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【人】 口に金貨を ルチアーノ薄く太陽に陰りをもたらす空の下。 ルチアーノは片手にブーゲンビリアの花束を持ち何度も足を運んだガレージの前に居た。 そこに同じく見飽きるほど身近に感じていた赤のフィアット500が収まることは二度とない。 鍵のかかっていない扉を開ければ真っ直ぐいつもの場所へ。 ここは誰が入ってくるかもすぐわかる席で、カウンターに立つ長躯も良く見えた。 「あんたにじゃないぞ」 花束を置いてから店をじっくりと見渡して、一つ息を吐く。 もうこの空間が無くなるのは時間の問題だ、珈琲は飲めなくなるし、皆でたまに顔を合わせた時間もなくなる。 暫くしてからテーブルにうつ伏せ目を閉じた、ここでもやっぱり眠れそうだ、今はとても疲れていたし誰も来なければ許されるだろう。 何処か穏やかな気持ちで別れを受け入れることができている。 怒りや殺意がないとは言わないが、楽しそうであったのだ、 そんな男の姿が見れて自分が嬉しくないわけがない。 ただ今は静かに休んでいたい。 大好きだったこの場所で、彼の愛したものへの想いが籠もったこの場所で。 #Mazzetto (94) 2023/09/30(Sat) 18:15:27 |
【人】 アリソンに捧ぐ鐘 黒眼鏡>>a33 店に置きざりにされていたコーヒーミルには、 「使用禁止 廃棄しろ」という張り紙がある。 どうも食品ではないものを曳いたらしい。 喫茶店の風上にもおけない所業だ。 ガレージはがらんとしていて、 けれど多くのものがそのままだ。 それはきっと、戻ってくるつもりだったからではない。 このままにする以外に、なかったのだ。 それ以外に、何を足すことも、何を引くこともしたくはなかった。 潮風だけが、その憩いを見守っていた。 #Mazzetto (95) 2023/09/30(Sat) 18:41:27 |