【神】 食人嗜好者 アルレシャ「――テンガン……」 傍、というには少し離れていた女はその煌めきを見た、覚悟を見た。 ひとつを救うために……きっとそれは、容易く露見しても構わない力ではないだろうに。 魅せられたように床に膝をついた女は、泣き止むのをやめてこくりと頷いた。 「……だめね、私。なんの覚悟もなしに、飛び込んで……それで騒ぎ立てるばかり。 とうに貴方は何が起きてもと心に決めていたというのに、わたし……慌ててしまってばかりね」 薬は残り二本。自分に何が出来るかを考える。 決してそれは惑うばかりではないのだということは、彼が教えてくれたのだ。 「……ディーラーさん、大丈夫? ああでも、こころが幼くなっただけで、体に異常はないのかしら」 ふと、薬のせいで精神年齢が下がってしまったサダルのことを気にかけた。 薬のせいで柔らかくなった心に傷がついたなら、大きくなっても波及するかも知れないことだし。 (G53) 2021/07/05(Mon) 12:15:43 |