【神】 焦爛 フジノ朝。そうだと、思われる時間。 こんこんと二階の病室の扉を叩き、次いで声を掛ける。 どちらにも返事は、ない。 ……どこかから、鉄錆のような匂いがする。 先日の猿肉だろうか?嫌な予感が、した。 「……ミロク、さん。おじゃま、するね」 そう告げて扉を開ければ、鉄錆の匂いは更に濃くなる。 視界に入ったのは、まだ鮮明な赤。 そして赤に染まったベッドに横たわる、ミロクの姿。 「……あ、あ……」 寝ているのだろうか?そんな事を一瞬考えてしまう表情。 否、彼はもう死んでいると首の滅茶苦茶な縫合跡と鉄錆の匂いを発する 赤 が告げている。───優しかったあの人は、もう存在しないのだ。 雨風の音を縫って、少女の悲鳴が病院に響いただろう。 (G0) 2021/07/07(Wed) 12:46:47 |