【鳴】 上原 隆司[>>97 >>98手を引っ込めた矢川のしゅんとした顔を見て、上原は自分から手を伸ばしてそっと繋いだ。 店を出て足を向けたのは、本屋の裏側、店と店の隙間になっている狭苦しい路地。 裏口から出てくる店員はいるかもしれないが、わざわざ通り道に選ぶ人は少ないだろう。 本屋の入り口が見えないから、ストーカーが潜んでいることも考えづらかった。 そういう手近な場所で人目を避けようと上原が思ったのは、矢川の落ち込んだ顔を長々見たくないからだった] 悪い、人目が気になって……。 [申し訳なさそうに声をかけながら、上原は矢川に両腕を伸ばした。拒む様子が無ければ、そのまま抱き寄せるだろう]** (=17) 2021/03/04(Thu) 7:39:21 |