御山洗
「……私がくっつきすぎるせいで、あの子が鬱陶しがっていたのね。
ちゃんと話したから、当てずっぽうじゃないわ。
もう大人だしそれぞれ自立をしないといけないのは確かじゃないですか。
だからね、仕方ないのよ」
漠然とした不安は田舎の思い出で薄れはするが埋めるものにはならなくて、ただ、今だけは何も怖くないような満たされた気持ちになっている。
また一瞬で、恐ろしいほどに消えてしまう。
思い出さなくてはいけないことが、話さなければいけないことがあるのに。
「弱音を吐いてごめんね。
しんどかったけど、今はなんだか、清々しい。
兄さんのおかげかも?」
まるで別人になったのように、迷子になっていた姉の様子は見えなくなり、凪いだ心にあなたのことばがふり続けた。
「……なかなおり、できるようにする」
言い聞かせるように緩く手のひらを握りしめて海の静かな波を見つめていた。
なんだか、あなたのまえでは偽りの姿を見せてばかりのような気がした。