【墓】 2年生 松本志信[真剣に渡される朝霞ちゃんの声を、俺は頷くでもなく首を振るでもなくただ聞いていた。 「看取らせてほしい」「頼られる人間になりたい」 ここまで伝えてくれる相手に返す言葉を、俺は持たない。 例えばそうだな。 誰かに頼る事が出来ていたなら、幼かった俺も死にたいとなんて思わなかったのかもしれない。 もっと素直に、もっと“普通”に、生きていたのかもしれない。 頼られることばかりを覚えて、頼ることは出来なかった。 そう簡単に変えられることじゃない。 不誠実な答えしか出せない自分自身に、苦笑する。 眉を下げて、悲しそうな顔になる。 相手が朝霞ちゃんだから、ではない。 誰に対しても、俺自身のことを明け渡せなくて。 自分勝手で、ごめんね。] (+129) 2022/09/15(Thu) 11:18:35 |