【妖】 セレンぼくの届く場所には…… 何も……なかった、から…… [ だから、今まで価値がなかったのだろうか。 理解は唐突に染み入って唇をきつく噛み締めた。 幾度も噛んでしまったそこはとうとう壊れて傷ついて、 鉄錆のような味が広がり――それすら気付かない。 たいせつなものどころか意志もない。 正しく空虚で、人間らしさの欠片もない異端の存在。 想いの欠片は人のものではなくとも、 たいせつなものを知る彼の方がよほど人間らしい、 そんな理解すらも、今更のようにじわりと広がって ] ($21) 2019/04/16(Tue) 5:02:35 |