68 【身内】空想模倣機体は駒鳥達の夢を見るか?【R18G】
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| >>431 ハマル 「うん……、うん」 ハマルの抱擁を受け入れる。 背中に手を回す。 数日振りの抱擁は。 小さくて、思ったよりも大きくて。 ……温かかった。 キファはハマルに、 ”連絡先”を渡さなかった。 ハマルの前では、ずっと、『キファ』で居たかった。 → (441) 2021/05/04(Tue) 0:17:06 |
| >>431 ハマル ああでも、どうだろう。 ホワイトボードに記されたハマルの連絡先を、 このプレイヤーは覚えている。 だから。"proxy"を脱出した後。 その記録を確認した『秋葉義一』が、 『日辻春』に連絡を取ることも、あるかもしれない。 未来の話だ。誰にも予測できない。 良い意味でも。 「吾もだ。 ──実に好い人生だった!」 これで悔いなく行ける。 ”天啓”を得る必要は、もう無い。 標はちゃんと、ここに在る。 「ありがとう、ハマルよ! おまえの旅路に、祝福が有らんことを!」 → (442) 2021/05/04(Tue) 0:18:43 |
| >>431 ハマル それが、お別れの代わりだった。 「さよなら」は言わない。 また会う約束をひとつ、交わしたから。 ハマルの言う通り。 『キファ』が『ハマル』に会うのは、 これが最後になるのだろう。 ……綺麗な海だった。 233年の人生の中で、一番綺麗な海だった。 キファは、忘れないのだろう。 たとえ、生まれ変わっても。 (444) 2021/05/04(Tue) 0:19:32 |
| >>386 メレフ 「……半分外れ、半分正解。 この街に残るか、脱出するかの話だ。 だが、今の答えで理解した」 指先で薄翠の髪を弄ぶ。 「いや、何。 同じくらい永きを生きたおまえに、聞きたかったのだ。 "orion"を出ることは、自らが消えるのと同義よ」 特に、キファは秋葉義一と完全に意識を切り離していた。 それでいいと思っている。覚悟だってしているつもりだった。 明るい別れがモットーだ。 だから。大好きなサダルにも、 ヌンキにも、ルヘナにも、話していない。 これは、境遇の近いあなたにだけ、話すこと。 「寂しいだろ? この世界が好きだっただろう? おまえにとって、この世界は簡単に諦めきれないほど 大切なものだっただろう?」 でも、どうやら。 存外、自分は未練たらしかったらしい。 だってまだ、ハマルと海にだって行ってない。 (448) 2021/05/04(Tue) 0:55:28 |
| >>450 メレフ 「ノリの悪いやつめ」 キファはむくれた。 「死ぬことは、……もう、怖くない。 唯、そうだな。 慣れ親しんだこの世界との別れが、寂しいのだ」 キファは仰々しくため息を吐く。 「わからぬなあ。 それじゃあ、おまえの自我がどこにあるのか 分かりゃしない。 だが、そうか。 おまえにとっては、”この世界”も、”寂しい”も、 きっと範疇に無いのだろうな」 同じところを見ているようで、 きっと遠いどこかを見つめている。 互いに。 「全く、本当に。 近くて、分かりあえないやつ」 (453) 2021/05/04(Tue) 2:00:27 |
| >>454 メレフ それはキファにとって、思ってもみない提案だった。 ……メレフという人間の、コア。 「行く」 そう答えたのは。 キファが、”そのもの”だったからだろうか。 『秋葉義一の死んだ妹』をモデルにしたアバター。 それが、キファだ。 見てみたかった。 人生のほとんど全てを妹に捧げた兄の、生きた証が。 残された時間は少ないわけではないが、 多いわけでもない。 ハマルと旅に出る予定があるのだ。 向かうとなれば、キファはすぐにでも出発できるだろう。 (477) 2021/05/04(Tue) 14:10:51 |
| >>479 メレフ 「……いや、何。あの『等価交換』の祭壇を 拝めるというのだ。神秘主義者としては見逃せなかろ?」 冗談めかして、橋の下を潜り抜ける。 互いに深い理由があるのは、知っている。 だが、道中を神妙な空気にさせる理由もあるまい。 そんな風に適当に語り合いながら、 祭壇へと向かう。 「おお」 相変わらずの彼の隠蔽魔法の精度の高さに、 キファは感嘆した。 「入っても?」 (481) 2021/05/04(Tue) 14:43:38 |
