははは、と。抑えきれなくなったような哄笑が、途切れ途切れに漏れ出して。

「──オッサン、コラ。ノンビリ吸ってんじゃねえぞ」

かつては大人と子供ほどに離れていた年齢は、今やすっかりと希釈された。
それなのに、その口調は悪態をつく子供のようだ。
ポケットに片手を突っ込んだまま、車に手をついてゆっくりと回り込む。
おぼつかなかったはずの足取りは、舗装された足元を引きちぎるかのように重く、強い。
ぴりぴりと、引き絞られたか弓矢のように、それは放たれる時を待っている。

#BlackAndWhiteMovie
(115) 2023/10/01(Sun) 9:41:54

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>115

「俺は変わっちゃいねえよ。周りが自分よりガキばっかりになっただけだ。
 だから面倒を見てやらなきゃいけない数が増えた、それだけの違いしかない」

自分が、自分たちが若い頃も、自分より年少の人間は面倒を見てやった筈だ。
その数が増えただけ。目下のように振る舞う機会なぞありはしない。
それでも、根底にあるものは変わらないままだ。

哄笑を聞いて、ひとたび眉を顰めて。それから、また仕方なさそうに口角を吊り上げた。
次第にそれは同じような高笑いに変わって、港にどうしようもない馬鹿笑いが響いた。
笑えば傷がずきりと痛む。体の震えに伴って新しく血が吹き出した。
そんな無粋の一つ一つが、奇妙な高揚の後ろに押し流されていく。
頭の中が晴れていくような清々しい興奮が、片方だけの瞳を爛々と輝かせた。

「――葉巻はゆっくり吸うもんだろ、小僧。
 ……だから此れはお前が台無しにしたことにしてやる」

親指が下から葉巻の胴を弾いた。燻った珈琲やナッツのような香りが舞う。
手元から離れた一本がくるくると回転しながら地面に落ちていき――

トッ、と小さな音を立てて路面にぶつかる。
それを合図とするように、車に体重を殆ど預けて予備動作を消して、
右足を大きく振り上げて蹴り上げた。距離が足りれば体の中央、
そうでなくとも当たれば顎は刈れる。

#BlackAndWhiteMovie
(116) 2023/10/01(Sun) 10:14:07

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>116
ガキみてえなことのけ反って蹴足を避け
  言ってんじゃ車の側面を蹴り跳ねあがって        
         空中に飛び上がり
            ぇえぇえええエエエエエよッ足を引き絞った!!!」



葉巻が撃鉄のように落ちて、
そらすら待たずにばね・・は動いた。
ほぼノーモーションで放たれた蹴りを避けられたのは、同時に動き出していたからにすぎない。
だ、だん、と鋼板をへこませる音と同時に、アレッサンドロの長身が車の天板よりも高く飛び上がる。
大きく孤を描き放たれる、横殴りの足刀。

──だが本命は、その陰。

先ほどまでポケットに突っ込まれていた拳が緩く握りしめられて、空中に身を躍らせた直後──
蹴りとワンテンポ遅れただけの奇妙なタイミング、そして間合いで突き出される。

当たるはずも牽制になるはずもない、ばたつかせただけのような手。それがぱ、と開かれて、

ばさり
、と。

握り込まれていた粉末・・が、
掠れた音とともにぶちまけられる。
派手な蹴撃に紛れて放たれるそれは、
アルミ片を削った・・・金属の欠片。

粘膜を容易く傷つける無数の礫が、潮風に逆巻きながら、顔面を狙ってぶちまけられた。

#BlackAndWhiteMovie
(117) 2023/10/01(Sun) 10:25:28

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>117

躱された脚を引く力に任せて上体を引く。
大仰な動きは、それが本命でないのも相俟って適切な間合いで避けられた。
問題はその次だ。

「っ、」

片目を庇うように瞑る。視界は一時的に制限されはしたものの、恒久的にそうなるよりはいい。
避けようもない攻撃は顔面に降り注ぎ、交通事故にでもあったように傷に金属片が食い込んだ。
見えないものを、やり過ごしきったと判断するのは難しい。
目を開くことが出来るのはもう一手先だ、故に。
見えずとも当たることが予測できるものを狙わなければならない。

流れるように殴りつけにかかったのは足刀、過ぎ去った右足の膝裏だ。
勢い、空中から地面に引きずり下ろすようにしながら自身も背中を丸め、
頭上からの奇襲が追撃されることを防いだ。
握り込めるならばそのまま膝裏の布を引っ掴めたならいい。
そうしたなら落下する体の支点は言いようもなくめちゃくちゃになる。

