【神】 焦燥 フィウクス晴れない気分を引き摺ったまま、向かう先は飼育小屋。 その道すがら他の飼育委員や生徒とすれ違ったかもしれないし、 誰ともすれ違う事はなかったかもしれないし。 ともあれ立ち並ぶ飼育小屋の前に来て。 兎小屋の様子を見れば、既に世話は済んでいる。 先客の居る鶏小屋には何も言わず前を通り過ぎ、 モルモット達の小屋の扉をきいと開いた。 「服をかじるな」 床材や牧草を入れ替えて、水も新しいものに取り替えて。 ふと寄り付いた一匹が服の裾にちょっかいを出せば、 一つ文句を零した後、ひょいと持ち上げて仲間の元へと放す。 この乱暴者が動物を虐げた事は、これまで一度もない。 「…………」 人に、仲間に、気儘に寄り付き、気儘に離れ、気儘に過ごす。 そんな小屋の動物達の様子を見て、暫く黙って苦い顔をしていた。 (G3) 2022/04/30(Sat) 14:00:14 |