─水曜日・夜/自宅─

……あれ、メールが届いてる……？

[ようやく家に帰ると、誰かからメールが届いているらしい。
開いてみると、３年の阿倉台先輩からだった。

何度か講義が同じになったことがあって、その時に連絡先を交換したんだったか。]

合コン……

[俺は知っている。この世界における合コンはだいたい女の子は女の子同士で固まるし男は男同士で固まるものだと。

しかし、こういうイベントでもないとモブの俺には女の子と知り合う機会が！　ない！！
ということで、一も二もなく返事を送った。*]

─木曜日・正午/私立野薔薇大学・廊下─

[今日はいつもより少しお洒落をして学校へ来た。あくまで、モブとしての両分を弁えた範囲内で、だが。

そしてスマホを取り出して、メールを開く。
宛先は、先日交換したばかりの宮野に設定。

先日借りた本を読み終えたから、返却したい旨をメールの文面にしたためて送信した]

─木曜日・正午/私立野薔薇大学・中庭のベンチ─

うん？　そりゃ、まぁ。人並みよりちょっとあるくらいには。
別に謝ることじゃないから、気にしなくていいよ。

[幽霊だって見たことがあるし、そもそもこの世界がBLになる世界だと気づいた時点でハチャメチャなオカルトだ。自分で自分が恐ろしい。
ファンタジーやメルヘンじゃあるまいし、と一蹴できたら良かったんだろうなとはちょっとだけ思う。]

ミス研……は、興味がないと言ったら嘘になるけど。
俺だとちょっと威圧感あって怖がらせちゃうだろうし、人のいない時間帯にお邪魔させてもらおうかな。

あと、俺のお勧めは……はい、これ。
夢野久作の『ドグラ・マグラ』。有名所なのが申し訳ないけど……
読むたびに様々な解釈ができるから、好きなんだ。

[お誘い>>27にはひとまず曖昧な形で返しておいて、続いたお勧めの本には世にも名高い奇書の名を挙げた。
これは俺なりのフラグクラッシュ処世術の一種でもある。
こんなものを勧めてくる人間と関わろうとする人は、この世界でNLを成立させることができた人間以上に希少種だろうから]

─木曜日・17時/私立野薔薇大学・玄関─

[いよいよ勝負の時が近づいてきた。
黒峰の血を絶やさずにいられるかは俺の両肩にかかっていると言っても過言ではない。
なぜなら俺の弟は既にBLの世界に絡め取られ陥落してしまったからだ。
それ自体を悪いことだとは思わないし好きにすればいいとも思うが、
それはそれとして俺は女の子が好きだし子孫を残したい。

そわそわしながら、約束の駅まで向かうことにした]