【神】 棕櫚の主日 コゴマ>>G16 >>G17 伊縫 「……お前が暴行を受けた相手は、奈尾か」 殺されかけた、とは言わなかった。そんな事実は無くなったから。 治りかけの体をひきずるようであればそれに手を貸して、 深和が殿を務めたその後ろへと遠ざかるように資料室への道を急ぐ。 視界を遮るためのカーテンを振り回しながら、連れ立った体は広い室内に押し込められた。 奥の方にバリケードを作り、書架をぶち倒して小さな空間を保ち。 銃の射線が通らないように、互い違いに調度をひっくり返した。 あちこちに積まれた資料は一足飛びに超えて来られないように、 それでいて二つの扉のどちらから突っ込んでこられたとしても、 空いている方の扉から逃れられるように、道を塞いではしまわない。 相手が一人だとわかっているからこそ、こういう準備ができるわけだ。 そう、相手は、一人だ。 「伊縫、お前はここにいろ。深和さんにも場所は伝えてある。 三十三も生きた反応があればいずれここには来てくれるはずだ。 今度は、一人で立ち向かいはするな。 ……ちらと見えた限りでは、もうあの人はまともな状態ではなかった」 毛布にくるめた体を、説き伏せるように一番奥に押し込んだ。 なにか計算違いが無い限りは、深和と叶が助けに来てくれるはずなのだ。 此処に至るまでに薄汚れた袖を捲り、尖ったパイプを握り締め。 紙と埃の匂いに満ちてしまった、資料室を後にしようとする。 (G19) redhaguki 2022/06/07(Tue) 14:07:20 |