| >>483 メレフ 『邪魔するぞ』と、誰にともなく 投げ掛けた。 「蜥蜴が逆さまに吊られていたりは。しないんだな。 吾のギルドみたいに」 言われなければ、『等価交換』とは気づかないだろう。 そんな、洒落ているただの邸宅。 その筈なのに、奇妙な郷愁を感じさせるのは。 数十年、百数年の歴史があるからだろうか。 「否。吾は唯、本当に長生きしたいだけよ。 その為に選んだのが、神秘的領域だっただけのこと。 おまえと同じ道を選んだのだ、吾は。 異なるのは。”誰かの為”ではなく ”自分の為”という所だろうな」 『ほら、はよ見せよ』。そう促す。 どうやら、キファにも見学したい理由があるらしい。 (484) 2021/05/04(Tue) 15:27:58 |
| >>487 メレフ 「良いんじゃないか」 例え、禁忌だろうと。キファは否定しない。 同じ言葉でも、全てが明らかになった今、 持つ意味合いは異なる。 それでも、否定しない。 「ちなみに蜥蜴は食うぞ。滋養に良いんだ」 表の瀟洒っぷりとは打って変わって、 中は静かだった。 キファが唯の少女であれば、 心細くなっていたかもしれない。 『そこ』に辿り着くまで、メレフに着いてゆくのだろう。 (489) 2021/05/04(Tue) 16:13:17 |
| >>493 メレフ ぴり、と肌を焼く魔力。 キファは片目を眇めた。 見た目よりもうんと広い屋敷だったらしい。 かつん、かつん、と湿った石造りの階段が鳴る。 深層に、近づいていく。 「そうか。どうやら、吾もらしい」 「吾は兄であり、妹だった。……故人だ」 現実世界では男であること。 キファは彼の死んだ妹をモデルとした存在であること。 それを、さしてシリアスな調子でもなく、語って見せた。 ここに来たいと言った理由。 それは、皆まで言うまい。 「吾は、屍など見慣れている。 今更驚くこともないさ」 (495) 2021/05/04(Tue) 17:08:08 |
| >>501 メレフ 「吾自身だ」 きっぱりと言い切った。 それで、キファのスタンスはある程度伝わるだろう。 ”プレイヤー”にどのような意図があろうが、 キファはキファである。それを言葉裏に語っている。 それだけは、伝えておきたかったようだ。 それから、少しだけ感傷に浸るように黙りこくった。 蛍のような光を視界に認めれば、こう話しかけて来る。 「随分もったいぶるんだな。 ……それ程厳重、ということか」 誰の目にも触れさせないように。 誰も、眠りを妨げることが無いように。 再び目覚める時まで。 ……キファは祭壇の正体に、 ある程度予想をつけていた。 (502) 2021/05/04(Tue) 18:23:28 |
| >>505 メレフ 少女は小さく声を洩らす。 予想は、裏切られた。 想像よりも、『それ』は、ずっと美しかった。 「天国みたいだ」 この世のものと、すぐには信じられなかった。 ──否、確かに此処に在る。 眼前のこの男が、生涯を掛けて作り上げた 魔法仕掛けの楽園。 薄暗い地下の奥深くに存在する、 完全なる、小さな世界。 → (508) 2021/05/04(Tue) 18:52:50 |
| >>505 メレフ 「愛されているな。 さぞかし良い夢を見ていることだろうよ」 少女は否定も肯定も、憐れみも口にはしない。 だけれど。東から西へと、渡り歩いてきた少女は。 昔々、鳥籠に居た少女は。 これから、広大な海を見に行く少女は。 「(少し物足りないな)」 唯、あなたは聡いから。 少女の考えていることを、見抜いてしまうかもしれない。 けれど同時に、それを問い詰めるあなたでもないだろう。 「どうするんだ、此処。 置き去りにするつもりか」 (509) 2021/05/04(Tue) 18:55:07 |
| >>510 メレフ 「断る。人の棺の前で死ぬ趣味は無い。 それに、吾にはまだ行くべきところが有る」 即答。 それから、小さな花に触れた。 メレフの、妹の為に綴った大切な言葉たちが 流れ込んでくる。 ”成程”、と溢した。 彼の想いを知るには、それで十分過ぎる。 「もう十分なんじゃないか」 「これだけのことを為した。 人間の一生分では、ゆうに読み切れない 知識と言葉を寄越した。 おまえの妹だって、おまえを置いていったんだ。 許されるさ」 キファは割り切りが早かった。 これはこれ、それはそれ、と割り切ることができた。 感情に囚われることを好まない。 ……本当は、そうなのだ。 あなたの前で披露する機会は少なかったが。 → (511) 2021/05/04(Tue) 19:47:17 |
