【鳴】 騎士見習い テンガン[途中、可愛らしい……とはお世辞にも言えない小汚らしい子供の群れが寄ってきた。 やせ細った身体に瞳だけはギラついた子供たちが慣れた様子で男から銀貨を一枚ずつ受け取る様子がテンガンには空恐ろしく感じられた。 その後も与えるというよりは投げるようにして男は銀貨で寄ってくる人間たちを追い払っていく。 良からぬ視線が自分に向いているのを感じた時は剣の柄に手をかけて鋭い眼光で威嚇したが、心の中はまるで異世界に迷い込んだかのようにテンガンは茫洋としていた。 銀貨を投げつけなければ、この人間たちは容赦なく自分を襲っていたのだろうか。 まるで同じ人間同士というよりも、格好の獲物を見つけたかのように。 どんなダンジョンに潜った時よりも、今この瞬間に異質さを感じていた。 まさか同じ人間が暮らす町の中にこのような地獄のような場所があるなんて……。] (=4) 2021/05/01(Sat) 9:15:15 |