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人狼物語 三日月国


45 【R18】雲を泳ぐラッコ

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[「お気に入りのクッキー」は……まぁ、間違ってはいない。
屋敷では澄ましている事が多いのに、
今日は子供の様に目を輝かせている。
そのきらきらの瞳にあてられると、ふっと笑みがこぼれる。
多分、うちのパティシエが作ったのの方が美味しいぜ、とは言わないでおいた。
店員の前じゃなければ言っていたかもしれないが]


  楽しい? よかった。


[聞いた事をふんふんと覚えようとする姿も珍しくて、ついじっと見た。楽しい、と言われれば、ほっとする様な、嬉しい様な気持ちになる。
片手が塞がれて不便ではないだろうかと少し心配したが、彼女は問題なくついて来た。
と思ったら、瓶を抱えていて思わず噴き出した。
いやそんなに買わねぇよと笑った。
店員にも声を掛けられている姿に、
こちらが楽しませてもらってしまっている事に気付く。
レシピをすらすら読む彼女には、「小麦粉が入ってたんだすげえな!」と合わせてみたら自分でおかしくなって肩を震わせた。
試食の皿もクッキーと勘違いした彼女には感心した。
流石頭の出来が違うなぁとおどけて言ったが、
なかなか良いアイデアじゃね?と店員に振って店員を困らせた。

ちょっとうるさくしてしまったけれど、
ずっと彼女の手が離れなかったのは、
ただ真面目なだけではないと思う。
きっと嫌ではないと汲み取れて、己は終始笑顔だった]

[彼女の好きなクッキーと、自分の好きなクッキーと、
レモンと甘い香りが詰められていって、
小さなしあわせぶくろが出来上がった。

こちらが財布を出す前に鼻息荒く彼女の財布が飛び出して、ええと、と言い掛けたけれど、まぁこのへんはいいか、と苦笑した。別に悪い訳じゃないし。淑女はこうはしないイメージだが、オレに恋人を教えろって言ったんだから、平民のデートでいいだろ、多分。
小さく驚いた振りをして、ありがと、と呟いた。
店員に、女に払わせるのが当たり前の男に見られるのが嫌だという、格好の悪いただの見栄]

[見栄を張った後は、増えた荷物に失敗した、と思った。
上手くリード出来ないのが悔しくて、
すぐに対処法を捻り出した。
流石に抵抗があるかと思ったけれど、
食べ歩きも彼女は批判しなかった。

それでもやはり育ちがよいせいか、
立ち止まって食べる事になった。
そこで感じた差を、割ったクッキーを二人で食べて埋めた様な気持ちになった。

クッキーの袋に集まる様に少し身を寄せて、
再び歩き出したらまた少し離れて、
時々人を避ける様に彼女が身を寄せて来たり
逆にこっちが彼女の方へ寄ったり……]


  ええと……


[ご飯が酒のつまみだと言われて
説明もしてもらったが、「まぁ後で行けばわかる」「食べきれなかったらオレが食べるから」と手抜きな回答になった。


心や身体や立場や知識や経験が寄ったり離れたり、
また寄ったりしながらデートが続く先に、
彼女が心惹かれる店があった様だ]

[リボンは別に、と通り過ぎたが、
彼女の入りたがった店にはじっと視線を向けた。
ピアノ。
彼女の得意なそれは、何度か耳にしている。
音楽がよくわからない己でも、
聴けば落ち着く曲もいくつかあっただろうか]


  勿論。
  一つと言わず、気が済む迄。


[言った後、
ピアノをまさか買う訳ではないかとちょっと過ったが、
彼女のお目当ては楽譜の様でほっとする。

興味が薄いものでも、
恋人と一緒なら楽しめるところもあるかもしれない、とか意見を述べるタイミングは逃して、荷物も大したものじゃないだろう、お願いっておおげさだなぁと笑った後、

二人きりになると、
彼女がどこか屋敷のシャーリエの顔で話し出した]

【人】 二年生 小林 友



  なんでも、しんとした、
  澄みわたった夜が、星たちには、
  いちばん好きなのです。
  星たちは、騒がしいことは好みませんでした。
  なぜというに、星の声は、
  それはそれはかすかなもので
  あったからであります。

  ─────『ある夜の星たちの話』
             小川 未明

 
(47) 2020/10/01(Thu) 22:50:26

【人】 二年生 小林 友

[結局「アキナ」の情報もないまま
 家に帰ってきてしまった。

 顔色を覗き込むような母親の顔から逃げるように
 自室に籠って、俺はまた本を開くだろう。

 読み慣れた本の世界に、ではなくて
 目に見えない女の子との会話に夢中。

 いっそ、ソシャゲの推しを引くために
 ウン万つぎ込んでる、とかの方が
 親も心配しなかったかもしれない。
 ……なんて、部屋の外から話しかけてくる
 か細い母さんの声を聞いて思うんだ。]
(48) 2020/10/01(Thu) 22:50:44

【人】 二年生 小林 友


  「……ねえ、リビングでお茶しようよ」

  …………。

  「あなたが好きだった、裏のケーキ屋の
   バームクーヘン、あるわよ」

  …………。

  「ねえ、友。何かあったら話した方がいいわ」

  ……何も無いよ。今、本読んでる。

  「何も無いなら、それでいいから。
   一緒に顔みてお茶飲もうよ」

  ……本、読んでるから。

  「…………そっか、ごめんね」
(49) 2020/10/01(Thu) 22:51:33
 
[それは例えば寝癖で一束だけ跳ねた髪を
 見つかってしまったときや
 声を上げて笑ってしまったときに
 吐き出された溜め息とは
 質が異なるものだ。

 温かい吐息と彼の言葉が
 開かれたワイシャツの間の肌を撫ぜ
 熱を持つ二粒とその奥の心を震わせる。]