#BlackAndWhiteMovie
(118) 2023/10/01(Sun) 10:39:48

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>118

爪先が何かを掠めて、あるいはまったく空振りをして、
けれどそんなものはどうでもいいと引き戻す。
格闘戦において、自らの肉体を伸ばしたまんま相手の射程内に置いておくほど愚かしいことはない。
──そんなものを分かっているとばかり、即座に叩きつけられた拳と脚刀がぶつかりあう。

「っ、っだ、」

膝裏を鉤のようにひっかける指を上から押しつぶすように、
器用に全身のばねをたわませてもう片方の足を叩きつける。
技術というにはあまりにも稚拙で力任せなそれが、
もつれあうようにして互いの手足をはじき合った。
人間が滞空していられる時間は、そう長くはない。
アレッサンドロが辛うじて両足を地面に着地した時には、
そんな一瞬の攻防を経て、互いが姿勢を崩したままだった。

No
僅かに、無茶な動きをしたアレッサンドロの方が姿勢が悪い。
それを補うように、咄嗟に距離を埋めるように左手の拳が突き出される。
──ちか、と。
金属の輝き。

握り締めた拳の指と指の隙間、
そこに握り込むように金属片車の鍵
拳から突き出す先端は猛獣の爪のように、防御すれば肉を裂き骨を打つ。
距離と間隙を埋めるように鋭く二度、三度、狙うは当然顔面、あるいは傷を負った胸元や肩口。


#BlackAndWhiteMovie
(119) 2023/10/01(Sun) 11:03:51

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>119

引っ掴んで頭を地面に叩きつけさせてやるには至らず、指はぱっと離される。
その代わり、指が潰れるほどではなかったのが幸いだ。
相手の不利を狙って畳み掛けるのが承知の人間が着地を見守っているか。
そんな筈はない。地面に落ちた雁を狙わない銃口は無い。

追う脚が一歩を大きく切り詰める。
互いに考えることは同じらしかった。
息をする間も与えまいと、両拳を使って顎下から肩、肋の合わせ、
そうでなければそれこそ向かってくる拳に平然と合わせて殴打を叩き込む。
それでもどうしたって肩の潰れた左腕は動きも鈍く痛みも走る。
右拳のように、相手の卑怯をお構い無しに血を上げながら迎え打つなんてのは出来ない。
そうしている間にも相手の左拳に挟んだ鈍い刃は己の拳や顔面を裂いていた。
新しく出来た傷口にまで、先に降り注がれたアルミ片が皮膚から剥がれ落ちて潜り込む。
いずれは勢いを失わざるを得ないのは必至だった。

だからそれを補うものが必要だ。
シガーカッター代わりのナイフはまだ左手にぶら下げられている。
勢いの無い左拳は代わりに、右拳に紛れて相手の上体を裂きに掛かる。
別段手段を選ばないのはそちらばかりでもない。

そして連撃の迫間、左手が引きに入った瞬間を見計らうと、
点対称の右足は視界の外より、相手の左足の肘を踏み付けにするように蹴り込んだ。
次に何が来るか予測するように、僅かに長身の背が曲がる。

#BlackAndWhiteMovie
(120) 2023/10/01(Sun) 11:23:16

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>120

極至近距離での白兵戦で、完全に攻撃を避けることなど不可能だ。
姿勢を僅かに整えるまでの数瞬に、
殴打は筋肉と骨で、刃は服の表面で受ける。
みしりという音が体内で響いて、足先が思わず溢れ、
それでも牽制を幾度と放ち、
そのまま押し込まれることを防ぎ切る。

体躯では負けている。
体重ウェイトというものは格闘戦において絶対だ。
それでも、正面からぶつかり合う。僅かでも腕のうちに潜り込むように身をかがめて、

「っ、づ」

抉りこむような蹴りが、突然そこに現れたかのように肉を打つ。
ばぢん、という音を遠くに聞きながら僅かに体を引いて、
じんと痺れる足をかばうよう片足でかるくステップを踏みながら、ノックするような軽く早い拳をフリッカージャブ叩きつける。

体力と血液を絞り出すかのように打ち、打たれ、削り合う。
喧嘩でも殺し合いでもある、それはひどく原始的な闘争だった。。

#BlackAndWhiteMovie
(121) 2023/10/01(Sun) 11:39:49

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>121

眼前を血しぶきが舞う。鈍くえぐれた傷口は鮮やかな肉を垣間見せ、直に赤を滲ませた。
段々と温む拳と襟首がその凄惨さと、負ったダメージを物語っていた。
休みの一つも挟まない連打は徐々に勢いは鈍っていく、故に仕切り直しの蹴りを放ったのだ。
持っていけなかったのなら足は弾むように引き戻されて地面を叩く。
その勢いのままに体は沈み込み、肩より下まで降りた。
幸いであったか不幸であったか、予測による行動が拳の当たる先を決めた。

