【神】 さよなら 御山洗>>G61 添木/三日目 添木邸 ほとんど去り際の問いは、半身返しきらないくらいの背中で聞いていた。 だから、添木には御山洗の表情はよく見えなかっただろう。 それでも広い背中はいい加減見慣れたものではあっただろうけど。 考え込むような間の後に、息だけで微笑むような声がした。 「……久さんは、格好いいな。きっとさ、みんな久さんのこと憧れだって思うよ。 悪戯をしたことだってみんな知ってるけど、そういうところも誰かの思い出になって。 誰かが見上げる、そういう背中になると思う」 感慨深いような声音は心の底から出たものなのだろう。 しみじみとそうした良い光景というのを思い描いて、もう一歩ずつ踏み出して廊下へ出る。 カンカンとサンダルを突っかけて玄関をくぐる、当たり前の日常の音は遠く。 「ごちそうさま。久さんも、時間があったら海においでね」 (G75) redhaguki 2021/08/16(Mon) 20:28:54 |