【雲】 使用人 リフル[屋敷に仕えているものだから流石に店は選んでいるけれど、たまに足を運ぶ。彼女を連れてやって来たのは、奥まった立地のせいで少し暗い、そんな店。 何かいつ行ってもやっていて、そこが楽しい様などこか不安になる様な気もする。 おめかしした彼女を連れて行くと、ある人は不躾にジロジロ見て来るし、ある人はちらちらと気付かれない様に視線を寄越して来た。 あー流石にお嬢様嫌かなと思って引き返そうとしたが、 人懐こい女性店員が席を用意してくれて、 半ば強引に席につく事になった。 彼女へ向けられる視線が大半の中、己に向けられる視線があった事には気付けないまま。 彼女の方はこっちの気もしらないでか、 まぁ浮いているのに態度は毅然としたものだった。>>D30 店員もまわりの客も絡んで来ないし、まぁいいかと、レモンの酒を頼んで一息ついた。 彼女の酒の好みは把握して……いるという事はなかった。 お出しする機会がなかったものだから。 果物の味の強い酒がふたつ並んだのが、何だか面白かった] え? ここじゃ話せない様な事、 話しちゃう? [さっき迄はよく出来た大人だったのに、 今こちらへ向ける顔も視線も、アウェイの少女だ。 おどけて返してみたが、彼女の反応がどうであれ、調子に乗り過ぎたなとこっそり反省して、運ばれて来たグラスに手を伸ばした。 ……こういう場所は昔の匂いがする。 呑まれない様に気を付けないと] (D33) 2020/10/03(Sat) 13:48:50 |