「ぐ、」

ジャブは傷ついた右目の端を掠めた――正確には掠めただけで十分だった。
瞼の横手を叩いた拳は元よりあった傷を広げ、こめかみまで薄い肉を切開した。
潰れて瞼の中に溜まっていた、眼球だったのだろうものがどろりと頬を落ちる。

沈んだ体はナイフを握った左手を回すように後方まで引き絞らせる。
胴を狙うか、脚を狙うか。選んだのはそれ以外だった。
顎下を見上げられるくらいまで沈み込んだ姿勢から焦点を合わせる。
アッパーカットの要領で、逆手に構えたナイフを腹部から頭部まで駆け上がるように振り上げた。
深く当たれば骨に当たって止まる。浅ければ傷は広がる。
逆手に持ったのは射程を腕の長さより外へと伸ばすためだ。

今の状況において表情を緩めていられるほど余裕があるわけではない、というのは、
筋肉を緊張させておく必要があるからだ。そうでなきゃ、笑っていた。
これが楽しくない筈がない。

#BlackAndWhiteMovie
(122) 2023/10/01(Sun) 12:10:40

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>122

「ッダ、…っあぁ゙あ!!」

振り上げられたナイフに対し、踏み込んだのは本能的な反射行動だった。
刃ではなく、それを握る腕を止める。
それもガードと呼べるものではなく、飛び込み、胸板で受けるだけ。
どんという衝撃が肺を貫き呼吸を止めるが、
構わず、かじりつくようにナイフごと腕を抱き込みひっつかむ。

「……
っラ、
ぁ゙!!」

命を振り絞るような格闘戦では、ぱたた、と水音が響くものだ。
それは汗か涎か、血か、あるいは髄に近いものか。
生命の雫が撒き散らされていくように
二人の足元になにかが飛沫く。
笑顔はない。
だが高揚し、滾り、燃えていた。
その勢いのままに大きく体を捻り、
砲弾のようなストレートが放たれる。
技巧も戦術も殴り合いの中に消えていき、
あるのはただ肉と骨を叩きつけるような気迫だけ。

#BlackAndWhiteMovie
(123) 2023/10/01(Sun) 12:19:44

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>123

ぎ、と歯ぎしりをする音が鳴る。肩を砕かれている左腕を固められれば、
どうしたって押し引きに依る力の均衡は負傷した部位に集められる。
呼吸が乱されれば攻防のリズムも自然と崩れる。

掴まれた腕を引いて振りほどこうとして、軸足に体重を掛けた、
その瞬間に破裂音じみたものが響いた。
体重の乗った一撃は頬を殴りつけ、ぐらりと首から上を揺らした。
まともに食らえば隙を生じる。ふ、と体から力が一瞬抜けた。
それしきで降参なんてつもりはないが、一手分の空隙を晒すには十分だった。

密着した体の間で、からんとナイフが地面に落ちる。
一瞬吹き飛んだ頭の中身を引き戻して攻め手を考えるにしたって、
どうしたところで相手の次撃が先になる。

#BlackAndWhiteMovie
(124) 2023/10/01(Sun) 12:43:24

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>124

振り抜いた腕が、拳が、びきびきと軋む。
指がひしゃげてしまったかのような衝撃。
─構わず、再び握り込む。

「…、っ、お休みしてンじゃ、ねえぞおっ!!」

ナイフの音、体勢、隙。
それらを自覚しながら、けれどどうでもよかった。
2度。3度。その一撃一撃で殺すつもりで、
拳を叩き込みながら前に出る。

突き進む。
もつれ合うほどに飛び込んで、めちゃくちゃに殴りつける。
どちらのものかもわからない液体が飛んで、びたびたと落ちていく。

それらすべてを振り払うように足を振り上げて、
そのまま蹴倒す様な前蹴り。
姿勢を崩せば、あとは絞め殺してやるだけだと、

前へ。

#BlackAndWhiteMovie
(125) 2023/10/01(Sun) 18:22:36

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>125

数度に渡り拳が頭部を殴りつける。頭を上げはしない。
上げられないのは顎を打たれるのを厭んで、頭蓋の丸みで受けているからだ。
それだって苦し紛れのやり過ごしであって、ガードしたほうが良いのは確かだ。
顎を引き、狭い視界で相手の拳の動きを潜り込むように見遣る。
それでもまだ尚眼光は諦念を宿しては居なかった。
いつも日常を過ごし、他人と過ごしている時よりもよほど活き活きと殺意に燃えていた。

