【神】 風雪 世良健人>>G9 生徒会室 「俺が織り込み済みのうちに手にすることができたってだけで、 きっとそこまでじゃないやつも多かったんだろうな……ってのも、仕方ないことだし。 てんやわんやになってたのは事実なんだから、特別手当とかほしいよなあ〜」 同学年であるあなたの前だと、ほんのちょっとだけ年相応だ。 一歳二歳の違いに大きなものなんてないのに、漆喰壁の内側だと大きな違いになるのが不思議だ。 明日には夕焼けの色も洗い流されて、変わらない日が来るのだろう。 赤茶けた色の髪は、山際のふちで交わる影の色によく似ている。 互いに何があったのだとしても、明日からはふつうの学生に戻るのだ。 「見つめ直すことができたものくらいは、あったかな。 あくまで俺は、だからみんなきっとそうだったとは言えやしないけどさ。 柏倉はどう? なんか、いいもん見つかった?」 さりさりと原稿用紙の繊維をシャーペンの芯がなぞっていく。 自分達の、この学校で評価されているものの、アイデンティティに近いものの、 それらへの不確定で煮え立たせるような騒ぎがあったにも関わらず、 返す言葉は軽い調子で選ばれた。 けれどもあと数ヶ月を残した学園生活での"いいもの"が、軽いものとは思っていない。 (G10) 2021/11/07(Sun) 20:06:00 |