   ……、……


[脂汗を噴き出させる痛みは
 相変わらずあった。

 けれど、味わったことのない幸福感が
 次から次に溢れてもいて
 痛みによる辛さと綯い交ぜになる。]
 

 
[新しい自分に変わっていく。
 けれど、不思議と怖くはない。

 
────かの男も、復活を遂げる前には

 
手足を貫かれて磔られ、痛みを伴ったものだ。


 生まれて初めて吸った空気は彼の――、
        在原治人の、匂いがした。]
 

 
[濡れる顔を包むように触れられれば
 混ざり合ったそれらはいよいよ
 結合してしまったのだろう

 嬉しい、正の感情だけが残り

 とろりと蕩けた瞳で
 彼の左目、……右目、…また左、と見つめ
 頬は血色を取り戻し淡く色づいていった。

 同じ色の唇を、ゆっくりと動かす。]


   ……、……


[けれど、饒舌になった彼とは裏腹に
 僕の口からは言葉が出てこない。

 貴方のことをもっと知りたい。
 僕のことを知って欲しい。

 そんな欲が確かにあるのだけれど
 音に換えることが出来ない。
 頬に伝わる温もりに、声を奪われてしまって。]
 

 
[七週の間、
 何度焦がれ、何度妬んだことだろうか。

 あの標本を作り上げたこの掌に。]



   (あったかい……)



[安くはない代償を払って
 危険な海の外に出て
 最期には泡になって消えてしまうだなんて
 馬鹿のすることだと思っていたけれど

 W声を犠牲にしてでも逢いに行きたいW

 その気持ちが少しは理解出来た気がする。]
 

 
[言葉で教えて貰うのではなくて
 この世界一の職人の掌を通じて
 教えられたい。

 贅沢にも、そう願ってしまう。]


   ……。


[唇を結び直せば、緩く弧を描かせて
 ふ……、とただ微笑みを浮かべた。

 貴方に仕上げられることを
        望むだけの作品だ。**]
 

【人】 二年生 小林 友

[─────昔、小学校の頃
 俺はいじめにあっていた。

 嫌なくじ引きに当たった……みたいな
 特に深い理由もなくそれは始まった。
 朝一番の「おはよう」に誰からも返事がなくて
 それを切っ掛けに、靴が無くなり
 教科書やノートも消えた。

 友達だと思ってた人達が、
 ある日突然敵に変わる。
 何故?と問うても誰も答えない。

 それで……少しだけ、堪えてみようと思った。
 何が原因かは分からないんだから
 少し待てばまた前みたいに友達になれると思って。

 待って、待って、待って、待って、
 待って、待って、待って、待って……
 でも全部元通りになるより先に
 俺の心が折れる方が先だった。]
(50) 2020/10/01(Thu) 22:52:00

【人】 二年生 小林 友



  かあさん、おれ、がっこういきたくない。


[そう、勇気を出してしぼりだした時
 母さんは半狂乱になって、自分を責めてしまった。
 何も気が付かずのんきに息子を学校に送り出して
 暗い顔してても勇気を出せと言うばかりの
 何も分かっていなかった自分を。

 結局、母さんが学校に突撃して
 いじめは急速に収まったけど……
 でも元通りにはならなくて。
 というか、元通りに接しろ、なんて
 俺自身が無理だった。

 元通りに笑えないし、喋れない。
 何話していいかも分からない。
 相手の目を見た時、冷たく歪んでたらどうしよう
 ……そう考えたら、目すら合わせられなくなった。]
(51) 2020/10/01(Thu) 22:52:31

【人】 二年生 小林 友

[そうして小学校を卒業して
 中学から、高校まで。
 幸いまたいじめられることはなかったけど
 一度ついたオドオドした態度は変えられない。

 特にこの桐皇なんか、良い奴ばかり。
 ……だけど、俺だけがずっとダメなまま。

 何も心配いらないよ、母さん。
 あんたの息子は今日も
 良い奴にだけ囲まれて過ごしてた。]
(52) 2020/10/01(Thu) 22:53:04

【人】 二年生 小林 友

[他愛のない会話だって自分でも思う。
 本当に面白いやつはもっと違う話をすると思う。

 それでも必死こいてる自分を
 どっか冷静な自分が冷ややかに
 笑ってることすらある。

 それでも。]
(53) 2020/10/01(Thu) 22:55:17

【人】 二年生 小林 友



[たったそれだけなのに
 神様はひどく残酷なことをする。]*

 
(54) 2020/10/01(Thu) 22:59:27

【人】 二年生 小林 友

[俺がバスケ部でもないし陽キャでもない
 ただの卓球部のクソ幽霊部員で、
 教室の隅っこで震えてるだけの人間だって
 アキナにだけは知られたくない。
 知られたく、なかった。

 なのに、どうしても会ってみたくて、
 勇気出して陽キャに声なんかかけて。
 矛盾してるのは分かってるけど、でも。

 なのに、違和感は募るばかり。]
(55) 2020/10/02(Fri) 0:41:59

【人】 二年生 小林 友

[だって、おかしいだろ。

 友達とカラオケも行けない世界って?

 田舎のじいちゃんが「帰ってくるな」って?

 街から人が消えて、

 世界中で戦争みたいにひとが死んで……

 おかしいだろ。ありえないだろ。

 漫画かハリウッド映画の世界みたいじゃん。]
(56) 2020/10/02(Fri) 0:51:57

【人】 二年生 小林 友



[俺は、そんな世界を知らないんだ。]*

 
(57) 2020/10/02(Fri) 0:52:40
二年生 小林 友は、メモを貼った。
(a13) 2020/10/02(Fri) 0:53:32

 




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