「っ、づきは」

攻め手を変えた動きを、見ていた。
ふらつく頭をどうにか押し戻し、屈めた姿勢は蹴り"に"立ち向かった。
傷ついた左手が脛を掌底で受け、浮き上がらせた膝の下に肩を半ば差し込む。
重心を上にずらさせながらに踏み込んだ体は右肘を前に出して滑空し、
全体重を肩から肘の上腕筋に乗せて鳩尾めがけて倒れ込むような、
頭上まで持ち上げない形のパワーボムだ。

「地獄か、――」

日の頂点の沈みつつある、海の音が近かった。
踏みとどまることが叶わなければ互いの体は、海の中へと落ちる。

#BlackAndWhiteMovie
(126) 2023/10/01(Sun) 18:47:05

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>126
がつがつと頭蓋骨を殴りつける拳が、恐らくは指としての機能を失いつつある。
だとしてもそれは打突部位として、最後までそこに在る。

だったら、十分だ。

いつのまにか取り落としてしまった車のキーは、もう見当たらない。
苦し紛れのように腕時計を外して、それを握り込み、
僅かに重みを増した拳を何度も何度も叩きつける。
油断は、しない。慢心も、しない。
このまま殺しきるつもりで打ち、殴り、叩き、蹴る。
呼吸することすら忘れ繰り返す打擲の末、

「っ、お」

先ほどナイフを握る掌を受けた時の、逆回しか。
蹴りが威力を発揮する前に受け止められ、
ぐわんと体が持ち上がる。不味い、と体を引く――

より
、も、
そんなことよりも。


「…っがッ!!!」

一撃入れる・・・・・ことばかりが、脳を焼く。
持ち上げられた肩口に重心を預けて、倒れるに任せて。咄嗟に跳ね上げた軸足を折りたたみ、

  ――顔面に、膝を叩き込む。

踏みとどまるつもりは、なかった。もろともに海へと叩き込むその狭間に、がづん、と。
#BlackAndWhiteMovie
(127) 2023/10/01(Sun) 18:56:14

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>127

血の絡んだ髪が引きちぎられて頭皮が飛び、切れた瞼の下からは白い骨が見える。
鼻骨は折れて元の面影を残す面は少しずつ削られて尚、スカイブルーが貴方を見ていた。
しっかり組み付き切った膝は肩でホールドしたまま。
脚が地面を蹴る。二人分の重さが急に重力を失ったようにふっと軽くなって、
きらきらと海面の光る水の上へと投げ出された。

それでも尚視界に迫る膝を見て咄嗟に出来たことと言ったら。
勢いをつけた殴打は手段としては取れない。
基点となっている肘をぐるりと回して、指が伸べられたのは、
包帯で塞がれた、傷ついた眼窩の内側だった。

どっちが有効打であったのかが判明するよりも早くに、
スローモーションで動く秋の海の冷たさが迫ってきていた。

#BlackAndWhiteMovie

(128) 2023/10/01(Sun) 19:11:27

【人】 Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ

>>127

――続きは。

「海の底で、やるか」

これで決着がついたとは思わない。相打ちだとも思わない。
だったらこれから先の予定なんてのも決まっている。
それを未だ楽しみだと思えることにか、まだ互いを付き合わせていけることにか。
着水の瞬間、ようやく頬を緩めた。

果ては地獄の底でさえあっても。

#BlackAndWhiteMovie
(129) 2023/10/01(Sun) 19:11:38

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡

>>128

「てめえ」

口を大きく開いて、
    赤い飛沫が白波を横切り、
橙の燦光が瞼を過り、
    視界と天空が回転する。

「なあ」

がづん、がづん、がづん、がづん。
   肉と骨が打ち合う衝撃が、今も続いているのか、
それともずきずきと鈍く残る残響なのかもわからないまま。
  誰も逃れられぬ運命のごとく、
                重力が追いついてきて、

 

    「──ふざ」







#BlackAndWhiteMovie

(130) 2023/10/01(Sun) 19:18:23

【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡



   音も衝撃も、感じなかった。

   気が付いた時には、全身に泡がまとわりついていた。

   どちらが漏らしたものかもわからない
   気泡が全身を覆って、
   海面で乱反射する夕日が薄暗く差し込んで、


がぼ。



この泡は、自分の口から出たものだ。
それだけを自覚しながら、

  ごぼ  ごぼぼ。

  ――握り締めた拳を、そ
の顔面に
叩き




#BlackAndWhiteMovie

(131) 2023/10/01(Sun) 19:19:32

【人】 黒眼鏡

>>133 >>*2



   
ばぎん、と。

   海中で一発、その鼻面に拳が届いて。





#BlackAndWhiteMovie
(134) 2023/10/01(Sun) 19:25:01
黒眼鏡は、ヴィンセンツィオとケリをつけた。 #BlackAndWhiteMovie
(a44) 2023/10/01(Sun) 19:25:35