【教】 裁判官 リーベルト― ラベンダー畑 ― [風が吹く度、甘く柔らかい香りが鼻腔をくすぐる。 一面を埋め尽くす青紫は美しく、蝉の鳴き声さえ清々しい。 そして―― 眠い。 立ったまま眠ってしまえそうに眠い。 鎮静作用のあるラベンダーといえば、最も有名なのは安眠効果。ただ眺めているだけでは美肌にはなれない。 設えられた散歩道を昨夜のように恋人繋ぎで歩きながら、自然と降りてきそうになる瞼を必死で持ち上げた。 ひんやりとした静謐な空気を肺いっぱいに吸い込み、目を醒まそうと試みる。少し肌寒い。 ヴィクは水を得た魚のように元気いっぱいだったから、多少足元が縺れても助けてくれただろう。 暫く歩くと、休憩所らしき小さな販売所に辿り着いた。] ラベンダーソフトクリームに、 ラベンダーティーですって。 ……流石にこの時間、まだ開いてないようですけど。 僕、紅茶は ラベンダーミルクティーが一番好きなんです。 ヴィクは何が好きですか? [こんな他愛ない会話も、今後は気軽に直に交わせるのだろう。] (/41) 2019/04/26(Fri) 18:03:21 |