【墓】 7734 迷彩 リョウ>>【食堂】>>+83 「邪魔じゃないなら、うん。今日はそっちで寝る」 温かい手料理など口にしたのは、ここに来てからだ。 きっと栄養もあって美味しいけれど、それでも何かが足りない気がした。 「でも寂しいのは、今に始まったことじゃない」 友人に作ってもらった食事を残すのは気が引けた。 調理に割いてくれた時間を無かったことにするのと、同じだと思うから。 薄く色づいた野菜を、肉と一緒に食べ進めた。 「そう。オレにとっては、何かあったんだよ」 貴方に心配はかけたくない、という気持ちはある。 だから、何も心配いらない。 そう意味を込めて、短い説明をした。 「……夢の話、した。 そしたら、笑われた。それがムカついた。そんだけ」 大人が禁じた、愚かな夢だ。 しかし少年にとっては、ようやく見つけた生きる希望だった。 本当は願っている。再び元の生活に戻れることを。 本当は期待している。もしかしたら、自分たちが許されるのではないかと。 世界はそんなに甘くない。 子供は知っているつもりで、ちっとも知らなかった。 (+84) 2021/09/27(Mon) 13:58:44 |