【魂】 口に金貨を ルチアーノ>>-304 >>-305 「……エル」 貴方を誰かに渡したくなどない。 とうに、恋愛感情など抱いていないが。 なんであんな奴に大切な幼馴染をやらなくちゃならんのだ。 それなのに、どうして、 これ が大切だと思ってしまうのだろう。この手を離されてしまう、きっと約束以外の心は遠ざかる。 真に俺の手から零れ落ちていくのだと思い知らされる。 「……」 好きだから、貴方が望むものがわかってしまう。 本当に、俺は、誰かの傍にいるだけで何かを奪ってしまう人生を送ってきた。 それでも歩いて進んで、知るものかと。自分の為に生きてきた。 罰をくらうというのなら、今日今この瞬間なのだと思っている。 身体を改めて離せば、 貴方へと紙袋に入っていた小さな包を一つ渡した。 そこには何の変哲もない片方のレンズが割れた眼鏡が入っている。 「見舞いだ、受け取れ」 その声は冷たく。 貴方が望むような幼馴染の声ではなかったかもしれない。 (_4) 2023/09/30(Sat) 13:29:35 |