【鳴】 志隈──鈍色の球体3── [“故郷に帰った方がいいだろう。” 憔悴した女に施されたのはチケット1枚。 厄介者であり、当人の希望もあって、チケットがもう1枚。 元より貧困が進み、 10年以上経てば小競り合いで地域の変動、 そこは女にとって知らない一面を見せていた。 怒鳴られ蔑まれる事が無くなったのは救いだが、 病弱な女が一人生きていくには過酷な環境。 付いてきた子供は、 食べ物を探し求めて一日中歩き回ったり、 少しずつ動作で言葉の代わりが出来れば、 彼女に力を貸して貰えるようにと周りを手伝い。 夜は泣き続ける女を見守り、寝てる時には撫で触れ。 簡単な言葉がわかるようになった頃、 女が『あの国の事を忘れたい』と嘆いてるのを初めて知った。 より細くなっていく身体、 泣き濡れた頬、何時限界を迎えてもおかしくない細い糸。 平和な国よりもっと大きく丸い月を見た時に気付いた自分の能力。] (=16) 2020/10/04(Sun) 22:23:15 |