【魂】 疾風迅雷 バーナード「確かに今更『大人げなくて面倒』なこと否定しようがないな。そもそもとして否定できないようなことを否定しようとする必要もないんだな。 ……昔からずーっと外面だけはよくてね。挙句に今は看守。『明るく穏やかな看守』でいようと思えば思うほど、『こんな人間』でいられないし、『本当にやりたいこと』はできない」 己の経歴については話せば長い上に本題ではないから省く。省くが、それでもストッパーと聞いて思いつくのはそのあたりだろう。 あなたも知っての通り、この男はずっと外面良く振る舞うことを望み続けていた。加虐嗜好持ちであるにもかかわらず、堂々とできないから裏でやっていた。つまるところ、看守に向いている素養はあれど、看守には向いていないのだ。 「考えないようにしてきた、けど……考える。ただ、俺は許されるなら俺らしくしたい。……違うか。許されなくても俺らしくした い、 」あなたに激突されて漏れた声がふわりと揺れた。……身体の痛みを避けることよりも精神の痛みを癒すほうを優先し、一旦は離れてしまうものの身体ごとあなたのほうを向き、無事じゃないほうの腕であなたを抱き寄せてしまおう。そのまま額をくっつけてしまえば、足先に身長差が残るだけで視線は同じ高さになる。 肉体なんて今痛かろうがすぐ癒える。けれどこの苦しさは、 お前の 熱 や鼓動 じゃなきゃ癒えないはずだから。先程までの震えとは異なる震えに身を浸しながら、それでも自然と澱み――溜め続けた"言いたかったこと"――を吐き出した分楽になった喉元は、そのままの勢いで言いたいことを紡ぐ。 まったくお互いにらしくないななんて軽口を言ってもよかったが、それ以上に出したい言葉があったのだ。 「……たくさん足りた。ありがとう、ラサルハグ。 俺も お前を俺のものにしたい。だから今度こそ本気で お前を獲りに行く 」存外声が柔らかくなってしまったのを誤魔化すようにそのままキスしてしまおうか。 (_18) 2022/02/24(Thu) 12:51:23 |