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【人】 略奪者 ラシード……っは、はっ………はぁっ……… [奔る、奔る。 四足獣の遺伝子を継ぐ体躯に熱い血を巡らせて。 何処かから、まるで散歩の最中みたいな 明るい調子の声が聞こえる>>1:97が、 決して脚を止められるような安全地帯ではない。 走り慣れない痩せ細った脚で、 無我夢中己の背を追う人影の幾つかは、 サンプルが、だとか、綺麗に扱え、だとか喚いている。 忌まわしい。穢らわしい。面倒極まりない。 だがその辺りの馬や車を奪う余裕すらない。 その気になれば”共犯者”の寺院>>1:76に 無辜の市民を騙って駆け込むことも叶うやもしれないが 己の目的は、助かることではない。 この匣から、一族の誇りを────救い出さねばならぬ。 故に、向かうべき座標はひとつだけ。港へ、港へ。]* (1) 2022/11/10(Thu) 0:01:27 |
【人】 略奪者 ラシード[ 祖が、しろがねの誇りが、 海の果てに囚われ続けていると知った。 美しき獣、稀少な宝物として。 畏怖の象徴、伝説として。 人喰らいの怪物という脅威を克服した、 トロフィーとして額縁に掲げられている事実を。 其れは平凡な、そう、 大陸であれば何処にでも居るような 不幸な奴隷として貶められた獣人にとって。 憤怒であった。悲嘆であった。絶叫であった。 隷属の首輪で締め付けられた喉笛で、 遠吠えは夜を劈き、それでも彼は孤独だった。 その血族は、もはや途絶える寸前だったのだから。 故に鎖を食い千切り、狼の仔は闇の中へと 希望を求めて抜け出した。 ] (9) 2022/11/10(Thu) 2:31:46 |
【人】 略奪者 ラシード[ けれどもそれは、 道化の顔したお医者様のせい、だけじゃない。 略奪者達がペンを走らせ 計画を張り巡らせた紙面の余白で、 ありとあらゆる因果が重なった結果だから。 燃える筈の無かったお屋敷が燃えました>>1:61。 港に向かうからくり車が火の雨>>1:92を避けて、 本来通る筈だったルートを逸れました。 人口密度の低い道を通る予定が、 賑やかな通りを通らざるを得ず。 狂乱を避けた血溜まりの路地>>1:84 で、 同胞の証>>1:94を身に付けた尼を避けようとして ぬめる血液で車輪をスリップさせました。 首魁と合流するはずだった、 その地点への到着に───間に合わなかった。 だから仔狼は余計な距離を奔ることになって、 其処にちょうどよく、 石ころが飛び込んできたのだから。 ] (12) 2022/11/10(Thu) 2:34:10 |
【人】 略奪者 ラシードあ、 [冷たい地面に倒れたまま、 身を起こす猶予もなく───人狼は己の肩越しにそれを見る。 あのしろがねを取り戻す為に命を使うと決めた。 至高の祖の為に島ひとつを滅ぼすと、 その為なら利己の獣になっても良いと、 幾ら命を踏み躙っても良いと己に刻んだ。 正義も罪も、集団が秩序を保つためのまやかしだと断じ、 己の血の誇りはそれを上回る尊きものだと、信じていた。 祖のために。 そのために。 その、 ために。 きらきらと、赤い視界の中で銀の毛が舞う。 皺を眉間に刻む程度に年月を生きたであろう学者たちが。 分厚い眼鏡を掛ける程には勉学に没頭したであろう若き研究者たちが。 我先と、掴み取る。引き千切る。ずたずたに刻む。 しろがねの誇りを。彼の生きてきた意味を、理由を、 まるで菓子を奪い合う子供のように、 無邪気に、楽しげに、しあわせそうに、罵り合いながら この島を呪うに値するほど───── 彼が、欲してやまなかった、 たからものを。] (14) 2022/11/10(Thu) 2:36:21 |
【人】 略奪者 ラシードあ、 あ、あああ、 あ、 うそ、 う そだ、…… そんな、 [震える声。否、それは声なのか? 痙攣する喉笛は歪な音を漏らす。 その口にも鼻にもまだ、呪香から肉体を守る まじないの赤は当てがわれているというのに 寧ろその色は死人めいて蒼白になった 肌の色を浮き上がらせている。 見開かれた目。ぶるぶると乱れる瞳孔は乾いて。 唇は断続的に何か紡ごうとしては、はくはくと上下するばかり。 標本箱に鋲を打たれ、 。]翅を広げられた蝶のように。 未来を奪われ。尊厳を奪われ。 生気無く引き攣って、 抜け殻めいた形を残して静止した、 或る男の望んだ、絶望の形 (15) 2022/11/10(Thu) 2:37:34 |
【人】 略奪者 ラシード[ 其の一瞬の変異は、例えるのならば 内臓が皮膚を食い破ったかのようにすら見えただろうか。 白い皮膚が裂け、赤い筋肉や黄色の脂肪が飛び出し。 銀の毛の塊をその隙間からざわざわと蠢かせながら 人間をひとまわり、ふたまわり超えた体躯へと肥大化する。 ごき、ごきん、ぱきん、 と圧し折る音は 砕けるよりも寧ろ、殻を破って成長を繰り返す地虫のよう。 口元を覆った赤い布がぱさりと落ちれば、 其処には鋭く、白い牙が並ぶ口が長く飛び出す。 じぶじぶじぶじぶ。肉に焦げ目を付けるようなざらつく音も よくよく見れば滲出した体液が少しずつ、 巨大化した身体に皮膚を形成して覆っているのだとわかる。 毛虫が這い上がるかの如く其処に被さっていく銀の毛皮は、 研究者たちに撒き散らされ、ちらちらと大気を舞うそれとよく似ていた。 ぼろ雑巾のように小さく千切られてしまった毛皮を 血だらけの指でなお奪い合う学者たち。 その1人がふと、若い獣人だったモノの方に視線を向け。 上げたのは、 歓喜 の声であった。 ] (17) 2022/11/10(Thu) 2:39:31 |
【人】 略奪者 ラシード[ 喜びの声は色を変えぬまま、断末魔へと変わる。 それでも尚、楽しげに飛びついていく学者達は 次々と、次々と、小さな肉塊へと分解されていく。 彼等が無邪気に分けあい、奪い合った、 たった一枚の毛皮のように。 欲望に染まった檻の中。 噴出した銀色の殺意は───人狼は暴れ狂う。 その遠吠えは昇る月に捧げられるかの如く、 高く、遠く、火の粉舞う夜空へと響き渡っただろうか。 ]* (19) 2022/11/10(Thu) 2:43:44 |
略奪者 ラシードは、メモを貼った。 (a5) 2022/11/10(Thu) 2:57:22 |
(a6) 2022/11/10(Thu) 3:00:01 |
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