【墓】 厨房担当 マシロ ― 巣穴を出る前に ― [ 速崎から視線を向けられることは、無かった。 或いはタイミングが悉く合わないだけなのか。 失恋の瞬間と葉月との会話にも鉢合わせた大咲は、 尚更なんと声を掛ければいいか分からなくて 結局その日も、後ろ姿へ指先を伸ばしかけるばかり。 バックヤードの事務用品置き場から紙とペンを拝借し 置手紙を書き記す。 まるでいつかの再来だ。 今度は此方から送る番。 店長へ「けいちゃんが大丈夫そうな時、渡してください」と 言付けてから、しっかり預けた。 ] (+46) 2023/03/09(Thu) 20:52:36 |