【鳴】 志隈[月の晩が終わり、朝日が昇る。 酷い頭の痛みに少年は固い床に頭を押し付け。 代わりに顔色がよく見えるあの人が目を覚ます。] 『…あら、あなたはだれ?』 [自分を映す目から翳りが消えていた。 成功を知るが、その先を考えておらず、 問いかけに咄嗟に口をついたのは名前。] シグマ。…シグマだ。 [彼女は向こうの国の言語に不慣れだった。 夫が最初に名乗った苗字を、婚姻しても愛しげに呼んでいた。 ──忘れて欲しくなかったのは、家でも自分でもなく、 彼女が男を愛した証。 弱い子供の顔をしたら思い出してしまうかもと、 言葉を変えて素っ気のない色を出す。 一番最初だけはこの名を示す相手の模倣。 貴女は具合の悪い所を助けてくれた恩人だと、 日常生活の協力を申し出ながら、 少年は青年へと変わっていき、離れていった。]* (=18) 2020/10/04(Sun) 22:23:27 |