【墓】 7734 迷彩 リョウ>>【食堂】 >>+85 「うるさい方がいい」 家に誰かがいるのが当たり前だった。 それでも時々、留守番をしたことがある。 テレビを付けたまま、硬い布団で寝たことを覚えている。 悲しいと言われれば、ややあって頷く。 あの時は恐怖心を覆い隠す為に、怒りを募らせたけれど。 怒りと恐怖の下に、悲しみがあったことに今気が付いた。 「え、うーん……」 何か、と言われて思案する。 あまり思い出したくない記憶を、隙間から少しだけ覗き込む。 黒い瞳と目が合って、すぐに目を逸らす。 「母さんに報いる気がないんだな、とか」 「だったら今ここで死んでも同じだ、とか」 ――――なあ、そうは思わないか。リョウちゃん? 少年の夢は、そう言われて当然の形をしていた。 ルームメイトの言葉は全てが正論だと、きっと誰しもが納得する。 それが正論で生きていけない子供の神経を逆撫でした、ただそれだけの話だ。 (+87) 2021/09/27(Mon) 16:12:01 |