| >>510 メレフ 「あとはおまえの心次第だ。 ……まあ、すぐに決断できることでは無いだろうな。 おまえは今も迷ってる」 そして、急かす権利も、道理も、 キファは持たない。 キファはポケットから鍵を取り出した。 『運否天賦』ギルド本部マスターキーの合鍵、と説明する。 書庫から、キファの私室まで。 全てを調査できる権利があなたに預けられた。 「好きに使え。 吾が東方を駆け回って手に入れた知識が、そこにある。 天国に行く方法も。動く死体を作る方法も」 『あぁでも、使ったものは元の場所に戻しておけよ』 そう言って、くつりと笑った。 → (514) 2021/05/04(Tue) 19:50:34 |
| >>510 メレフ 「……見せてくれてありがとう。 『秋葉義一』が何故このような行為に及んだか。 少しは理解することが出来た」 誰ぞの願いを押し付けられた、と思っていた。 でも。……こんな風に愛されていたのなら。 まあ、悪くない。 (515) 2021/05/04(Tue) 19:51:07 |
| >>532 メレフ 「──うむ、僥倖」 受け取った鍵を、自分のポケットにしまい込む。 どうやら、やっぱり”共同研究”は叶わないらしいが。 まあ、それも良いか。 ……メレフの言葉を聞いたキファは、 何故だか、どこか。すっきりとした心持だった。 それは”メレフ”の肯定であり、 ”名月 廉”の肯定である。 → (535) 2021/05/04(Tue) 21:55:27 |
| >>532 メレフ 「きっと、また会えるさ」 ──それは、誰に向けたものか。 キファしか知らぬことなのだろう。 少女は踵を返す。用事は終わりだ。 兄妹の邪魔をしたくない。それに── 自らにも、まだやるべきことが残っているのだから。 さあ、海を見に行こう。 〆 (536) 2021/05/04(Tue) 21:55:41 |
| キファはその日、朝早くに家代わりのギルドを出た。 荷物は少ない。けれど、大切なものは全部詰め込んだ。
タロットカード。屋台で購入した朝餉代わりのバケット。 何度も読み返した経典。お気に入りの茶葉。 臙脂色の星のブレスレット。羊のぬいぐるみ。 思い出の貝殻のネックレス。そういうものが、沢山。 旅立ちの時だ。 『キファ』はもうすぐ役割を終える。 それは即ち、自我との別れだ。 でもそれはきっと、”死”よりも冷たいものじゃない。
別れ際、存分に皆と語り合ったので。 惜しむことも、人生の振り返りも、もう十分だった。
goodbay world! さよなら、世界。 良い人生だった。
明るい別れがモットーだ。 夜明けの空を仰ぎ見て、キファは静かに街を去ろうと──
→ (G55) 2021/05/04(Tue) 21:56:18 |
| >>G55 嘘だ。 もう一度だけ、言いたい言葉がある。 何度だって、言いたい言葉がある。 宛先は、もう存在しないかもしれないけれど。 でも、もう一度。 (G57) 2021/05/04(Tue) 21:56:41 |
| 「サダル」 (?10) 2021/05/04(Tue) 21:56:59 |
| 「吾はずっと、おまえのことが大好きだ!」 (?11) 2021/05/04(Tue) 21:57:11 |
| ──『運否天賦』はその日、ギルドマスターを交代した。
然るべき手順の後、キファの一番弟子であるエルが継いだ。 彼女はだらけ者の先代よりも、しっかり者であった。
師匠について尋ねると、彼女はこう答える。 「『新たな地に旅立つ』と、書置きが残されてたんです。 律儀に、彼女本人の印が押された申請書まで置いて有って」 『まぁ、部屋は片付けて行って欲しかったですけど』 そう言って、エルは笑った。 元より、『運否天賦』は中堅のギルドである。 そのギルドマスターであるキファが持ち込んだ 『道教』という概念は、レムノスにて密やかに 認知度を高めつつある。
キファはこの世界からいなくなった。 でも、全部が無くなったわけじゃない。
彼女の痕跡は、この世界に遺り続ける。 きっとそうやって、未来は紡がれていくのだろう。 (537) 2021/05/04(Tue) 21:57:36 |
| (a174) 2021/05/04(Tue) 21:58:05 |
| (a175) 2021/05/04(Tue) 21:58:51 |
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