
![]() | 【墓】 小粋な小旦那 躯川 茶弥さて、さっそく高座を降ろされちまいましたが、人狼ゲームの幕はまだ閉じてはおりません。 客先からですが少し噺をさせていただきましょう。 華のお江戸も百鬼夜行、などと申します。 あれ、八百八町、でしたっけ? まあまあともかく、人の賑わい華開く江戸の街にあってもなお、人ならぬものの気配は消えず、いえ、人の賑わいゆえに、街の暗がり心の闇に人外の潜む噂は絶えなかったと言われます。 「そんな能書きよりね、私は気が気でないんだよ。今度こそ、ちゃんと自分で占い先を選ぶんだからね。」 あら、それは失礼しました。 茶弥の小旦那、占いに最適な暮れ前の七ツ半の時が来るのをじっと待ちます。 「……今だっ」 そうして賽の目を振り、今宵に占うべき相手を見いだしたその瞬間、 「旦那、茶弥の小旦那〜!」 「なんだいハチ、やかましいね! いま大事なところなんだよ、それにルビがブレブレなんだよ、ほんとお前さんはおっちょこちょいのとんちきだねえ」 「そんなことより小旦那、人外、人外騒ぎだよ」 「だから、その人外の正体をだね」 「いや、街の衆が、お雪のお嬢ちゃんがバケモンだって、騒いでるんでさァ」 それを聞いた小旦那、ハチの言葉に驚いたのもつかの間、大きく落胆し、溜息をつくじゃあないですか。 「ハチ……に言うのもなんだけどさ、賽振って占い先選んだ意味、なさそうだったよ」 はてなを浮かべるハチをよそ眼に、騒ぎの場に向かいます。 (+14) 2025/08/11(Mon) 10:14:45 |