【魂】 家族愛 サルヴァトーレ溜まっていたものが溢れるような滑らかさで緑の髪が解け落ちる。白いかんばせが無骨なヘルメットの下から現れる。紫色の瞳同士が互いを見て、視線がかち合った。 案外可愛い子じゃないか。思考の一角が笑みを含んで呑気に揶揄う。 「男はみんな、狼にも狩人にもなるものだよ。女の子によってね」 可愛らしい問いには口元を緩めて返事を。 胸は自然に張って、足は肩幅。右手は拳銃とともにポケットに、左手の指で顎を擦る。男の一挙手から一投足から、嫌味のない自信が見て取れる。 しかしそうしながらも、やはり男は警戒を解かない。注意深く君の動作を見つめている。 「……頭をお上げ」 静かな声は、波の音に掻き消されず響くだろう。 男は、君の目的を掴みあぐねていた。 追われている間は、最悪の場合のことを考えていた。回避するにはどうするか、血を見た場合はどうするか。仕向けたのは誰か、目的は何か────そんな当たり前のことを思い巡らせていた。 しかし今は違う。 仕向けたのは誰か、目的は何か。それは、当然気になる。というか、知らなければならない。……しかし、彼女からは敵意を感じない。それに必ず伴うはずの、暴力の臭いを感じない。 害するつもりがないのにつけたのか。害される可能性を知ってなお、のこのことここまで? ────血の掟が頭を過る。彼女がノッテの者ならこれは、ファミリーにも逆らう行為だ。 であれば、尚更、なんのために? 「安心していいよ。人を嬲る趣味はないんだ。特に君のような可愛い子はね」 「端的に済ませよう。何が目的だい」 (_1) 2022/08/15(Mon) 21:55:29 |