【魂】 迅雷風烈 ラサルハグ>>4:_18 誤魔化すようにされた口付け。痛む身体なのに寄せられた身体。貴方の心に触れられた気がして、嬉しそうに一度口を離して、今度はこちらから額をつけたまま目を閉じて再度軽く唇を重ね合う。 触れさせた熱と鼓動が、僅かに音を変える。早鐘を打っているようにも聞こえるのに、唇を離してじっと見つめる表情は、甘くて真面目な色を持った笑顔だ。──君が心の痛みを解く事を優先したなら、自分もできる限りそれに答えるだけと口を再度開く。 「……うん。『明るく穏やかな看守』と『何一つ飾らない君』は君には両立できないだろう。その理由がまた、ひとえに君の善性によるものなのが何とも皮肉だな。それでも── 許すよ」 両立が可能な人間もいるだろう。騙して笑える人間なら可能だ。問題は、そもそも己のあるがままの生き方を『こんな人間』と例えてしまうなら、それを両立させるよりは片方を欠落じゃなく、整理させて置いていかせる方が近道のように思えた。 「世界の誰も許さずとも、君が君らしく生きる事を、俺だけは最後まで許し続ける。それに…… 己が己のままに生きる為に最善を尽くす事を、宇宙の誰も否定はできないさ。 神ですらね。我慢しようが暴れようが、誰もキミの責任なんて取ってくれない。逆に言えば、好き勝手生きていい。それが、俺が──『ラサルハグ・ライ・バートランド』として生きた果てに得た結論だ。生まれた時から役割を背負わされた男が、唯一見つけた希望とも言う。だから、君が『ありのまま』を歩む道標になりたい。…… 勝負の果て、その先で、待ってる」 君が“獲りに行く”と願い続けてくれる限り。この決闘の結果がどちらになろうとそれは叶えられるんだ。 今でも標になってると言うかもしれないが、本当に正式なものとして “隣で”君を導く標 となるには、戦いの果てこそ相応しいだろう?「……もっと君の事が知りたいな。両立する羽目になった事にも、色のない部屋を好むのも、俺はまだ理由を知らない。いつか、来る日の為に……いや、そんな事がなくても“俺が”聞きたいんだ。聞かせてくれないか、バーナード。君の話を」 (_16) 2022/02/27(Sun) 3:56:30 |