【鳴】 上原 隆司[話しながら、矢川が腕の力を抜いたのを感じると、上原も腕の力を緩めた。 彼女が離れるなら引き留めないつもりだった] カラオケは気楽そうだが……。 店内に監視カメラもあるだろうし。 でも、独りになるの不安か? [トイレのたびにいちいち同行というのも微妙な話ではある。とはいえ、ついてきてと頼まれたらついていくだろう。 むしろ矢川が個室に残ったときのほうが問題な可能性もあった。 家を提案されると、上原は危険性よりも気後れするのだった] 単純に行きづらいんだよな……。 蛍の親が同居してると思うと。 俺の家までは電車代かかるし、 その辺の店に入るのとあまり変わらない。 ……ストーカーが1人いるってだけで気が重いな。 今日はおとなしく家帰ったほうがいいかねえ。 [どこに行こうにも簡単に決められないぐらい自由が薄れている。 それを実感して、上原は深くため息をついた。 矢川さえ割り切れるなら、このまま家まで送ってお別れでも良いとは考えていた]** (=25) 2021/03/04(Thu) 15:56:35 |